ヌヴォトン テクノロジー ジャパンは2月13日、 同社の主力製品の1つであるバッテリ監視ICの新製品となる産業用48V向け17セル対応「KA49701A/KA49702A」の開発ならびに量産を開始したことを発表した。

同社のバッテリ監視ICは、リチウムイオン電池などの端子電圧や電流、電圧を高精度に測定し、デジタル値としてマイコンに送信し、バッテリで駆動するシステムの制御につなげるための役割を担うもの。

  • ヌヴォトンのバッテリ監視ICのこれまでの開発の流れ

    ヌヴォトンのバッテリ監視ICのこれまでの開発の流れ (資料提供:ヌヴォトン、以下すべて同様)

先行して車載向けが2010年代より提供を開始、2023年に第4世代品の量産を開始している。一方の産業分野向けについても車載向けのノウハウを元に2010年代より提供を開始、今回の製品シリーズが第4世代に位置づけられるものとなるという。

同シリーズは再生可能エネルギーシステム向け蓄電システムやデータセンターのバックアップ蓄電システムなどのような大規模蓄電システムで求められる電池容量の増大に伴う安全性の向上、システムコストの削減、電池容量の最大活用といったニーズに対応し、安全なシステム構築とコスト削減の両立を図ることを目的に開発されたとする。

  • 「KA49701A/KA49702A」

    「KA49701A/KA49702A」の概要

具体的な特長としては3つ。1つ目は、システムの安全性向上とコスト削減を可能にすることを目指した故障診断機能ならびにフェイルセーフ機能の内蔵による外部保護回路なしでの安全なシステム構築を可能とした点。これにより、自主的にIC内部の主要回路に対する故障診断が可能となったほか、その故障診断結果を踏まえてIC側に異常が生じたと判断された際に、リレースイッチの切断を行う制御を可能とするフェイルセーフ機能により、外部保護回路を組み込んだのと同様の安全性を維持しながら、外部保護回路の削減による低コスト化を可能としたとする。

  • これまで別に用意が必要であった故障診断とフェイルセーフ機能をICに内蔵

    これまで別に用意が必要であった故障診断とフェイルセーフ機能をIC内蔵としたことで、BOMコストの低減と回路のシンプル化が可能となった

2つ目はバッテリ容量の効率的な活用に向けた業界最高水準となる電圧測定精度±2.9mVを実現し、中国国家標準規格であるGB/T34131-2023に準拠することを可能とした点。リチウムイオン電池の電圧が高くなりすぎると過充電が生じ、発熱や発火、最悪の場合は爆発につながる。一方、電圧が下がりすぎると過放電が生じ、電池の劣化を招くこととなる。そのため、その中間の最適な範囲をいかに高精度で測定するかが、電池の性能を最大限に引き出すことにつながる。同製品では、この精度を±2.9mVへと高めたことで、使用可能な電力範囲の拡大を可能としたとする。

  • 高精度な電圧測定を可能とした

    高精度な電圧測定を可能としたことで、電池の使用範囲を従来以上に広くとることが可能となった

3つ目はバッテリの長時間駆動で、同社の従来品(第3世代品)比1/10以下となる動作時電流260μAを実現したほか、シャットダウン時電流0.1μA以下を達成。自己放電電流を低減したことで、電池パックの長距離輸送時などでの充放電を不要とし、電池の劣化を防ぐことを可能としたとする。

  • ICをつなげただけで生じる電池の自己放電電流を抑えた

    ICをつなげただけで生じる電池の自己放電電流を抑えたことで、長距離輸送時の再充電を不要にするなど、電池寿命を延ばすことが可能となる

主なターゲットとしては、電動アシスト自転車、再生可能エネルギーシステムの蓄電システム、データセンターのバックアップ電源としており、バッテリマネジメントシステムのGND(グランド)側、いわゆるマイナス側で遮断回路のオン/オフを制御するのが「KA49701A」、逆に電源側(プラス側)で遮断回路のオン/オフを制御するのが「KA49702A」となっており、この制御手法はアプリケーションや地域によって異なることから、それぞれのニーズに対応できるように2種類を用意したという(いずれもパッケージは7mm×7mm QFP-48ピン)。また、17セル(最大定格85V)としたことで、電圧の低い傾向があるリン酸鉄リチウムを採用したリチウムイオン電池でも必要なセル数を確保することができるようになっているともしている。

  • ラインアップとしては2種類

    ラインアップとしては遮断回路のオン/オフをGND側なのか電源側なのかで制御が変わるため2種類が用意されている

なお、生産は前工程は国内のファウンドリが担当、後工程はOSAT(中国の工場)が対応しており、サンプル価格は2.4ドル、評価ボードの価格は仕向け先によって仕様が異なるがおおむね300~400ドルとしている。

  • 評価ボードの提供も開始

    デバイスの量産出荷に加えて、各仕向先に応じた評価ボードの提供も開始されている