熊本大学は3月24日、血液および尿中に含まれる「修飾ヌクレオシド」を測定し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染の有無および重症化率などの予後予測を可能とする新技術を開発し、特許を出願中であることを発表した。

同成果は、熊本大大学院 生命科学研究部の富澤一仁教授、同・大学院医学教育部の永芳友大学院生らの研究チームによるもの。

現在、新型コロナへの感染を検査するために一般的に用いられているPCR検査では、唾液や鼻咽頭をぬぐった液を献体として使用しており、検体そのものにウイルスが存在することから取り扱う医療従事者の感染リスクが課題となっている。

一方、血液や尿にはウイルスはほぼ存在しないことが確認されており、血液や尿などを献体として、感染の有無の確認ができれば、医療従事者の感染リスクを下げられると考えられていた。

そこで研究チームが今回着目したのが、修飾ヌクレオシドという物質だ。RNAウイルスの一種であるSARS-CoV-2の内部には、多くの化学修飾を受けたRNAが存在している。またヒトの細胞内にも同様に化学修飾を受けたRNAが存在しており、これらが分解されたあとの物質が修飾ヌクレオシドであり、血中や尿中にも存在している。

研究チームが、ヒトのSARS-CoV-2感染細胞内の修飾ヌクレオシドの解析を実施したところ、SARS-CoV-2に感染することで、2種類の修飾ヌクレオシドが特異的に増加していることが判明したという。

続いて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者約200名分の血液および尿の解析を実施。その結果、感染細胞内で特異的に増加していた2種類の修飾ヌクレオシドが、健常人と比較して有意に上昇していることが確認されたとするほか、その診断精度は感度99.3%、特異度93.33%と、PCR検査とほぼ同精度であったという。

SARS-CoV-2は、感染しても多くのヒトで症状が出ない(もしくは自覚できない程度の症状)と考えられている。また発症しても軽症で済む場合もあれば重症化に至る場合も、さらに最悪の場合は死に至ることもあり、個人差が大きいことが特徴の1つであり、今回の研究から、2種類のヌクレオシドの数値の上昇は、重症度やその後の重症化、治療効果とも関連していることも明らかにされたという。

なお、今回の研究で開発された修飾ヌクレオシド測定技術は、新型コロナウイルスの陽性診断のみならず、診断後の療養場所の選定や適切な治療薬選択の基準として応用されることが期待されると県有チームでは説明している。

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    (左)従来法(PCR検査法)の問題点。(右)今回開発された手法(修飾ヌクレオシド測定技術)の特徴 (出所:熊本大プレスリリースPDF)