米Western Digitalが保留としていたキオクシアホールディングスとの合併協議を再開したと、Bloombergをはじめとする複数の米国メディアが報じている。新たな交渉は2022年の遅い時期に再開され、まだ初期段階にあり、再び合意に至らずに終わる可能性もあるという。Western Digitalが実質的にキオクシアを買収するのか、それとも対等合併して1つの会社になるのか明確ではない。

両社を巡っては、2021年にも合併に向けた交渉が行われていると報じられたことがあったが、2021年10月に、200億ドルを上回る規模の合併交渉が行き詰まっている模様だと米Wall Street Journalが伝えていた。Western Digitalの株価が大幅に下落したことも合併交渉の妨げになったとも伝えられていたほか、当時のキオクシアは、新規株式公開(IPO)の検討を優先させると言われていたが、2023年1月に至るまでIPOは行われていない。

この間、経済産業省(経産省)は、特定半導体生産設備整備計画として、TSMC、キオクシア、Micron Technologyを認定。キオクシアについては、最大約929億円の補助金が出されると見られているが、実際の支給先としては、キオクシアのみならず、Flash Partners、Flash Alliance、Flash Forwardの3社も含まれている。

これら3社は、いずれもキオクシア50.1%、Western Digital49.9%出資によるキオクシア四日市工場の各製造棟ごとのNANDフラッシュメモリ製造に関する合弁会社で、各製造棟の製造装置は、これら2社の出資比率にしたがって所有されている。Flash PartnersとFlash Allianceについては2029年12月31日まで、Flash Forwardについては2027年12月31日まで、合弁契約が延長されている。したがって、Western Digitalは、2020年代を通して、キオクシアの半導体製造装置の所有権(49.9%)を保持し続けることになる。

しかし、ここで問題になるのが、キオクシアの装置以外の土地建物や従業員については、Western Digitalの所有権がないということである。もしも、キオクシアをWestern Digital以外の企業が買収する場合、つまり土地建物や従業員を獲得できたとしても、Western Digitalとの合意が得られなければ四日市工場で装置を使ってNANDを製造できないということである。事実、米Bain Capitalが東芝メモリ(現キオクシア)の買収をしようとした際、その買収に反対するWestern Digitalがこれら合弁3社の東芝側の持ち分の東芝メモリへの移管を契約違反として東芝を提訴する事態が発生した(後に提訴取り下げ)。この点で、Western Digitalがキオクシアを買収するなり合併することになれば、会社自体の所有権と装置の所有権が異なるという問題は解消することになる。

2022年1月11日訂正:記事初出時、Flash Partners、Flash Alliance、Flash Forwardの3社の出資比率につきまして、東芝50.1%、Western Digital49.9%と記載しておりましたが、正しくはキオクシア50.1%、Western Digital49.9%となりますので、当該部分を訂正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。