実験結果

図6aに、入力電圧9V時に、振幅が1Vp-pの1kHzのサイン波リップルを重畳した場合の同期整流降圧-昇圧型コンバータの出力電圧を示します。すべての電圧は、AC結合のプローブを使ったスコープで測定し、スイッチング周波数のノイズは除去してあります。入力電圧の変調は、NチャネルMOSFETのソースフォロアを直列接続して行いました。予想通り、入力信号はおよそ40dB減衰しました。

図6bに、コールド・クランク・シミュレータを使い、20msに渡る最小3Vのコールド・クランク過渡事象に対する出力電圧を示します[8]。これまでに述べたように、この4スイッチ同期整流降圧-昇圧型コンバータは、このコールド・クランク事象のプロファイル中でも切れ目のない安定化動作を提供し、定格設定の12Vの出力電圧を保持しています。入力電圧が低下した場合でも、この回路の出力電圧VOUTからコントローラのBIAS入力ピンに電圧を印加しているため、使用した制御用パワーMOSFETの各ゲートは適切な振幅で駆動されます。

図6:4スイッチ降圧-昇圧型コンバータのリップル除去比の実測波形。(a)9V DC入力、 (b)コールド・クランク性能

まとめ

この4スイッチ同期整流降圧-昇圧型コンバータは、高いPSRRと過渡波形に対するイミュニティ、高効率、そして低いデバイスコストを提供することから、高精度の電圧安定機能が可能な、コンパクトで高いコスト効率のソリューションを車載アプリケーションに提供し、体積の大きなパッシブ・フィルタ部品も不要にします。この降圧-昇圧型コントローラ・ソリューションはAEC-Q100車載規格の認定取得済であり、数々の車載サブシステムへの実装に役立ちます。

参考文献(英語)

著者紹介

ティモシー・ヘガーティ(Timothy Hegarty)
Texas Instrumentsパワー製品ビジネスユニット システム・エンジニア
アリゾナ州フェニックスにて従事。IEEEパワーエレクトロニクス学会会員でもあり、高効率絶縁/非絶縁コンバータ、広入力範囲PWMレギュレータおよびコントローラ、共振コンバータ、再生可能エネルギーシステム、システムレベルのシミュレーションを専門分野とする。アイルランドのコーク大学にて、電気工学の学士号および修士号を取得。TI入社以前は旧National Semiconductor、Artesyn Embedded TechnologiesおよびMelcherに在籍。