ispaceは11月8日、2022年11月22日以降にSpaceXのFalcon 9ロケットで打ち上げを予定している、同社の民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」の月面着陸を目指す「ミッション1」に関して、同月4日付で内閣府より宇宙資源探査・開発の許可を取得したことを発表した。

同社は、宇宙資源の探査および開発に関する事業活動の促進に関する法律(令和3年法律第83号)に基づく「宇宙資源の探査および開発の許可」に関する申請をするにあたって、「人工衛星等の打上げおよび人工衛星の管理に関する法律」(宇宙活動法)の第20条に基づく「人工衛星の管理に係る許可」に関する申請書に併せてミッション1における事業活動計画を内閣府に提出し、その内容をもって許可を取得。

11月4日に開催された会見において、高市早苗内閣府特命担当大臣は、「今回許可された計画に沿ってispaceが月面資源の所有権を顧客であるNASAに移転をすれば、民間事業者の月面での宇宙資源の商業取引として世界初の事例となります。民間事業者による商業的な宇宙開発の活性化に向けて画期的な第一歩となります。世界の宇宙開発が活発になっていく中、米国をはじめ関係国と連携し、この法律に基づいた、民間事業者による資源利用の実績を積み上げるということによって国際社会をリードして参りたいと考えております」とコメントしている。

この大臣のコメントにもあるように、今回の許可により、NASAとは、契約した月資源の商取引(月資源商取引プログラムにおいて設定されている、NASAへの譲渡)が行われることになる。その資源は月表面を覆うレゴリスであり、ispaceのランダー(月着陸船)がミッション1で月面への着陸後、着陸時の衝撃吸収用として着陸脚先端に装備されているフットパッドでの採取が予定されている。

着陸時の衝撃により舞い上がったレゴリスが、この4つのフットパッドに堆積することが想定されており、それをランダーに搭載したカメラにより撮影。撮影画像により確認されたレゴリスの所有権が、ミッション1運用終了前にNASAに移転する商業取引を行うという流れとなっている。これもまた大臣のコメントにもあったが、月面での採取と所有権の移転に成功すれば、世界初の月資源の商取引となる。

なお、今回の商取引は、このレゴリスを後ほどアルテミス計画の有人月面探査で宇宙飛行士が回収するというわけではなく、物理的な受け渡しを伴うものではないという。

ispaceは、2020年12月にNASAが発表した4つの契約のうちの2つを受注済みだ。2024年に予定している月探査が目的の「ミッション2」においては、ispace Europeが開発を推進しているローバー(月面探査車)を使用して月のレゴリスを採取し、NASAと月資源商取引を行う予定としている。ミッション2については改めて申請を行い、別途認可を取得する予定とした。

同社の袴田武史代表取締役CEO&Founderは、「今回、宇宙資源法の第一号案件として、ispaceの計画が許可されたことを大変嬉しく思います。これにより、ispaceのミッション1運用およびNASAとの月資源商取引契約が日本政府許可のもと行われることになります。私たちは、2回のミッションで採取する月のレゴリスをNASAに譲渡する予定です。商業的な宇宙資源利用はispaceの目指す月と地球の経済圏確立への一歩になりますし、NASAの目指す持続的な月面滞在を支援することにもつながると信じています。宇宙資源法は新たな制度であり、今回の許可に至るまで、内閣府や関係者の皆様と深い議論を重ねさせていただきました。官民の連携により宇宙資源の探査および開発が前進していくことを心から歓迎いたします」とコメントしている。

  • 民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のランダー

    民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のランダー (c)ispace (出所:ispaceプレスリリースPDF)