オルタネータで発生するサイン波リップル電圧について

適用可能なAF(可聴周波数)範囲内の、接触過渡波形に対するイミュニティも重要な要件の1つです。この原因の1つに、車載オルタネータの出力に発生する残留AC電流があります。オルタネータのステータ巻線は、基本的には高インピーダンス出力の三相サイン波の電流源であり、ダイオードによる全波整流器に接続されています。この整流機能によって、重複した電流パルスが発生し、そのリップルは三相信号によって決まります。表1に示すようにISO 16750-2 section 4.4の規定では、オルタネータ出力に発生する電圧リップルを、テスト・パルスの重大レベルに応じて50Hz~25kHzの周波数範囲で、振幅UPPは1V、2V、4Vp-pと定めています(図3)。

図3:ISO 16750-2に規定される重畳サイン波ACテスト電圧。(a)50Hz~25kHzの周波数範囲で掃引、(b)2分間の掃引期間で周波数を対数変化

最大限のPSRRが可能

DC/DCコンバータのPSRRは、ループ帯域幅に関連し、影響を受け、昇圧モードの場合に発生するRPHZ(right-half-plane zero:右半面ゼロ)周波数に依存して、通常、スイッチング周波数の20%か、それ以下に制限されます。TIの「LM5175-Q1」のようなコントローラ製品では、入力電圧VINと出力電圧VOUTの電位差を元にPSRRを向上するとともに、入力電圧の過渡波形を除去するよう設計された適応スロープ補償付きの電流制御手法のおかげで、PSRR性能は入力電圧VINや負荷変化の影響をまったく受けていません。

図4:シミュレーションで得られたボード線図。ループのクロスオーバ周波数は、9V入力時には14kHz、16V入力時には17kHz

図1のCSLOPEで決定されるスロープ補償の設定は、旧来の理想化されたデッドビート応答(オーバーシュートやアンダーシュートなしの応答)のために、バレー電流モードの降圧動作ではインダクタのアップスロープと等倍に、またピーク電流モードの昇圧動作ではインダクタのダウンスロープと等倍に選択されています。

適用可能なインダクタのスロープの半分の設定でも、理論的には最適な入力電圧変動の除去が可能ですが、この場合にはループ安定のためのスロープ補償が最小限になります。図4に、シミュレーションによって得られた入力電圧9V時と16V時のコンバータのオープン・ループ・ゲインと位相のプロットを示します。また図5に、対応するPSRR性能を示します。

図5:シミュレーションで得られたPSRR性能。入力電圧9Vでは1kHzで40dB、16Vでは42dBのPSRRが得られる