ソニーは、バーチャルプロダクションなど空間コンテンツの制作を効率化する、同社初のカメラトラッキングシステム「OCELLUS」(オセラス)を発表。業務用カメラに後付けで使う機器で、2025年秋に発売予定。価格はオープンプライスで、想定売価は560万円前後。
カメラの位置情報と連動した背景映像をLEDディスプレイに表示し、 その前で演者が演技を行い撮影する手法として注目を集めるバーチャルプロダクション(VP:Virtual Production)。そうした空間コンテンツ制作に必要不可欠とされるカメラトラッキングシステムを、ソニーが自社で商品化した。米ラスベガスで現地時間4月6日から開催される、国際放送機器展「NAB Show 2025」で展示される予定だ。
OCELLUSは、センサーユニットとプロセッシングボックス、レンズエンコーダーの3つで構成。業務用カメラに取り付けて、撮影時のカメラの位置や向き、情報などを取得可能にする。同製品を使うことで、In-Camera VFXなどのバーチャルプロダクションやAR(Augmented Reality:拡張現実)などの制作を効率化できるとする。ソニーのシネマカメラやシステムカメラのほか、他社製カメラと組み合わせて使うこともできるという。
センサーユニットには5つのソニー製イメージセンサーを搭載し、ソニーのVisual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を用いることで、屋内外を問わず安定したマーカーレストラッキングを実現。マーカーレスであるため、事前にマップを作成するときに必要なマーカー設置の工数を削減できるという(ただし、マップの広さには制限がある)。
ユーザーは周囲の環境に合わせて、5つのイメージセンサーの中から任意の4つを選んで同時使用することで、複数のイメージセンサーによる安定したマーカーレストラッキングを可能にする。使用している4つのイメージセンサーのうち、ひとつでも有効な特徴点を捉えているイメージセンサーがあればトラッキングデータの取得が可能。遮蔽耐性も高めた。
また、5つのイメージセンサーそれぞれの両側に赤外線LEDを搭載しており、暗所での運用をサポート。音楽ライブ会場など、照明がひんぱんに切り替わる環境では、同梱の可視光カットユニットを装着して赤外線以外の可視光を遮断し、安定したトラッキングが行えるとする。
センサーユニットの外形寸法/重さは約86×43×60mm(幅×奥行き×高さ)/約250gと小型軽量設計で、同梱のNATOレール方式の取り付け部品を使うことで設置や位置調整をしやすくした。電源はプロセッシングボックスから供給する仕組みで、ロック機構付きUSB Type-Cケーブル1本で接続する。
プロセッシングボックスは、センサーユニットで取得した情報からトラッキングデータを計算。トラッキングデータとカメラやレンズのメタデータは、Ethernetケーブル(1000/100/10BASE-T対応)を介して、free-dフォーマットでUnreal EngineなどのCGレンダリングソフトへリアルタイムに送信する。
ボックスには、Genlock入力やタイムコード入力、SDI入出力端子、レンズエンコーダーとの接続端子といった各種入出力端子と、IPアドレスやトラッキング情報、レンズデータ等の状態を確認できる有機ELディスプレイを装備。
SDI出力によるメタデータ送信に対応したソニー製カメラとの組み合わせであれば、カメラのSDI出力のみで、同期信号やタイムコード、ファイル名、RECトリガを取得可能。
さらに、同様のソニー製カメラと、情報取得に対応するレンズ(Cooke/iレンズ、B4レンズ、Eマウントレンズ)の組み合わせで、カメラのSDI出力を通じてレンズメタデータを取得することもでき、トラッキングデータやカメラやレンズのメタデータを、映像ファイルと同期したFBXファイルとして、SDXCメモリーカード(UHS-I/II対応)に記録でき、ポストプロダクションなどの制作に活用できるとする。
レンズエンコーダーは、レンズのフォーカスやズーム、アイリスの精密な回転角度や位置を物理的に検出するもので、同梱の5種類のギアから、装着するレンズに合わせたギアを選べる。
検出データはプロセッシングボックスにLEMO 7ピンケーブルを介して伝送。これによって、レンズがカメラを介したメタデータ取得に対応しない場合も、レンズエンコーダーを使うことでフォーカスやズーム、アイリスの値を取得できるという。