一酸化炭素中毒とは?
そもそも一酸化炭素は化学式「CO」で表される物質で、二酸化炭素よりも酸素分子がひとつ少ない構造をしており、この物質は血液中のヘモグロビンと結びつきやすい性質を持っていて、人体に有害とされています。
具体的には、血液中で酸素を運ぶ役割を担っているヘモグロビンと酸素が結合するより、一酸化炭素とヘモグロビンが結合する方が約250倍結合しやすいと言われています。
一酸化炭素がヘモグロビンと結合してしまうと酸素が運べなくなり、人の身体に強い機能障害を引き起こし、症状は濃度が高いほど短時間でも重症化し、吸入時間が長くなるほど身体に悪影響を与えます。
一酸化炭素ガスを吸い込むと、軽い頭痛や頭が重たく感じ始めるといった症状が出ます。風邪の症状に似ているため、吸い込んだことに気づかない人も少なくありません。また、眠気や吐き気、めまい、集中力の低下が起こる場合もあります。ただし、軽症であれば、酸素を含んだ新鮮な空気を吸うことで回復します。
しかし、より重度の症状では、錯乱や意識の消失、けいれん、胸痛、息切れ、昏睡などが起き、自力では動けなくなり、病院に搬送して適切な処置を受けなければなりません。
また、重度の一酸化炭素中毒では、いったんは回復したようにみえても、数週間後に記憶障害や運動障害、抑うつ、遅発性の精神神経症状が現れる場合があります。最悪の場合、死に至ることもあります。
濃度と吸入時間による症状の目安については以下を参考にしてください。
参照:一般社団法人日本ガス石油機器工業会「空気中の一酸化炭素(CO)濃度と中毒症状(作業環境測定便覧より)」
私たちの日常でも、換気が十分に行われていなければ、自動車、ガス暖房器具、灯油ストーブやガスストーブ、ファンヒーターや暖炉などが原因で一酸化炭素中毒の事故が起きることがあります。
これは一酸化炭素が、毒性が強い反面で色やにおいがないため、知らないうちに重篤な中毒症状を引き起こしてしまうからです。
給湯器による一酸化炭素中毒事故はどのようにして起こる?
給湯器による一酸化炭素中毒事故は以下のような場合に起こる可能性があります。
- 屋内設置型かつ不完全燃焼防止装置のないガス機器を使用している場合
- 屋外設置型かつガス機器が塀や隣家と接近している場合している場合
ガス給湯器が一酸化炭素を発生させるのは、ガスの不完全燃焼が原因であり、ガスの不完全燃焼は酸素の不足によって引き起こされます。
ガスを燃やすためには発火源となる熱と、燃焼を助ける酸素が必要不可欠ですので、酸素が十分に供給されていれば、ガスは完全に燃えて人体に害のない二酸化炭素と水蒸気しか発生しません。
しかし、十分な酸素が供給されていないと燃焼が不完全になって本来発生するはずの二酸化炭素ではなく、一酸化炭素が発生します。実際に事故が発生するケースをご紹介します。
屋内設置型かつ不完全燃焼防止装置のないガス機器を使用している場合
ガス給湯器には、大きく分けて以下の2種類があります。
- 家の中に設置する「屋内設置型」
- 家の外に設置する「屋外設置型」
使用しているのが屋内設置型で、しかも不完全燃焼防止装置がついていない製品を使用している場合は注意が必要です。
不完全燃焼防止装置とは、十分な換気が行われていない環境下で製品を使用した際に室内の酸素濃度が低下すると、自動的に消火して機器を安全に停止する装置で、平成元年に、給湯器へ不完全燃焼防止装置を搭載することを義務化しています。
しかし、平成元年以前に製造された古い給湯器には、この安全装置がついていない可能性がありますので、もし、ご家庭の給湯器が屋内設置型で不完全燃焼防止装置が搭載されていないものであれば、使用するときに必ず換気を行ってください。
また、不完全燃焼防止装置のついていない給湯器を使用していて、以下の異変を感じた場合は要注意です。
- 使用中に火が消える
- 前面の塗装部が変色している
- 炎があふれる
- すすが付着している
- 不快な臭いがする
- 異常な過熱がある
これらの現象が確認された場合、給湯器が不完全燃焼を起こしている可能性がありますので、異変に気づいたら、すぐに使用を中止してガス会社や修理業者に連絡するようにしてください。
屋外設置型かつガス機器が塀や隣家と接近している場合している場合
屋外にある給湯器でも、すぐ近くに塀や屋根があったり、隣の家との距離が近かったりすると、給湯器の吸排気口に酸素を含んだ新鮮な空気が届きにくくなり一酸化炭素中毒が起こる可能性があります。
また、屋外に設置された給湯器には、吸排気口や排気筒に埃やゴミがつまりやすい傾向があり、例えば台風など風の強い日には、ビニールやダンボールが飛んできて吸排気口を覆ったり排気筒につまったりすることも考えられます。
そうなると不完全燃焼を起こす危険性があるので、吸排気口や排気筒にゴミなどがつまっている場合は、必ず掃除して取り除きましょう。
給湯器が屋外にあると、なかなかメンテナンスが行き届かないものですが、メンテナンス不足の状況が続くと部品の劣化が早まったり、重大な事故につながったりする恐れもあります。
自身や家族を守るためにも定期的な点検を心がけてください。
給湯器による一酸化炭素中毒事故の事例
一酸化炭素中毒が起きた事例としては以下のようなものがあります。
- 事例1.埃とすすのつまり、換気不良による一酸化炭素中毒
- 事例2.一酸化炭素が浴室内に流入した一酸化炭素中毒
ガス給湯器を使用していた家庭で、実際に死亡事故が発生した事例があります。ここでは具体的な事例を確認しながら、どのような対策が求められるかを検証していきます。
事例1.埃とすすのつまり、換気不良による一酸化炭素中毒
ガス給湯器を室内で使用していて一酸化炭素中毒により1名が死亡、1名が軽症を負う事故がありました。部屋のガス給湯器は約34年前に設置されたもので、長年の使用によってガス給湯器に埃とすすがつまっていたために起きた不完全燃焼が原因でした。
ガス給湯器を使用中に換気扇を使用していなかったため、室内に高い濃度の一酸化炭素が発生し、死亡事故に至ったものとみられています。
屋内の給湯器を使用する際は、換気扇を回したり窓を開けたりするなど、換気が必要です。
また、長期間使用していると埃やすすがたまり、ガスを不完全燃焼させる危険性がありますので古い給湯器は業者に点検してもらったりするなど、メンテナンスを欠かさないようにしましょう。
事例2.一酸化炭素が浴室内に流入した一酸化炭素中毒
集合住宅の浴室内で1名の死亡が確認され、一酸化炭素中毒が死因と診断されました。
ガス給湯器は、浴室内でなく屋外に設置されていましたが、何らかの要因で不完全燃焼が生じ、発生した一酸化炭素が浴室内に流入したものと推定されました。
この事故では、一酸化炭素が浴室の窓から入ってしまった可能性があるため、風呂を沸かしたりシャワーを使ったりしているときは、給湯器の排気が浴室内に入るのを防ぐため窓を閉めておきましょう。
給湯器による一酸化炭素中毒事故はどうやったら予防できる?
一酸化炭素中毒を予防するためには以下のような対策が有効です。
- 予防1.十分な酸素の確保
- 予防2.定期的な点検とメンテナンス
- 予防3.予防機能付きの給湯器に変える
不完全燃焼防止装置が搭載されていない古いタイプの給湯器を使っているのであれば、次の3つのポイントに気をつけてください。
予防1.充分な酸素の確保
ガスの不完全燃焼は酸素不足によって起こるため、換気をして新鮮な空気(酸素)がある状態で給湯器を使用することが大切です。
特に屋内設置型ガス機器を使用する際は、必ず換気扇やレンジフードを回す、窓を開けるなどしてこまめに換気を行ってください。
効率的に換気を行うコツは、室内の空気の流れをスムーズにすることです。
窓を開ける場合もドアを同時に開けるなどして、空気の出口をつくれば、効率的に換気できます。
また、屋外に設置してある給湯器でも、周囲に吸排気を妨げるものがないことを確認して、給湯器に新鮮な空気が届くように配慮してください。
予防2.定期的な点検とメンテナンス
毎日の暮らしで使用する給湯器の寿命は、約10年とされていますが、それより前の時期であったとしても経年劣化による故障や不具合が発生するケースがあります。
燃焼系部品の故障によって不完全燃焼が起きることもあるので、設置から5年経過したあたりから定期的に点検を行うようにしてください。
また、埃やちりなどがたまらないよう掃除したりすることも大切ですが、普段使用していると気が付かないということも少なくないため、定期的に点検を行いましょう。
予防3.予防機能付きの給湯器に変える
事故を防止するためには、不完全燃焼防止装置がない古いタイプの給湯器を安全装置のついた新しい給湯器に交換する方法がもっとも確実です。
安全装置がついたガス給湯器で不完全燃焼が起きた場合、温度を測定する2ヶ所のセンサーが不完全燃焼を判定し、異常が検知されるとガスの供給を自動的にストップして給湯器の運転を緊急停止させるため、事故が起きることはほとんどありません。
現在、販売されている給湯器にはすべて不完全燃焼防止装置がついているので、事故を心配することなく使用できます。
ガス漏れ警報器を設置する場合も、一酸化炭素ガスの検知機能が付いた警報器を選ぶと、火災の早期発見だけではなく一酸化炭素による中毒事故も防止できるのでおすすめです。
新しい給湯器や、一酸化炭素ガスの検知機能がついたガス漏れ警報器をお求めの場合は、ガス会社や販売店、専門の業者に連絡してください。
まとめ
気づかないうちに重篤な中毒症状を引き起こす一酸化炭素はとても危険性の高い物質です。特にガス給湯器を使って事故が起きる代表的なケースは以下の2つです。
- 屋内設置型かつ不完全燃焼防止装置のないガス機器を使用している場合
- 屋外設置型かつガス機器が塀や隣家と接近している場合
当てはまるようではあれば、本文を読み直して事故を未然に防げるように対処してください。
また、不完全燃焼防止装置がついている給湯器でも、異変が起きていると感じたら早めに専門業者に相談しましょう。
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