「女性が活躍しやすい職場」と聞くと、どのような会社を思い浮かべるでしょうか。女性の管理職比率が高い会社や多様性が認められている会社、出産・育児等のライフイベントを迎えた際も働き続けられる会社など、きっとイメージはさまざまでしょう。
そこで今回は、令和5年度東京都女性活躍推進大賞を受賞した企業のみなさんにインタビューを実施!「女性の活躍」をテーマに、独自の制度や取組について教えてもらいました。

東京都では、女性の活躍を推進するため、
優れた取組を行っている企業や団体等を「東京都女性活躍推進大賞」として
表彰しています。

「32の制度」で楽しく働く 女性のウェルネスも支援する職場作り
株式会社サニーサイドアップグループ

どんな会社?

PRを軸としたさまざまなコミュニケーション手法を用いて世の中の課題解決に取り組む株式会社サニーサイドアップグループ。日本の上場企業の中では数少ない女性の代表取締役社長で、グループで働くメンバーの60%以上が女性です。「たのしいさわぎをおこしたい」をスローガンに掲げ、誰もが楽しく働ける職場をめざし、ユニークな制度を運用しています。
(※サニーサイドアップグループでは、社員を「メンバー」と呼んでいます)

教えてくれるのはこの方!

佐川恵美里さん

佐川恵美里さん
2016年に入社。食品系メーカーや商業施設のPRディレクター、プロモーターを務める。若手メンバーが所属するソーシャルリレーション局のリーダーも務めている。
大好きなスポーツで人の気持ちを盛り上げたいと思い、さまざまな業界でPRを手がけるサニーサイドアップグループに入社。

進化を続ける「32の制度」 きっかけは社長の葛藤と反省

――「失恋休暇」などを含むユニークな福利厚生制度「32の制度」があると伺いました。制度が生まれたきっかけを教えてください。

佐川恵美里さん佐川さん

「32の制度」は、「たのしいさわぎをおこしたい」のスローガンをもとに、会社のメンバーが多様で充実した働き方・生き方ができるよう、2011年に制定した福利厚生制度です。きっかけは当社の代表取締役社長・次原悦子の反省から生まれたと聞いています。次原は、1985年に高校生で創業して以来、二度の出産を経験しながらも、仕事に支障はきたしたくないと夢中で会社を運営していました。当時彼女は自分が頑張っている様子をメンバーに見せれば、ほかのメンバーのお手本にもなり、モチベーションにもつながると思っていたようです。しかし、結果として、「社長と同じ働き方はできない」「社長のようにはなりたくない」と思う女性が増えてしまいました。そこで“すべての女性にとって働きやすい会社や社会にしていきたい”という想いから作られたのが「32の制度」です。

――具体的には、どのような制度がありますか?

佐川恵美里さん佐川さん

「恋愛勝負休暇制度」、「失恋休暇制度」、「たのしいさわぎ創造支援制度」などです。恋愛勝負休暇や失恋休暇の使い方はさまざまで、告白やデート、推し活、推しの結婚報道に付随する失恋など、幅広い理由で取得できます。
「たのしいさわぎ創造支援制度」は、ライブ、映画、演劇、イベント、スポーツなどジャンルを問わず、世の中で起きている楽しい体験に使う費用を、会社が一部負担してくれます。

株式会社サニーサイドアップグループ

――とてもユニークな制度ですね!女性の健康に関する制度も含まれているそうですが、どのようなものがありますか?

佐川恵美里さん佐川さん

代表的なものが「Dear WOMAN」という制度です。卵子凍結の費用補助や、卵巣の中に卵子がどれくらい残っているかを調べるための血液検査(AMH検査)の費用補助などがあります。こうした制度をきっかけにメンバー自身も知識を得て、自分の生活に反映させられるということにも取り組む意義を感じています。

――仕事面だけでなく、社員のライフも積極的にサポートしているのですね。

佐川恵美里さん佐川さん

当社では、男女問わず心身共に健康にいられることが結果的に仕事やパフォーマンス、モチベーションの維持・向上につながると考えています。プライベートを充実させ、楽しいと感じる気持ちや、もっと知りたいと思う探究心を日頃から磨いていけば、必ず仕事に活かせるという思いから積極的にメンバーのウェルネス(Wellness)をサポートしています。

――「32の制度」導入後、会社の風土などに変化はありましたか?

佐川恵美里さん佐川さん

制度をきっかけに、自分と違う人を受け入れ、異なる意見を尊重できる人が増えたと感じています。
また、メンバーの声が集まりやすくなったのも、成果のひとつです。「32の制度」はメンバーの声を吸い上げ、時代やニーズに合わせて内容をアップデートしてきました。
たとえば、「Dear WOMAN」制度は、当初は卵子凍結の制度補助のみでしたが、もっと多くの人に自分の身体の状態を知ってもらうために、AMH検査の費用補助や男性メンバー向けの精液検査補助が追加されました。運用範囲も広げ、男性メンバーのパートナーや家族に対しても使えるようになっています。
自分たちが声を上げればどんどんいい方向に進んでいくのだと、メンバーも実感できています。

株式会社サニーサイドアップグループ

すべての女性が納得して充実したライフスタイルを築ける社会に

――貴社では、社会全体の女性活躍推進に向けて「W society」を実施されています。どのようなプロジェクトなのでしょうか?

佐川恵美里さん佐川さん

“すべての女性が納得して充実したライフスタイルを築ける社会をめざしたい”という想いから生まれたプロジェクトです。「社会と変える、女性の未来」をスローガンに、社外向けの情報発信やオンラインセミナーなどを行っています。ライフステージの段階ごとに生じる心身の変化や、そのときに起こりえるキャリアの変化を伝え、ライフプランの選択肢を広げるための機会を提供しています。

――ライフステージや心身の変化、不安に対してケアするプロジェクトなのですね。

佐川恵美里さん佐川さん

ひとりの女性が自分のキャリアを築いていくとき、ライフステージが移るタイミングや心身の悩みは人それぞれです。「W society」では自身の身体の状態やこれから起こりえる不調を知ったうえで、人生設計を考えていきます。
こうした情報は社外向けにオンラインセミナー「W school」でも発信しており、ご好評をいただいております。

株式会社サニーサイドアップグループ

「健康も仕事もどっちも大事にしていきたい」
佐川さんが考える“素敵な先輩”

――入社してよかったと思ったことや活躍できていると感じたことを教えてください。

佐川恵美里さん佐川さん

「女性だからできない」「男性だからできない」という見方をしない会社でよかったと思っています。ジェンダーに関係なく働けていますし、ステップアップを支えてもらえる社風です。
私自身は健康面を後回しにしがちだったので、制度を通して理解を深められたのもよかったです。ウェルネスに関する内容を会社から発信してもらえるのは、とても良いことだと思います。

株式会社サニーサイドアップグループ

――佐川さんの今後のプランや目標を教えてください。

佐川恵美里さん佐川さん

ただがむしゃらに働くのではなく、自分の働き方をうまく調整しつつ、健康面も仕事面もより充実させていきたいです。私もいつか後輩の目標になれるように働きたいですし、「素敵な先輩」をめざすメンバーがどんどん増えていく会社になったらいいなと思っています。

――これから社会に出る学生のみなさんにメッセージをお願いします。

佐川恵美里さん佐川さん

企業のホームページなどは、どうしてもいい面ばかりが見えてしまいがちです。社風は実際に働いている人から話を聞かなければわかりません。だからこそ直接会って、会社の弱点や最近改善されたことを聞いてみてほしいです。きっと社員の方も本音で話してくれますし、面接ではわからない部分にも気づくはずです。積極的にコミュニケーションをとって、会社を見極めてみてはいかがでしょうか。

佐川さんの1日

これからの「働き方」のキーワード

  • メンバーが楽しく働ける制度を整備
  • プライベートの充実で仕事も充実
  • メンバーのニーズや時代に合わせて制度をアップデート
  • 心身の変化とライフステージを踏まえてキャリアを設計
佐川さん

We’re all the same, because we’re all different. たのしいさわぎは人それぞれ。
メンバー一人ひとりの個性や働き方、そして生き方を尊重しあうサニーサイドアップグループの
DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に込めたメッセージです。

「はたらく」を笑顔に!制限のある働き方を管理職が体験。
育児休業からの復帰をスムーズにする制度も

パーソルキャリア株式会社

どんな会社?

転職支援やアウトソーシング、求人メディアなどを運営する人材サービス会社。すべての「はたらく」が笑顔につながる社会の実現をめざし、さまざまな工夫で職場環境を整えています。

教えてくれるのはこの方!

平井裕苗さん

平井裕苗さん
2017年に中途入社。人事本部エンプロイーリレーションズ部とDI&E(ダイバーシティ、インクルージョン&イクオリティ)推進部を兼務。現在は子育てをしながら、フルリモート勤務をしている。人のキャリアに関わる仕事をしたいと転職を決意し、パーソルキャリア株式会社に入社。

子育ての実態に寄り添った制度作り

――「制限のあるはたらき方理解研修」(旧「管理職育児体験研修」)という制度を実施されていると伺いました。どのような研修ですか?

平井裕苗さん平井さん

管理職の社員に、“制限のあるはたらき方”を疑似体験してもらう制度です。たとえば「子供の体調不良によるお迎え連絡が来て、急に仕事を切り上げなければいけない」という状況への対応を疑似体験してもらいます。研修中いつ連絡が来るのか、事前に本人には伝えません。急に仕事を切り上げなければならなくなったとき、どのような気持ちになるのか、どういった対応が必要になるのかなどを理解してもらうことを目的として始めました。

パーソルキャリア株式会社

――いつ連絡が来るかわからない、というところがリアルですね。

平井裕苗さん平井さん

体験者からは、「わかっているようでわかっていないことがたくさんあった」などの感想が出ました。「突然帰るときは申し訳ない気持ちになる」「人に頼むことがこれほどまでにつらいとは」と気づき、マネジメントを変えようと感じた管理職もいます。

――子育て世代社員のひとりとして、平井さんは「制限のあるはたらき方理解研修」をどう思いましたか?

平井裕苗さん平井さん

研修の存在自体がありがたいですね。子育て世代は孤独といいますか、時間に追われていることも、自分の中に閉じこめがちで、あまり上司に打ち明けることはありませんでした。子育て世代の本音や実態をマネージャーや役員が知ろうとしてくれることが、嬉しかったです。

パーソルキャリア株式会社

――ほかにも育児休業中に独自の制度があると伺いました。

平井裕苗さん平井さん

育児休業期間中に就労を希望する社員を対象(一部条件あり)に、一時的な就労機会を提供する「育休ウェルカムバック制度」というものを取り入れています。育休中の不安を解消してスムーズな復職ができるよう、サポートするものです。育休中は社会や会社から離れて心理的な孤立感を覚えたり、復帰できるのか不安になったりします。こうした不安を解消するために約1年のトライアル実験を経て、2022年10月より本格的に開始しました。

――制度導入後の反響はいかがでしたか?

平井裕苗さん平井さん

社員からも好評で、2024年1月時点で累計78名が制度を利用しました。「家族以外と話せる」「会社の雰囲気に触れられる」ことを嬉しく感じてくれた人が多いです。「復帰できるだろうか」という不安が、「復帰が楽しみだ」という前向きな気持ちに変わった社員もたくさんいます。また、就労を受け入れる側からも助かっているとの声があがっています。

――平井さん自身が利用した制度はありますか?

平井裕苗さん平井さん

「次世代育成休暇」制度です。不妊治療や子育てなどを理由に、有給休暇とは別に休みを申請できます。子供がインフルエンザにかかって休まなければいけないときなど、不測の事態が起きても有給休暇を使い切ってしまう心配がありません。

社会全体の仕組みを変える第一歩は、自社から踏み出す

――女性の健康問題にもフォーカスした取組を展開していると伺いました。

平井裕苗さん平井さん

女性の体調不良に起因する経済損失はとても大きいと言われています。当社が独自に実施した調査でも、5割以上が「女性特有の症状で仕事に支障がある」と回答しました。その方々の生産性が上がれば会社にとってもメリットがあります。また、多様な働き方や人材を受け入れるためには、体調に関する制限を理解して会社全体で支えることが大切です。まずは自社から状況を改善しようと考え、ヘルスリテラシー向上をめざした取組を始めました。

――具体的にどのような取組を実施しているのでしょうか?

平井裕苗さん平井さん

女性の働き方やヘルスリテラシーに関する調査と情報発信を行っています。生理や生理痛、PMS(月経前症候群(※))に関するセミナーも試験的に実施しました。管理職向け、女性向けなど徐々に対象者を広げており、来年度からはさらに対象を広げて実施します。今後は更年期についての知識を深める取組も実施したいと考えています。
※生理3~10日位前に始まる、さまざまな精神的・身体的な不調のこと

パーソルキャリア株式会社

女性のヘルスリテラシー向上の取組 セミナー後に開催した管理職による座談会の様子

「日本の働き方を変える」平井さんが持つ熱い想い

――入社してよかったと思ったことや、活躍できていると感じたことを教えてください。

平井裕苗さん平井さん

働くことに課題感や問題意識を感じている仲間と一緒に、どうすればよりよい働き方の実現ができるか考えて取り組めることに一体感や、やりがいを感じます。
私は結婚後に入社したため、その後のライフイベントが盛りだくさんで。助けとなる制度が充実していて安心しました。こうしたライフイベントは自分ではコントロールできない部分もあるので、受け入れてもらえる環境があり心強かったです。

パーソルキャリア株式会社

――今後のプランや目標を教えてください。

平井裕苗さん平井さん

今の日本の働き方にはさまざまな不都合や窮屈な部分がありますが、当社ならそこを変えていけると思います。そのためにも柔軟で多様な働き方を体現し、世の中に発信していきたいです。私もお客様から勉強させていただいた経験を社内広報にも活かして、情報発信をしていけたらと思います。みんなが「はたらいて、笑おう」を実現できる環境を作っていきたいです。

――これから社会に出る学生のみなさんにメッセージをお願いします。

平井裕苗さん平井さん

あまりに先のことまでイメージを固めすぎずに、「自分はどうしたいのか、どうありたいのか」を考え、志望業界や企業を選んでみてはいかがでしょうか。働きながら自分の中のニーズも変わりますし、最初に入った会社がすべてではありません。人生は長く続いていくので、自分の可能性を信じて、自分の意志でキャリアを選択してほしいです。

平井さんの1日

これからの「働き方」のキーワード

  • 時間に制限のある働き方を知り、実際に体験
  • 育休中に会社との接点を作り、復職をサポート
  • 柔軟に働き方をカスタマイズ
  • ヘルスリテラシーの向上
平井さん

「32の制度」や「制限のあるはたらき方理解研修」など独自の制度で、自分らしい生き方や働き方を推進する株式会社サニーサイドアップグループとパーソルキャリア株式会社。インタビュー中も笑顔が絶えず、働くことへのやりがいや楽しさがにじみ出ていました。

東京都女性活躍推進大賞受賞企業のインタビューはほかにも。ぜひチェックして、これからの働き方を考えるヒントにしてみてはいかがでしょうか。

ほかの受賞企業のインタビューはこちら!

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