ブラックホールという天体は、実はこれまで直接観測されたことはない。さまざまな観測結果から、「ほぼ間違いなく存在するだろう」と推測されている段階である。そして今回紹介する"X線ゴースト"の画像も、はるか彼方にあるはずのブラックホールをたしかに感じさせる1枚だ。

チャンドラX線観測衛星が捉えた100億光年先の「北ディープフィールド(Chandra Deep Field North)」で青く光る「HDF 130」。ビッグバンから30億年後の姿と推定されている

HDF 130は、巨大質量をもつブラックホールが銀河内で大爆発を起こし、このような形になったと考えられている。大爆発後、光速に近いスピードでブラックホールから粒子が飛び出し、そして膨大な量の放射線、宇宙ジェットが放出された。このころ、宇宙空間にはビッグバン時に生成された光子(フォトン)がまだ海のように拡がっていたという。そして光子と放射線が互いに作用しあい、途方もないエネルギーをもつX線地帯を形成した。この画像に写るのはそれらの活動がすべて終わった、長さにして約220万光年の"ゴースト"の姿である。

ちなみに真ん中に赤く光る点は、チャンドラが捉えた画像ではなく、イギリスの電波望遠鏡アレイ「MERLIN(Multi-Element Radio Linked Interferometer Network)」による、まったく別の銀河の光だ。MERLINはイギリス国内にある7つの望遠鏡を光ファイバで接続し、それらのデータを合成して、より高い精度の画像を得ることができる。すでに息絶えたHDF 130の上に、小さいながらもあざやかに輝く銀河の光 - NASAが作り出した絶妙な生と死のコントラストである。