日本人最多5回目となる宇宙飛行

若田宇宙飛行士は1963年8月1日生まれ。今回のミッションは、9月以降の打ち上げ予定であるため、還暦目前の59歳での長期滞在となる。また、日本人宇宙飛行士としては最多となる5回目の宇宙飛行を記録することとなる。そうしたさまざまな記録を更新することとなるが、若田宇宙飛行士は、「アメリカやロシアには6回、7回という飛行経験がある宇宙飛行士や、800日以上の宇宙滞在記録がある宇宙飛行士もおり、そうした世界の宇宙飛行士たちの活躍に目を向けた時、自分も一歩一歩、そういったところに近づいていきたいという気持ちがある」とする一方、今回のフライトでは、若田宇宙飛行士以外の宇宙飛行士、米国のNicole Mann宇宙飛行士ならびにJosh Cassada宇宙飛行士、ロシアのAnna Kikina宇宙飛行士のいずれもが初飛行、いわゆるルーキーであることから、「それぞれ優れたパイロットであったり、技術者であったりするわけだが、宇宙飛行の経験がないということで、私が宇宙に行く前に、さまざまな観点で経験に基づいてアドバイスをすることもたくさんあり、それは打ち上げ後の宇宙においても、先に宇宙飛行を経験させてもらった者として、できるだけ彼らをサポートしていきたいと思っている」と語り、それがさらなる次の世代につながっていくことになるとの思いと語った。

こうした、誰かを支えるという思いは、今回のキャッチフレーズとして掲げている「思いやる。チームは強くなる。」というという文言にも入れられているが、これについて若田宇宙飛行士は、「思いやる、という言葉は、私が大切にしたいと思っている言葉。我々の仕事に限らず、多くの仕事が同じだと思うが、特に有人宇宙活動の仕事というのは、1つのミッションを成し遂げるために、多くの人々、多くのチーム、それが1つの国に留まらず、さまざまな国のチームが結束して、チームワークをもって初めてできることだと思っている。ミッションをスムーズに進め、さまざまな活動の成果をきっちりと出して行くために不可欠なのは、その相手を思いやるという、相手の立場に立って考えているということ。同じ目的に向かってチームとして団結していくことの大切さは、これまでの宇宙飛行の時にも大切だと思ってやってきたし、一緒に仕事をしてくれる地上、そして宇宙の仲間もみな同じように価値観をもって仕事をしてくれたこともあり、この言葉を入れることにした」とその思いを語ってくれた。

また、今回のミッションに期待することとしては、例えば、これまで船外活動の訓練はしてきたものの、そうした機会はなかったことに触れ、「これまで経験できなかったことも経験できればと思っており、そういったことを楽しみにしている」と説明。そうしたこれまで経験したことのなかった活動として、「月に立ちたいという思いはある。生涯、有人宇宙活動の現場での仕事をしていきたいと思っている」と、生涯現役を宣言。有人月探査にも挑みたいという意欲を見せつつも、「実際に行ける可能性は低いと思っているが、希望を常にもって頑張っていきたいと思っている」と、若い世代の宇宙飛行士たちとともに、チャンスを掴む努力をしていきたいとした。

さらに、こうした有人月探査を日本人宇宙飛行士が実現していくうえでもISSの存在はやはり重要になってくるともする。アルテミス計画には日本も参画することが決まっており、さまざまなシステムの開発を担当することとなる。「日本がきちんと、宇宙システムを提供していくことで、日本人による月面探査が実現すると思う。そのために私もこれまでの経験を含めて、支援をしていきたいと思っている。今回の長期滞在ミッションでも、月探査などに向けた素材の研究などが行われる予定であり、日本の優れた技術をさらに伸ばしていけるように取り組んでいきたい」と、自分の今回の長期滞在ミッションが、そうした人類の活動領域を広げる未来につながっていく取り組みであるとの認識を示し、今後の打ち上げに向けた限られた時間の中、体調管理をきっちりと行い、最大の成果を出すために全力を尽くしていき、2023年に宇宙飛行予定の古川宇宙飛行士にきちんとバトンをつなげていきたいと思っているとしていた。

  • 報道陣による記念撮影に応えてくれた若田光一宇宙飛行士

    報道陣による記念撮影に応えてくれた若田光一宇宙飛行士