東芝 - 脱化石燃料のCNT

東芝ブースでは、CNTを従来のベンゼンやトルエンといった化石燃料由来のものから製造するのではなく、木材を用いてCNTを製造する技術の紹介が行われている。

木材は原油に比べてkg当たりの単価が安く、価格の動きも安定しているという。そのため、比較的安価に長期間提供することが可能になるとの思惑があるとのこと。

元々は、材木など木々を産業廃棄物として処理する過程で、生じていた煤を調べたら、それがファイバー状だったため、CNTなどに使えないか、と試したところできたというもの。

実際に使用するのは、現在は「杉のチップ」とのことだが、これは「対象となる材料が多すぎて、まだすべてを調べたわけではない」とのことなので、今後の研究によっては、違う材料が最終候補に選ばれる可能性もある。

具体的なナノカーボン化の方法は、対象となるチップ化木質バイオマスを「熱分解炉」により炭化水素化、それを「カーボン生成炉」に入れガス改質工程を経て、ナノカーボンを製造するというもの。このガス化の工程が難しいとのことだが、技術は確立しつつあるとしている。問題は、還元を行う工程で用いられる装置の価格が高いということだそうで、これは工程の簡略化などで抑制できれば、としている。ちなみに杉のチップを使用した場合、元の重量の1/10程度がMWCNTとして生成されるという。

木材からCNTを生成して、それをプラスチックに混合して使用する一連の工程

現在は、試験的な運用ということで、プラスチックに混合することで強度の向上などを行っているが、今後はプラスチック分解技術の活用による再利用の促進や、ほかの材料やエレクトロニクス分野にも適用できれば、としている。

実際にプラスチックに混合して活用した例(自社製品や工場などでの使用するものに展開しているという)

また、同社ブースではCNT以外の展示も多数行っている。NAND型フラッシュメモリについても展示を行っている。パネル展示だが、ISSCC 2009でも発表された32nmプロセス採用の3ビット/セル、32Gビット品と、32nmプロセスを用いた8ビット/セルの説明が行われている。

8ビット/セルのイメージ図

8ビット/セルは、ISSCC 2008で56nmプロセスを用いて成功したことが同社より発表されているが、今回はさらに微細化を進め32nmプロセスへと進化させた。今後は「16ビット/セルは行けると見ている」とするが、32ビット/セルについては何かしらのブレークスルーが登場しなければ難しいのではないか、との見解を示しており、今後はそうしたイノベーションを見つける研究も進めていくという。