日揮ホールディングスの国内EPC事業会社である日揮、苫小牧埠頭、京都大学発のスタートアップであるエネコートテクノロジーズの3社は、北海道苫小牧市の物流施設に、次世代太陽電池である「ペロブスカイト太陽電池」を設置する共同実証実験を2024年から開始することを決定したと発表した。

苫小牧市が選ばれた理由としては、気温変化があるものの北海道の中では比較的雪が少ないほか、曇りの日が多いとされているが低照度でも発電できるというペロブスカイト太陽電池の特徴を活かすことができるためであるとしているほか、苫小牧埠頭が立地する物流施設は湿潤かつ塩気が多い港湾地域に面しており、一般的には適地とは言えない場所での実証も行うことでさまざまな角度での検証を進めることができるようになるともしている。

ペロブスカイト太陽電池の開発を行ったエネコートテクノロジーズは、ペロブスカイト太陽電池の材料技術や成膜技術を有しており、2023年4月にはモジュール変換効率19.4%という高効率のフィルム型ペロブスカイト太陽電池の開発に成功。2050年にカーボンニュートラルを目指す日本政府の政策の1つである「グリーンイノベーション基金事業」にも参画している。

  • エネコートテクノロジーズが開発したペロブスカイト太陽電池

    エネコートテクノロジーズが開発したペロブスカイト太陽電池(出所:日揮)

また、日揮は、2012年に太陽光発電事業に参入するなど再生可能エネルギー分野において発電所建設実績を有しているほか、ペロブスカイト太陽電池においても、エネコートテクノロジーズへの出資を行うことで施工方法や発電システムの開発に貢献できるとしている。

さらに苫小牧埠頭は、国際貿易港である苫小牧港を中心に北海道の産業や生活を支える物流事業を展開しており、2022年に発表した中期経営計画において、脱炭素や循環型社会の実現を支援することをミッションの1つに掲げて事業を遂行してきた

そうした環境への意識や方向性が一致したことから、苫小牧にてペロブスカイト太陽電池の早期社会実装に向けて、3社での共同実証実験の決定に至ったという。

実証実験は2024年初春から約1年間を予定。設置場所としては苫小牧埠頭の倉庫など、物流施設の凹凸状の屋根や外壁にフィルム型のペロブスカイト太陽電池を設置することを想定しており、屋根や壁面向けの新たな設置方法を開発・実証し、発電効率の測定や予測値と実測値の比較、塩害・降雪地域での耐久性、既存の倉庫屋根や建物曲面への太陽電池モジュールの設置方法などについて検証するという。また、今まで得られていなかった寒冷地におけるデータの収集も行っていきたいともしている。

  • 苫小牧埠頭の物流倉庫

    苫小牧埠頭の物流倉庫(出所:日揮)

3社の役割としては、日揮が実証計画策定やペロブスカイト太陽電池の設置、計測、分析および技術評価、倉庫などへの適用に向けた発電システムの開発を、苫小牧埠頭が、総合調整、設置場所の提供を、エネコートテクノロジーズが、ペロブスカイト太陽電池の提供、分析および技術評価をそれぞれ行うとする。

なお、3社はペロブスカイト太陽電池が物流倉庫などさまざまな場所に設置できる方法を確立することで、全国の物流拠点への普及・拡大につなげ、カーボンニュートラル社会の実現に貢献するほか、実用化にはさらなるコストダウンが必要なことを踏まえ、今回実証する新たな設置方法によって施工コストの低減を目指したいとしている。