市場調査会社のThe Business Research(TBRC)によると、2022年のGaNデバイス市場(主にオプトエレクトロニクスのほかRF、パワー半導体)は、2021年の62億4000万ドルから12.13%増の70億ドルへと拡大したと推定されるという。

また、足下ではロシアのウクライナ侵攻をはじめとする不安定要素はあるものの、長期的に見ると2026年までは年平均成長率(CAGR)15.4%で成長し、最終的に124億1000万ドルにまで成長すると予想されるともしている。

GaNデバイス市場のけん引役の1つは、航空宇宙防衛分野における技術的に高度なGaNシステムの増加とTBRCでは予想している。これは無線通信やレーダーなどにおけるパフォーマンスの向上だけでなく、帯域幅の拡大に対するニーズの高まりにも起因していると同社では説明している。

5GマルチチップモジュールにGaNを採用

GaNデバイス市場で成長が見込める分野は、5Gテレコム インフラストラクチャ用のマルチチップモジュール(MCM)へのGaN組み込みだともしている。MCM化することで、回路の電気的性能の向上が図られ、効率が向上することで電力消費量を削減できるようになるためである。また、無線ユニットのサイズと重量を削減するのにも役立つため、モバイルネットワーク事業者は、セルタワーや屋上に5Gを設置するコストを削減できるようになる。たとえば、2021年6月、NXP Semiconductorsは、5Gのエネルギー効率向上に向け、GaN技術を自社のMCMプラットフォームに統合することを発表した。

GaNデバイス市場最大のプレーヤーはTI

2021年のGaN市場のトッププレーヤーはTexas Instruments(TI)で、その市場シェアは11.25%。同社の成長戦略は、新製品の発売を通じて革新的なソリューションを提供することに重点を置いている。たとえば、2020年11月、産業用および自動車用アプリケーション向けに次世代の600V/650V GaN FETを発売している。

GaNデバイスの最大市場は北米で、2021年の規模は21億3000万ドル。同地域の市場は、電気自動車(EV)の生産増を目指す政府のイニシアチブによって支えられているという。

また、Innoscienceを含む多くの中国のチップメーカーが、多様な電源用GaNデバイスの開発に注力し、生産能力を拡大して、増大する需要への対応を図っている。

中でもInnoscienceは最近、8インチGaN-on-Si HEMTデバイスの出荷が累計で1億ユニットを超えたと発表しており、同社の製品が市場で認められていることを強調している。

同社は2017年に8インチ GaN-on-Siウェハ生産ラインを設置。2021年には30Vから60Vの電圧仕様のGaN-on-Siデバイスの量産を開始し、LiDAR、データセンター、5G分野へと提供してきた。現在、月間1万枚の8インチ GaN-on-Siウェハ製造施設を所有しており、その生産能力は今後数年間で月間7万枚に拡大する予定としているほか、2024年には自動車用GaN-on-Siパワーデバイスの生産を開始する予定ともしている。

なお、将来の市場の発展を見越して、少なくとも15社以上の中国企業が、エピウェハ、材料、基板、パワーモジュール、ファウンドリ、急速充電などといった、さまざまなGaN関連のソリューションやサービスの開発を行っている模様である。