順天堂大学は12月13日、シスメックスとの共同研究としてシスメックスの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原検出試薬「HISCLTM SARS-CoV-2 Ag 試薬」の性能評価を実施。鼻咽頭ぬぐい液中のSARS-CoV-2ウイルスを高い感度で検出できることを確認したと発表した。

同成果は、同大大学院医学研究科臨床病態検査医学の田部陽子 教授、藍智彦 非常勤講師、齋藤香里 研究員らの研究グループによるもの。詳細は英国科学雑誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載された。

新型コロナの判定方法として、PCR法がもっとも正確な手法であるが、検査方法が煩雑、コストが高い、感染性がないウイルスの断片でも検出してしまう、といった課題がある。一方の抗原検査は、検査方法が簡単で、短時間で診断ができるが、精度そのものに課題があるものが多く、あくまで参考程度という位置づけであり、実際の診断としては使用されていない。

HISCLTM SARS-CoV-2 Ag 試薬は、全自動測定装置を用いることで、鼻咽頭ぬぐい液中の新型コロナウイルスを短時間で、簡便かつ簡易な核酸検出検査であるLAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法やTMA(Transcription Mediated Amplification)法に近い感度で検出することを可能とした新型コロナ抗原検出試薬。この自動抗原検出システムは、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)を使用して新型コロナが持つタンパク質を特異的に検出し、1時間あたり最大200検体の処理が可能である、大規模なスクリーニング検査ての適用が期待されることから、今回、その有用性の検証が実施されたという。

臨床性能試験は、新型コロナのPCR検査が陽性となった46人の患者とPCR検査陰性であった69人から得られた115検体の鼻咽頭ぬぐい液を用いて実施。同試薬は、一般的な風邪やインフルエンザを引き起こす他のヒトコロナウイルスでは陽性を示すことなく、高い特異度があることが確認されたほか、新型コロナウイルスに感染していない69人はいずれも陰性であることが確認されたという。また、PCR検査で新型コロナウイルスのRNA遺伝子のコピー数が100以上を含む検体(鼻咽頭ぬぐい液)では95.4%が陽性を示し、コピー数が99未満の検体でも16.6%が陽性となることが確認されたという。

また、ウイルス量が少ない(コピー数が50未満)検体の81.8%が陰性と診断されており、研究グループでは、ウイルス量が非常に少ない場合には、感染力がほとんどないことから、この結果は同試薬が、PCR検査と比較して臨床で有用に活用できることを示す結果であるとしている。

なお、今回の研究は日本でのみ実施されたことから、今後、海外でも検証を行うなど、さらに広い範囲で検証を進めていく必要があると研究グループではコメントしているほか、各種の変異株でも正確な測定が行えることを検証していく必要があるともしている。

  • 新型コロナ

    HISCLTM SARS-CoV-2 Ag 試薬によるウイルスたんぱく測定値と、RT-PCR法によるウイルスRNA測定値の相関。陽性検体のカットオフインデックス値は、PCRのコピー数と良好な相関を示した (出所:順天堂大Webサイト)