既報の通りInfineon Technologiesは1月21日、新しく「PSOC Control」シリーズを発表した。これに関する記者説明会がオンラインの形で1月23日に開催されたので、この内容をご紹介したい。
まずPSOCファミリー全体に関するUpdateをしたい。PSOCシリーズがEdge/Control/Connectの3つから構成されるという話は2024年3月に発表されており、またPSOC Edgeの詳細は2024年5月に発表されたが、市場投入は今回発表されるPSOC Controlが先行し、PSOC Edgeは今年第2四半期、PSOC Connectは2026年の投入とされる(Photo01)。
そんなPSOC Controlであるが、モータ制御用の「PSOC Control C3M」とPower Conversion用の「PSOC Control C3P」が今回発表された製品である。ただこの後、Industrial Communication用の製品が追加される予定という話だ(Photo02)。
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Photo02:現状のMotor ControlはHome Appliance向けの小型モーターであり、多分上限は冷蔵庫とかエアコンのコンプレッサーや洗濯機のモーター程度と思われる。Industrial Communicationはもっと大型/高出力モータ制御向けと思われる
なぜこの2製品が先行したか? という理由を説明したのがこちら(Photo03)で、どちらもマーケットが急速に拡大しているから、ということになる。
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Photo03:Motor Control/Power Conversion共に、特にHome Appliance/Smart Homeでの伸びが大きいということで、まずはここに製品投入となった模様だ。Industrial向けはその後、ということだろう
そのPSOC Control C3シリーズ、Motor ControlもPower Conversionも基本構造は共通である(Photo04)。
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Photo04:全製品PSA Certified Level 2に対応し、またISO 26262 Class-B/IEC 61508 SIL-2準拠となるSafety Libraryが提供されるとする
実際ブロック図(Photo05)はC3M/C3Pともに共通となっている。ではどう違うのか? をまとめたのがこちら(Photo06)。
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Photo05:質疑応答ではより高性能なコアやMPUの搭載の可能性を問われ、短期的には予定は無いとしていた(長期的にはまだ決まっていないとのこと)。まぁこのクラスの制御にはCortex-M33でも十分だろうとは思う
ベースはC3Pのほうで、そこに「Cordic(Coordinate rotation digital computer) Accelerator」と「Hall sensor interface」を追加したのがC3Mという印象を受けるが、逆かもしれない。どちらの製品も、省コストに向けたEntry Lineと高性能なMain Lineから構成され、コアの動作周波数やADCのサンプリング速度、それとHRPWM(High Resolution PWM)の有無の差はあるが、逆に違いはこのあたりだけとなっている。実際に今回のPSOC Controlがターゲットとするアプリケーションの範囲がこちら(Photo07)。
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Photo07:Industrialでも出力が小さいものは今回のPSOC Control C3シリーズで十分カバーできるとする。あと意外(といっては失礼か?)にもServer/Workstation向けのPSU(という事は出力1000W超だろうか)もカバーできるとしている
これに向けて、現在34製品がラインナップされている(Photo08)。
このPSOC Control向けのソフトウェア開発ツールは従来同様「ModusToolbox」が提供され、利用可能とされる(Photo09,10)。
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Photo09:これは別にPSOC Control専用ではなく、同社のMCUに加えてAIROCやUSB PDコントローラなども包括的にカバーしているツールで、サポート製品のラインナップにPSOC Controlも追加されたという格好
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Photo10:以前からモータ制御周りの包括ソリューションであるModusToolbox Industrialが提供されており、これがそのままPSOC Control C3Mでも使えるという話だそうだが、PSOC Control C3P向けのデジタル電源用ソリューションとかはどうするのだろう?いやEmbedded Digital Oscilloscopeを併用したシミュレーションツールが使えそうなのは判るのだが
また先にちょっと触れたSecurityおよびFunctional Safety周りの話がこちら(Photo11)。
Main LineはともかくEntry Lineでは価格面からこの辺りを省く製品ラインが少なくないが、今回はラインナップ一新ということでEntry Lineもこの辺が充実しているのが特徴の1つとなる。
最後にMain LineのSummaryがこちら(Photo12)。
すでに64pinの製品はMain Line/Entry Line共に購入可能になっており、48pinのものは“coming soon”とされる。ちなみにMain LineではADCのSampling Clockが240MHzになっており、HRPWMもTypical ResolutionがFc=240MHzの場合に65.1ps、通常でも100ps未満となっている。ADCは12bit/12MspsのSAR ADCだが、最大16chまでサポートするなど、全体的に結構高精度なアナログ入出力を装備しており、そういう意味でも従来と一線を画したラインナップになっていると言えるだろう。