自動運転時代に必要な高性能SPAD距離センサ
ソニーセミコンダクタソリューションズは6月10日、高解像度および高速性を同時に両立する車載LiDAR向け積層型直接Time of Flight(dToF)方式の1型(対角15.8mm)SPAD距離センサ「IMX479」を商品化することを発表した。
レベル3以上の自動運転の実現には、より高精度で検知・認知可能なLiDARの重要性が高まっており、光源から対象物に反射して戻ってくるまでの光の飛行時間(時間差)を検出することで距離を測定するdToF方式のデバイスであるSPAD距離センサの活用が期待されている。
独自技術で高性能化を実現
同製品は、同社がCMOSイメージセンサ開発で培ってきた裏面照射型、積層型、Cu-Cu接続などの独自技術を採用したSPADセンサで、裏面照射型のdToF画素(3×3、水平×垂直のSPAD画素を1dToF画素として構成)を用いた画素チップを上部に、新開発の測距処理回路などを搭載したロジックチップを下部として、Cu-Cu接続を用いた積層構造により1チップ化したことで、10μm角の微細な画素サイズと、520dToF画素の高解像度ながら20fpsの高速フレームレートを実現したという。
また、垂直方向における0.05度相当の角度分解能を実現し、垂直方向の検知精度を従来比で2.7倍に向上させており、これにより車載LiDARで重要となる立体物検知において、250m先にある高さ25cmの物体(タイヤなどの道路上の落下物を想定)も立体物として検知することが可能になると同社では説明している。
さらに、画素における光の入射面と底面に凹凸を設け、さらにレンズ形状を最適化させることで入射光を回折させて吸収率を高めることを可能年、車載LiDARのレーザー光源として広く普及している940nmの波長に対して、37%の光子検出効率を実現。これにより、10万lux以上の高照度の背景光環境においても、最長300m先にある対象物を高精度に検知・認識することができるようになったとするほか、独自開発の測距処理回路により、各SPAD画素のデータを個別に処理し、距離を算出することを可能としたことで、LiDARの距離分解能を5cm間隔まで向上させることを可能としたとする。
顧客やパートナー向けにメカニカルスキャン方式のLiDARを開発予定
なお、同製品の量産は2025年秋を予定しており、サンプル価格は3万5000円としている。また、同製品の評価のために、同製品を搭載したメカニカルスキャン方式のLiDARを開発し、顧客やパートナーに向けて提供を開始する予定だともしている。