国内で初めて極超音速実験機による時速約5,400km(マッハ5)相当の燃焼試験に成功したと、早稲田大学が4月16日に発表。「太平洋を約2時間で横断できる極超音速旅客機や、高度約100kmに到達するスペースプレーンの実現に向けたデータが得られた」としている。

  • 極超音速旅客機の構想図 (C)JAXA 出所:早稲田大学ニュースリリース

    極超音速旅客機の構想図 (C)JAXA 出所:早稲田大学ニュースリリース

早大と東京大学、慶應義塾大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)による共同研究チームの成果。JAXA角田宇宙センター(宮城・角田市)のラムジェットエンジン試験設備を用いて、音速の5倍に相当するマッハ5での燃焼実験に成功した。

研究成果のポイント

  • 国内初の極超音速実験機を用いた時速約5,400km(マッハ5)燃焼実験に成功
  • 極超音速旅客機の実現に必要な主要技術を、マッハ5の飛行環境を模擬した試験で実証。実用化に向けたデータ取得に成功

日本が先行して研究開発を進めている、極超音速空気吸込みエンジン技術。この研究ではマッハ5環境下で飛行実証を行い、機体とエンジンを一体として制御する機体/推進統合制御技術の構築をめざしている。

共同研究チームは今回、観測ロケットなどによる飛行実証を見据えた極超音速実験機を設計・製作。角田宇宙センターのラムジェットエンジン試験設備を使用して、マッハ5の飛行環境を模擬した極超音速風洞での燃焼実験を実施した。実験では、航空機などの模型を風洞装置内に設置し、実際の飛行状態を模擬した空気流を模型周囲に流すことで、飛行状態で起きる現象を調査したという。

  • 極超音速実験機の燃焼実験(試験設備でマッハ5飛行状態を模擬) (C)JAXA 出所:早稲田大学ニュースリリース

    極超音速実験機の燃焼実験(試験設備でマッハ5飛行状態を模擬) (C)JAXA 出所:早稲田大学ニュースリリース

  • ラムジェットエンジンの燃焼作動 (C)JAXA 出所:早稲田大学ニュースリリース

    ラムジェットエンジンの燃焼作動 (C)JAXA 出所:早稲田大学ニュースリリース

極超音速飛行では、機体とエンジンの相互干渉が非常に強くなる点が大きな特徴で、飛行マッハ数や機体の姿勢によって機体に形成される衝撃波が変化。エンジンに取り込まれる気流の状態も大きく変わるという。

エンジンの推力は機体の運動に直接影響を与え、機体とエンジンは互いに強く結び付いたシステムとして振る舞うため、極超音速機では機体の空力設計やエンジンの燃焼設計を一体のシステムとして取り扱う「機体/推進統合設計・制御」が求められる。

今回の研究では統合的設計を行い、極超音速飛行環境においても安定したエンジン作動と機体制御が可能となる構成として、必要最小規模となる全長2mの極超音速実験機を作成した。

マッハ5の飛行状態では、空気の圧縮加熱によって機体周囲の空気温度が約1,000度まで達する。こうした高温環境に対応するために、耐熱材料と遮熱構造を組み合わせた軽量耐熱構造として設計し、高温環境下でも機体と内部の電子機器が正常に動作できる構造も構築している。

  • 実験機の耐熱性能の測定 (C)JAXA 出所:早稲田大学ニュースリリース

    実験機の耐熱性能の測定 (C)JAXA 出所:早稲田大学ニュースリリース

  • 実験機の操舵翼の動作 (C)JAXA 出所:早稲田大学ニュースリリース

    実験機の操舵翼の動作 (C)JAXA 出所:早稲田大学ニュースリリース

今回の実験によって、これらの空力、推進、構造の統合設計の妥当性を確認し、さらに耐熱構造の設計解析手法を検証するための機体表面温度分布の計測や、水素燃料を用いるラムジェットエンジンの排気が地球環境に与える影響を調べるための排気温度場なども計測。将来の極超音速機の実用化に向けた基礎データを取得した。

この実験結果を踏まえ、研究チームは今後、極超音速実験機を観測ロケットなどに載せてマッハ5程度の飛行実験を実施することを構想している。