2023年11月15日から17日までパシフィコ横浜にて開催している事業変革を推進するための最新技術とつながる総合展 「EdgeTech+ 2023」で東芝グループの東芝デジタルソリューションズは、部署や企業間の共創開発を促進するモデル流通のトータルソリューションなどを展示している。

同社ブースで注目を集めていたのは、分散・連成シミュレーションプラットフォーム「VenetDCP」。これは、さまざまなモデルや開発ツールを部署や企業間で連携させ、共同で検証することができるプラットフォームであり、サイバー空間上で設計情報や知識を互いに共有することが可能となっている。

  • 「VenetDCP」のシミュレーションの様子

    「VenetDCP」のシミュレーションの様子

例えば、自動車メーカーでは、自動運転の実現や先進運転支援システム(ADAS)の高機能化が進むのと併せて、複数のシステムが複雑に連携していくため、車載システム全体で複雑さが増しているという。システムが複雑化すれば、開発の難易度も増していくことになるが、そうした環境の中にあって、各コンポーネントのサプライヤー企業がハードウェアの開発を終えてからそのハードウェアに対する検証を行うのではなく、開発途中であっても各サプライヤーが提供するモデルを活用し、先行して検証を進めることでシステム開発の手戻りを減らし開発期間の削減を可能にするとしている。

また、モデルをプラットフォーム上に流通させる際に必要となる機密保護の仕組みが取り入れられているのも特徴の1つで、各企業はモデル内の開示したくない情報をプラットフォーム上に開示せず、相互非開示のままでシミュレーションを実施することができるという。特に多くのサプライヤー企業が関わる開発では、企業ごとに重要情報が含まれるモデル情報を公開したくないとの思惑もあり、うまく連携がとれず、検証には多くの労力と手間がかかっていたとし、そうした課題を克服するためにこうしたモデルを秘匿化しながら企業間検証を可能とする仕組みを取り入れたと担当者は語っていた。

さらに、それぞれの企業の担当者が一斉にモデルを動かさなければシミュレーションができないというわけではなく、パソコンが起動状態かつモデルが用意済みであれば、リモートを介したシミュレーションも可能で、モデルの使用には許可がいるものの、シミュレーションそのものは無人かつ自動化できる仕組みも組み込まれているという。

このほか、ネクスティ エレクトロニクスのモデル流通プラットフォーム 「moderix」と連携することで、モデルを安全に管理できる仕組みも構築可能。この連携により、暗号化と利用者管理による技術情報の保護を実現しつつモデルの相互利用を可能になるとするほか、チームや企業ごとに仮想マシンを分けることもでき、モデルを秘匿したままシミュレーションを行うことが可能になるという。

  • 東芝の「VenetDCP」とネクスティ エレクトロニクスの「moderix」の説明

    東芝の「VenetDCP」とネクスティ エレクトロニクスの「moderix」の説明

「日本においてこうしたモデル流通の流れは勢いを増しており、今後も導入が進むことが予想される。開発を早期化・効率化させたい場合や、海外拠点とアクセス権を管理しながら共有したい場合、ツールのライセンスを一元に管理したい場合などあらゆる場面において有効でメリットが多い『VenetDCP』と『moderix』に注目していただきたい」と担当者は語っていた。