かずさDNA研究所は5月31日、トマトのゲノム解読を目的とする14カ国300名以上の科学者からなる国際コンソーシアム「トマトゲノムコンソーシアム」の一員として、栽培トマトとその祖先種であるSolanum pimpinellifolium(ソラナム ピンピネリフォリウム)の全ゲノムの解読に成功したことを発表した。同成果の詳細は「Nature」に掲載された。

トマトは、ジャガイモ、ナス、ピーマンなど重要な作物を含むナス科植物の代表として古くから遺伝学の研究が行なわれてきた。これらナス科植物は、生産量や出荷額において世界で最も重要性が高い野菜と言われており、トマトゲノムコンソーシアムにも多くの国や研究機関が参加した。

トマトは世界の主要作物の1つで、顕花植物類ナス科のモデル植物でもあり、果実の生物学研究や病害抵抗性の研究に広く用いられている。今回の研究により栽培種のトマトの高精度ゲノム塩基配列が解読され、同時に、それに最も近い野生種で「カラントトマト」と呼ばれるSolanum pimpinellifoliumの概要配列の解読も行われた。

比較ゲノミクスによって、この2種のトマトの差異は0.6%であることが判明したが、2011年に配列が解読されたジャガイモ(Solanum tuberosum)とは8%を超える差異があることが明らかになった。これによりトマトとS. pimpinellifoliumのゲノム配列には、遺伝的多様性を狭めることになったボトルネック(アメリカ大陸での栽培種化、16世紀に数種類の遺伝子型だけが欧州に持ち込まれたこと、数百年にわたる集中的育種)の記録が残されていることが明らかとなった。

今回の成果によって、トマトがもつ約35,000個の遺伝子のゲノム上の位置や構造が明らかになり、機能に関する多くの手がかりが得られたという。今後は、これらの情報を活用することで、耐病性、害虫耐性、乾燥耐性に優れた高収量トマトや、カロテン、リコペン、ポリフェノールなどの機能性物質に富む高機能性トマトの育成など、新たなトマト品種さらにはナス科作物全般の育種が大きく加速することが期待されるという。