そしていよいよ総合部門。以下の結果となった。

総合部門

優勝:HELIOS(競技部門5位、モデル部門2位)(画像25)
準優勝:Superくろしお(競技部門6位、モデル部門10位)(画像27)
3位:R-GRAY BLACK(競技部門4位、モデル部門8位)(画像3)

HELIOSはETロボコンCS大会史上初の2連覇を達成。さらに、チーム名が「ADoniS」だった2008年にも総合優勝を果たしており、アドヴィックスとしては通算3回目という前人未踏の総合優勝を飾ったのである(画像33・34)。

画像33。総合優勝を果たしたHELIOSのメンバー。今年は、サポート役にはついているもののベテラン選手が抜け、入社1・2年目の若手でチームが編成された

画像34。総合部門の表彰台。HELIOSの右のチームがSuperくろしお、左がR-GRAY BLACK。R-GRAY BLACKの左の黄色のスタッフシャツの男性が、星本部・実行委員長

しかしHELIOS、モデル部門ではA評価でゴールドだったが、競技部門では表彰台に上がっておらず、なぜ? と感じた方もいるのではないだろうか。実は、HELIOSはアウトで完走はしたがそこでリタイヤし、アウトの難所は階段すらクリアできなかったのだ。

大会終了後に、優勝者への特典「マイナビニュースにインタビューが載る権利」により、筆者らがHELIOSのチームメンバーに話を聞いたのだが(これについては後ほど別に掲載される予定なので今しばらくお待ちいただきたい)、メンバーの全員がその瞬間に「自分たちに優勝はなくなった」と思ったそうで、会場でも実は「意外」という雰囲気があった。

どちらかというと、準優勝まで発表された時点で、唯一インとアウトのWパーフェクトを決めている猪名寺駅前徒歩1分が優勝だろうだろう、という雰囲気だったのだが、この結果はモデルも重要視されるETロボコンならではである。

ちなみにHELIOSが総合優勝に輝いた理由はいくつかある。まず、モデル部門で2位ということが大きい。そしてアウトコースは「完走しかできなかった」ではあるが、この完走がとても大きかったのだ。完走したことで結果が16.9秒(Bluetoothを使用したボーナス-5秒)となり、インの-18.3秒と合計して-1.4秒となり、競技部門で5位だったのだ。

もしこれがリタイヤしていたら、Bluetoothの-5秒ボーナスはつくものの、リザルトは115秒(どこでリタイヤしても一律120秒というタイムになる)。すると、インとアウトの合計で96.7秒となり、競技部門では11位になってしまうのだ。

モデル部門が2位ではあっても、競技部門が11位となると、総合プロット(画像35)を参照してもらうとわかりやすいが、ちょうど優勝当落選の赤い曲線があるが、そのライン上にかなり近い位置まで来ると思われる。そうなっていたら混戦状態になっていたはずで、HELIOSは総合優勝できなかった可能性もあるのだ。

それが、実際の結果の競技部門5位とモデル部門2位という結果で総合プロットを見ると画像35の赤丸Aの通りで、最もHELIOSがグラフの右上の頂点=総合優勝に近い位置にいることになる。よって、優勝というのはまったくもっておかしな判定ではなくなるのだ。総合プロットで見ると、HELIOSが抜きん出ているのがわかるはずである。

しかし、今回のHELIOSは隙があったのは間違いないので、勝負事にたらればは意味がないが、ライバルチームがもう少し競技部門の成績を上げていたり、モデル評価が高かったりしたら、わからなかったかも知れない。

特に、猪名寺駅前徒歩1分(画像35の赤丸B)もしくはAT車限定 ~あとす~(赤丸C)が競技部門の結果はそのままにモデル部門でA評価を受けていたとしたら(両チーム共に実際にはB+)、HELIOSを打ち負かしていた可能性がある。みらいまーず(赤丸D)もモデルでHELIOSよりも上なだけに、競技部門でも結果を出せていたら(実際には同順27位)優勝があり得たというわけだ。

しかし現実はそうはならず、両部門そろって成績が最も優れていたHELIOSが、総合優勝に輝いたのである。

画像35。総合プロット。縦軸が競技部門の順位、横軸がモデル部門の順位。各チームの位置は、正確には競技部門とモデル部門のそれぞれの得点(最下位0点~1位1点)でプロットされている

なお全チームの総合順位のほか、競技部門、モデル評価などはすべての順位や評価はETロボコン公式サイトのチャンピオンシップ大会で見ることが可能だ。

また競技の後には、今後のETロボコンに関する話も少し触れられた。実質、「まだ何も詳細は決まっていない」ということなのだが、そろそろ今のスタイルの競技内容が限界に来ている感があり、15年後の世の中にとってETロボコンの存在が役に立つようにするため、来年はルールや競技内容などを大幅に改善するかも知れないという。

そのほか、現在、モデルはA3用紙5枚(そのほかプレゼンシート1枚もある)を使って記述されているが、ここ数年続いていることなのだが、その点に関しても改めて改善すべき点としていた。なお参考として、2011年のエクセレントを受賞したHELIOSのモデル図5枚とプレゼンシート1枚を掲載しておく(画像36~41)

画像36。HELIOSのプレゼンシート

画像37。ETロボコン2011でエクセレントを受賞したHELIOSのモデル図1枚目の「要件分析」

画像38。同2枚目の「全体分析」。ソフトウェアの全体構造をまとめたもの

画像39。同3枚目の「処理の流れ」。アドヴィックスはクルマのブレーキシステムを扱っており、「失敗は許されない」ことから、フェールセーフを何よりも重視している

画像40。同4枚目の「走行戦略」。難所を攻略するための走行戦略をまとめたもの

画像41。同5枚目の「要素技術」。なお、HELIOSのモデル図は詰め込まれているが、読みやすさが確保されていることも特徴

モデル図を見てもらえばわかると思うが、記述する要素が非常に多く、また複雑になってきたため、5枚でも用紙が不足しがちな状況になっている(HELIOSはそこをきっちりまとめているから昨年まで3年連続エクセレントで、今年もゴールドを取っている)。

そのため、チームによっては無理やり文字のポイント数を極限まで小さくするなどして対応しているが、画面上では拡大できるからなんとかなるが、印刷するとつぶれてしまって読めないという事態も起きており、なかなか難しい状況だ。

用紙の枚数を増やすのはすぐに思いつく解決策ではあるが、それはそれで大きな問題点もある。ETロボコンはさまざまな企業が協力して、ボランティアで運営が行われているわけだが、モデル審査は審査員にとって今でも大変な負担となっており、これ以上枚数を増やすことは不可能だという。現在は、審査員が泊まり込み合宿を行って集中して審査を行っている状態で、これ以上は難しいとしている。

どちらにしろ、2013年2月には例年通りに記者会見を行うとしているので、しばらく先だが、その時を待ちたい。

ともあれ、HELIOSの2連覇達成、おめでとう。この後、別の記事立てで、優勝チームに送られる特典の1つ「マイナビニュースにインタビューが掲載される」として、メンバーへのインタビュー記事を掲載する。昨年はETロボコンに参加して5、6年目というベテラン選手が複数名いたが、今年は入社1、2年目のメンバーのみでHELIOSの2012チームは構成された。そのフレッシュなメンバーへのインタビュー記事を楽しみにしていただきたい。