SystemReadyに「SystemReady VE」を追加

さて今回のちょっと新しい話題である。Armは2020年のDevSummitでSystemReadyを発表しているが今回これに新しく「SystemReady VE」を追加した事が発表された(Photo08)。

  • Realmのの実装をVEとして提供するのかと思ったが違った

    Photo08:これを見て、てっきりRealmの実装をVEとして提供するのかと思ったのだが、そういう話ではなかった

要するにこれは既存のハードウェアに対する仮想環境に関するもので、例えばすでに提供しているハードウェアのFirmware Updateを作成したとして、それをいきなり実機で試すのではなく仮想環境でチェックするといった形で利用する事を念頭に、仮想環境上でその他のSystemReadyの認証を取得したソフトウェアがそのまま稼働する事を保証するためのもの、という話であった。

この最初の認証を取得したものが、やはりAmpere Altraになる、との事だそうだ(Photo09)。

  • SystemReady VEの認証とほかのSystemReadyの関係性

    Photo09:なので、SystemReady VEの認証を取得した仮想環境上で開発したソフトウェアは、そのままSystemReady SR(やその他の環境)で正しく動作する事が保証される格好だ

このSystemReady、過去18か月の間に50以上の認証が取得されたそうである(Photo10)。

  • Portenta X8もSystemReady IRを取得

    Photo10:なんでArduinoが? と思ったのだが、Portenta X8がSystemReady IRを取得していた

次に5G周り。特にO-RAN絡みで多くのベンダーが参入しており、ここにArmを採用する事例は非常に多くなりつつある(Photo11)。

  • Armベースのものが随分増えて来た

    Photo11:一番最初はx86ベースのWhiteBox Serverが結構使われていたが、このマーケットもArmベースのものが随分増えて来たように思う

これに関し、ArmはTech Mahindraと共同で2022年2月に5G Solution Labを開設、すでに多くの企業がこれを利用し始めているとしている(Photo12)。

  • 立ち上げそのものは2021年11月、公開が2022年2月

    Photo12:立ち上げそのものは2021年11月、公開が2022年2月なので、まだ本格稼働はこれからという感じではあるようだが

国内で言えば、楽天が利用企業の名前の1つとして挙げられる(その他の企業については現時点ではまだ公開できないとの事)との事だった。

最後に日本のスーパーコンピュータ「富岳」について触れ、富岳によってHPCマーケットの足掛かりができた事を大きくアピールして、氏の説明は終わった(Photo13)。

  • これに続くのはNVIDIAのGraceとなる

    Photo13:これに続くのはNVIDIAのGraceという事になるのだが、ただHPCに関してはx86の牙城を崩すにはそれなりの時間が掛かりそうである

ということで、先に述べたSystemReady VEを除くと今回は特に新製品とか新技術の話はなかった格好になるが、2016年にソフトバンクに買収されてからおよそ6年弱、Neoverseを発表してから4年弱で、ここまで急速にArmがInfrastructureのマーケットを掌握すると予想していた人は少ないと思う。

その最大の要因はエコシステムをうまく作れたことだが、その陰の要因はソフトバンクによる買収で投資を大幅に増やせたことにあり、これはBergey氏も述べていた。

すでにこのエコシステムはパートナーによる再投資などで自律的に回転を始めており、今後はどんどん大きくなってゆくだろう。このマーケットを例えばRISC-Vが狙ったとして、ではRISC-V企業がArmが投資する以上の金額をエコシステム構築に費やせるか? というと甚だ疑問ではあり、当面このマーケットはx86とArmという2大アーキテクチャが分け合う形になってゆく様に思われる。そうした勢いを感じさせる説明であった。