独立系半導体研究機関であるベルギーimecは、最新世代の有機EL(OLED)と比べても1000倍明るい光を発するペロブスカイトLEDスタックを開発したと発表した。

詳細は1月4日付で「Nature Photonics 電子版」に掲載された。imecでは実験結果について、ペロブスカイト注入レーザーに向けた重要なマイルストーンであり、画像投影、環境センシング、医療診断などにおける刺激的な応用が期待されるとしている。

  • サファイア基板上に形成された透明ペロブスカイトLED

    サファイア基板上に形成された透明ペロブスカイトLED (出所:imec)

LEDは現在、さまざまな場所の照明用途に活用されている。また、有機ELもスマートフォン(スマホ)を中心に活用されているが、これらの発する輝度は最大にしてもまばゆいほどではない。

一方、特定の結晶構造を持つ材料の一種であるペロブスカイトは、太陽電池への活用が期待されてきたが、近年はさらなる用途開発が進められつつある。優れた光電気特性、低コストの加工性、効率的な電荷輸送を備えており、過去10年間にわたってLEDなどの発光用途の候補として探索が続けられてきた。しかし、ペロブスカイトは高い電流密度に耐えることができるものの、高強度のコヒーレント光を放出するレーザー動作にはまだ到達していない。

欧州連合(EU)が支援し、ルーベンカトリック大学(KU Leuven)電気工学科教授でimecの上級研究員でもあるPaul Heremansが率いる「「ULTRA-LUXプロジェクト」においてimecは、「光損失の低いPerovskite Light-Emitting Diodes(PeLEDs)アーキテクチャを初めて示し、これらのPeLEDを光の誘導放出をサポートする電流密度まで励起させることに成功」させたとする。この輸送層、透明電極、半導体活性材料としてのペロブスカイトからなる新たなアーキテクチャは、従来のOLEDよりも数万倍高い電流密度(3kAcm-2)で動作することができるという。

imecプロジェクトマネージャーのRobert Gehlhaar氏は、「このアーキテクチャにより、imecは従来の光ポンピングの電気的補助により、自然放出光の増幅を強化。これにより、電気注入が誘導放出の総量の13%に寄与し、薄膜注入レーザーを実現するしきい値に近づくことを実証した」と述べている。また、「高出力薄膜レーザーダイオードに向けたこの画期的なマイルストーンへの到達により、薄膜ペロブスカイトレーザーという新しいアプリケーションへの道が開かれた」ともしている。

なお、ULTRA-LUXプロジェクトは、EUの「Horizon 2020 研究およびイノベーションプログラム(助成契約 No.835133)」 に基づいて欧州研究評議会(ERC)から、Paul Heremans教授らへ研究資金提供が行われており、プロジェクトへの助成は2024年9月30日まで継続される予定となっている。