産業技術総合研究所(産総研)は11月16日、11月13日~16日にかけてフランスで開催された「第26回国際度量衡総会」において、「キログラム」、「モル」、「アンペア」、「ケルビン」の4つの基本単位の新たな定義が採択されたことを明らかにした。

  • 今回採択された国際単位系における定義改定の概要

    今回採択された国際単位系(SI)における定義改定の概要 (出所:産総研Webサイト)

これにより、質量の単位であるキログラムの定義は「国際キログラム原器」という器物から、「プランク定数」という物理定数を基にした定義に改定することが決定となり、すべての計量単位が原器という器物から解放されることとなった

  • 日本国キログラム原器

    日本国キログラム原器(No.6:中央)と副原器(No.30:左)、実験用原器(E59:右)

  • 副原器(No.30)

    副原器(No.30)

  • 日本国キログラム原器(No.6)

    日本国キログラム原器(No.6)

  • 実験用原器(E59)

    実験用原器(E59)

  • 副原器(No.30)

    副原器(No.30)

  • 日本国キログラム原器(No.6)

    日本国キログラム原器(No.6)

  • 実験用原器(E59)

    実験用原器(E59)

キログラムは国際単位系(SI)の中でも特に重要な基本単位の1つでありながらも、器物という物体に依存することで、質量の変化が危惧されてきた。そのために、国際研究プロジェクトとして、新たな定義の実現に向けた取り組みが進められてきたことは既報のとおり

参考:「さよなら「キログラム原器」 - 130年ぶりに定義が変わる「質量」」

  • 同位体シリコン球
  • 同位体シリコン球
  • シリコン球
  • 国際研究プロジェクトで製造され、新定義の決定に向けた計量が行なわれた28Siの比率が引き上げられた同位体シリコン球と別途製造された、同位体ではないシリコン球。このシリコン球が新たなキログラム原器というわけではなく、新定義はあくまで「プランク定数」という物理定数を基にしたものとなる

今回の決定を受けて、産総研の中鉢良治 理事長は「計量標準は、普段意識することはありませんが、あらゆる科学・技術の基礎となる極めて重要なものさしです。産総研 計量標準総合センターの研究者たちの、科学・技術の基盤を支えるという高い志と常に究極の精度を追求するたゆまぬ努力が、定義改定への貢献となって結実したものです」とコメント。理事長、そして1人の技術者として、研究者たちの成果と貢献に対し、心からの敬意を表したいとしている。

なお、これら4つの新たな定義は2019年5月20日の世界計量記念日から適用されることとなるが、普段の一般の生活がなにか変わる、ということはない。また、今後もキログラム原器は、高精度な重さの測定を行なうための分銅として活用されていくとのことで、日本の保有する「日本国キログラム原器」が博物館などに飾られることはかなり先のこととなりそうである。