半導体製造装置・材料業界団体である国際半導体製造装置材料協会(SEMI)は、「Global 200mm Fab Outlook to 2021(200mmウェハを用いた半導体ファブの2021年に向けた世界規模の見通し)」という調査レポートを7月に発行し、その中で「今年から2021年に向けて、世界中の200mmファブの生産能力は、少なく見積もっても月産50万枚へと増加する。これは2016年の生産能力に比べて10%増加に相当する生産量である」との見解を示した。

モバイル、ワイヤレス、IoT、そして自動車向けといった半導体市場が成長を続けているが、これらのアプリケーションで使用される製品の多くが実は300mmではなく200mmウェハを用いて製造されている。そのため、世界中の200mmファブでフル稼働が続いており、生産能力も限界まで達している状況だという。さらに SEMIは、2016年の世界中の200mmファブ数188から、2021年には197へ拡大するものと期待を示している。

図1 世界中の200mmファブの生産能力(青棒、右軸、単位:1000枚)と200mmファブの数(赤線、左軸)。2017年以降はSEMI予測。LED製造用、エピ結晶製造用、および研究開発用の200mmファブは除く (出所:SEMI Global 200mm Fab Outlook to 2021)

中国の200mmファブの生産能力は2021年末までに3割増の見通し

SEMIの調べによると、現在、中国の200mmファブの生産能力は月産約70万枚であるが、これが2021年末までに90万枚を超す状態へと引き上げられると予測している。成長率で言えば、実に28%以上であり、その間、中国の200mmファブの生産能力は、台湾、日本、米国を上回り、欧州に次ぐ第2位になるとみられる。以前、世界で一番200mmファブの生産能力が高かったのは、日本であったが、現在は台湾にその座を譲っている。

中国で新たに計画されている200mmファブは、製品カテゴリの多様性を示すものとなっている(図2)。中国最大のファウンドリであるSMICやHua Hong Semiconductor(華紅半導体)による既存200mmファブ(ファウンドリビジネス向け)への投資以外にも、アナログ、パワー、およびMEMSアプリケーションに焦点を当てた新しいプロジェクトも増えてきている。SEMIによると、中国は2016~2021年の間に、ファウンドリ用に2つ、アナログ用に2つ、MEMS用に2つ、パワー半導体用に1つ、ロジック用に1つの合計8つの200mmファブを追加新設する計画であるという。

図2 中国200mmファブの半導体種類別月間生産能力の推移(2016年までは実績、2017年以降は予測)。上からMEMS(橙色)、ロジック(紫色)、ファウンドリ(緑色)、ディスクリート(赤色)、アナログ(青色) (出所:SEMI Global 200mm Fab Outlook to 2021)

活況とは裏腹に200mm装置の入手が困難な状況に

200mmウェハに対応する半導体製造装置は、そのほとんどがすでに製造中止となっているため、新たに200mmファブを稼動させるためには、製造に必要な装置群を中古市場で求める必要がある。しかし、既存の200mmファブも増産投資を進めており、結果として中古市場における200mm対応装置も枯渇気味で、装置を入手すること自体が困難となっている。そのため、200mmファブの建設を延期せざるを得ないケースが出ていることをSEMIも認めている。

最近、中国に200mm以下のサイズのシリコンウェハ市場を対象としたシリコンウェハ製造工場が登場してきており、エコシステムは整備されつつある。SEMIは、装置メーカーが200mmファブからの需要が増えることをみこして、200mm装置一式(ツールセット)を中国内で製造するようになることに期待がかかるとしている。

そうした新たな中国の200mmファブでは、スマートカード、アナログIC、ディスクリート製品などのいわば「レガシー」製品だけではなく、MCU(マイコン)、PMIC(電源管理IC)、CMOSイメージセンサ、指紋センサ、パワー半導体、MEMSなど多用途の製品が製造されることとなる。中国の電子機器製造受託業および自動車メーカーが今後、ますます台頭してくることで、そうした200mmファブが、中国のさまざまな製造エコシステムをサポートする重要な役割を果たすだろうとSEMIは期待をかけている。

それでも200mmファブよりも300mmファブを優先

こうしたSEMIのレポートには、製造装置の拡販を支援するSEMIの希望的観測が含まれている。ただし、台湾の市場動向調査企業であるTrendForceも7月末時点で、中国本土に5つの200mmファブが建設中あるいは建設中であることを確認している、と報じており、中国で200mmファブが増えることは事実だろう。

こうした新設ファブの内訳は、ファウンドリが2つ、CMOSイメージセンサ、MEMS/IGBT、液晶ドライバICの専用ファブが各1個となっているが、中古市場における200mm装置の枯渇から、建屋ができても、装置一式を購入し、それをファブに搬入できるか不明確な場合が多い。仮に入手できたとしても、その価格は新品よりも高いことも多いうえに、故障していたり性能が著しく劣化していることも多く、リファビッシュ(新品同様な性能が出せるように補修したり部材を交換する作業)に莫大な費用がかかる。中国国内には、CMOSイメージセンサや液晶ドライバIC向け専用の300mmファブがすでに建設されており、減価償却の済んだレガシーな200mmファブならともかく、果たして、200mmファブを新設して、コスト競争力があるかも不明確である。

日本では話題になってないが、8月2日に上述の華虹半導体が無錫に300mmファブを建設することを明らかにしている。中国では、すでに15以上の300mmファブが建設中(計画が明らかになったが未着工を含む)であり、水面下ではさらに多数の300mファブ新設が計画されている。