尻尾の話が出たので、「尻尾(下ろし)走行」についても触れておきたい。尻尾走行(画像21)はもはや当たり前で、今年のCS大会でその割合がどうだったかというと、40チーム中36チームが採用していた。もはや従来の倒立2輪振子走行(画像22)はわずか1割の少数派となっている。

ただし、尻尾走行とはいっても走行体のボディの寝かせ(のけぞらせ)方は、チームごとに異なり、垂直に近いチームもあれば、もう少し寝かせているチームもある(画像23・24)。ここら辺もチームの戦略によってさまざまなところがあって興味深い。

画像21。尻尾を下ろして引きずるようにして走る尻尾走行。走行抵抗は大きいが、その分安定感があって速度を出せる。写真は「クラッチwin」(エフ・シー・シー/東海:静岡)

画像22。従来からの倒立2輪振子走行。どうしても速度的には尻尾走行に劣ってしまう。写真は、「Advanced ICT」(公立はこだて未来大学/北海道)

画像23。尻尾走行の中でも比較的寝かせているタイプ。「チーム六文銭」(日置電機/東京:長野)

画像24。ほとんど垂直なタイプ。「ARASHI50」(日本無線 情報ソリューション技術部/東京)

しかし、前出の鷲崎准教授によれば、実は大きな弱点もあるという。いわれてみれば当たり前の話なのだが、垂直な倒立2輪振子走行では赤外光は真下に照射され、コース面に垂直に当たるのでそのまま反射した光が返ってくる(厳密には倒立2輪振子走行では、慣性力に対抗するために走行体を若干前のめりにさせていることが多く、その分だけセンサの向きを若干調整して真下に向くようにしてある)。

それに対し、尻尾走行だと走行体が斜めになるので、センサの角度を調整してもどうしても照射される光がコース面に対して斜めになるので、センサに返ってくる反射光が減ってしまうわけだ(さすがにLUGをくぐる時ほど寝かせて走らせているチームはない)。

寝かせるほど安定感が増して速度を上げやすくなるが反射光は少なくなるという、トレードオフの関係なので、ここら辺はバランスの問題ということのようだ。

また、今回のような白熱電球の影響があるような、コースの場所ごとに条件が異なる外乱要素の強い環境では、反射光が少ないとそれだけセンサで得られる情報が不確かになってしまう可能性が高い。

メリットの大きさばかりがフォーカスされて、流行というよりはあっという間に当たり前となってしまった尻尾走行だが、実は大きなデメリットも抱えた走法だったようだ(今回、全チームが倒立2輪振子走行に切り替えていたら、完走率はもっと上がっていたかも知れない)。

それから、Bluetoothを利用した遠隔スタートが昨年から利用できるようになったが、今年は2回のラウンドの内、片方でうまく働かないチームもあったものの、機能としては全チームが装備していた。

中には、Bluetooth経由でPCとデータのやり取りをして処理の分散を行っているチームもあった。走行体だけではメモリの容量が限られているため、PCを利用しようというわけである。この手法は、選手が直接操作していないのであれば「自律」ということでルール上問題ない。ただし、万が一Bluetoothがうまく働かなくて通信が途絶した時に制御不能になる可能性があり、その対策を施しておく必要はある。これまた、トレードオフということだろう。