厚生労働省は2025年2月4日、企業および団体による安全な職場づくりの取組を表彰する「SAFEアワード授賞式」を都内で開催しました。第3回となる今年度は全国のSAFEコンソーシアム加盟企業・団体から134件の応募があり、「サービス産業」および「製造業、建設業、運輸業等」における優秀な取組事例が表彰されています。
働く人の安全が第一
近年、増加が続いている労働災害から従業員を守るため、「安全アクション」を推進する活動体として立ち上げられた「SAFE(=Safer Action For Employees)コンソーシアム」。労働災害を社会問題としてとらえ、消費者や顧客も含めた労働者を巡るステークホルダー全員で解決策を考えていくことを目指しています。SAFEコンソーシアムには、1,944の企業および団体が加盟中(2025年1月22日時点)。
令和6年度のSAFEアワードは、「サービス産業」および「製造業、建設業、運輸業等」の2分野で、それぞれ「安全な職場づくり部門」(労働災害防止の取組全般に関するもの)、「エイジフレンドリー部門」(特に高年齢労働者の労働災害防止の取組に関するもの)、「企業等間連携部門」(複数の企業、団体等の連携による労働災害防止の取組に関するもの)の3部門で取組事例を募集しました。
授賞式の冒頭、登壇した厚生労働省の井内努氏は「受賞者の皆様に心よりお祝い申し上げます。産業構造や働き方が変化するなかで、働く人の安全第一という価値観は、今後、ますます重要になっていきます。すべての人が安心して働くことができる社会を目指し、業種を越えた企業が連携して意識啓発や行動の変容を図っていく、その共同体として設立したのがSAFEコンソーシアムです。令和6年度のSAFEアワードに選出された取組内容については、コンソーシアムのメンバーに限らず、産業界、消費者、サービス利用者にも広く届くように周知していきます。」と挨拶しました。
サービス産業「安全な職場づくり部門」
サービス産業の「安全な職場づくり部門」でゴールド賞に輝いたのは、株式会社ベルクの「レジ椅子」の導入による身体的負荷・精神的負荷の軽減でした。レジで作業を行う従業員が着座のまま作業できる椅子を導入し、またレジ台の改修にも取り組んだ結果、多くの従業員の足や腰の負担軽減につながったことが評価されました。
SAFEコンソーシアムのサポーターである、お笑いコンビのタイムマシーン3号(山本浩司さん、関太さん)の2人から、表彰状およびトロフィーが授与されました。
なおシルバー賞は、株式会社グリーンテックの「安全人間育成活動 ~会社の安全を支える人財育成~」、ブロンズ賞は、社会福祉法人 三幸福祉会の「業務負担軽減と危険箇所の『見える化』で労災防止につなげる」でした。
サービス産業「エイジフレンドリー部門」
サービス産業の「エイジフレンドリー部門」でゴールド賞に輝いたのは、SOMPOひまわり生命保険株式会社の「社員の平均年齢上昇を見据えた安全衛生強化策の展開!」でした。特に、高年齢の労働者に発生しやすい転倒の防止、また腰痛の予防のため、オリジナル体操、社員向けの転倒防止セミナー、ロコモティブシンドロームの予防推奨などに取り組んだことが評価されました。
シルバー賞は、株式会社 旭フーズの「健康であればいつまでも(生涯現役を実現するために)」、ブロンズ賞は、社会福祉法人青谷学園 「職員が健康で長く働き続けられる職場作り ~意識付けで全職員腰痛ゼロ!健康ファミリー青谷学園~」でした。
サービス産業「企業等間連携部門」
サービス産業の「企業等間連携部門」でゴールド賞に輝いたのは、福岡市×株式会社ルネサンス×株式会社スポーツオアシスの「事務椅子をバランスボールにチェンジ!『バランスボールに座って転倒しないからだづくり』~3か月間でからだが変化~」でした。福岡市役所の職員の転倒災害の防止のため、スポーツオアシスがバランスボールを導入し、ルネサンスが転倒リスク測定、転倒防止エクササイズの指導などを行ったことが評価されました。
シルバー賞は、公益社団法人日本理学療法士協会×全国の医療機関・介護施設 理学療法士による「職場における腰痛予防」の取組、ブロンズ賞は、株式会社丸五×日進ゴム株式会社×岡山県+SAFE協議会(小売業)の丸五&日進ゴム(靴メーカー)による「岡山県内のスーパーマーケット転倒災害防止大作戦」でした。
製造業、建設業、運輸業等「安全な職場づくり部門」
製造業、建設業、運輸業等の「安全な職場づくり部門」でゴールド賞に輝いたのは、三菱ケミカルグループ株式会社の「三菱ケミカルグループ体操と安全安心体力テストで従業員の転倒災害ゼロへ!!」でした。現場で発生していた転倒災害の対策として、作業環境を改善したうえで、労働者の運動機能に着目した体力テスト、転倒しにくい身体づくりのための体操などを導入したことが評価されました。
シルバー賞は、パナソニックITS株式会社の「楽しく競い合いながら体力チェック!~体力向上の行動変容を促し、転倒・腰痛等の労働災害未然防止に繋げる~」、ブロンズ賞は、キヤノン株式会社の「500の知恵を結集!転倒災害防止事例集」でした。
製造業、建設業、運輸業等「エイジフレンドリー部門」
製造業、建設業、運輸業等の「エイジフレンドリー部門」でゴールド賞に輝いたのは、東芝インフラシステムズ株式会社 社会システム事業部の「『転ばぬ先の改善マップ』繋がる 広がる エイジフレンドリー」でした。高年齢者に多い転倒災害の防止のため、あらかじめ現場におけるリスクを検証し、通路の凹凸の解消、照明の明るさの確認、視認性の向上などのきめ細やかな対策を行ったことが評価されました。
東芝インフラシステムズの森氏は、取組の背景について以下のように説明しました。
「私たちは、地方自治体に電気設備を納入し、施工管理する仕事をしています。水を作る浄水場であったり、生活排水を処理する施設であったり、そういった現場には高齢の作業員、また高齢のお客様もいらっしゃいます。一般的に建設現場というものは、墜落、転落、転倒、挟まれ、巻き込まれといった事故が起こり得ます。そこで私たちは、リスクをなくすことで事故を未然に防ぐ「転ばぬ先の改善マップ」というテーマで取組を進めてきました」。
「そのひとつに、リスクの見える化があります。簡単なところで言えば、お客様の職場の床が剥げているのを見つけたら修繕する、通路に草やコケが生えていればつまずきや転倒防止のために清掃する、薄暗い場所なら照明周りを清掃する、場合によっては高輝度反射材なども使う―――。そうした改善を積み重ねる活動を通じて、現場が一体となって安全意識を維持できたと感じています。安全な職場は1人では実現できません。こうしたコンソーシアムにおいて情報を共有しながら、ほかの現場と連携して安全のための工夫を取り入れながら、安全意識を向上させながら今後も事故ゼロを目指して頑張っていきたいと思います」。
シルバー賞は、ダイキン工業株式会社 堺製作所の「無人搬送車やからくり改善による重筋作業レス誰でも働ける職場づくり」、ブロンズ賞は、花王株式会社 川崎工場の「みんなで参加しよう、体力測定会~運動不足の解消と運動の習慣化でエイジフレンドリーな職場づくりとゼロ災へ~」でした。
製造業、建設業、運輸業等「企業等間連携部門」
製造業、建設業、運輸業等の「企業等間連携部門」でゴールド賞に輝いたのは、ミズノ株式会社×サミット株式会社のミズノとサミットの共同企画シューズ「小売業向けワーク用スニーカー」でした。ミズノは小売業で働く人のため、サミットにて何度もヒアリングとモニターテストを行い、数々の試作品を経てワーク用のスニーカーを完成させたということです。
ミズノの横山氏が、取組の背景について以下のように説明しました。「ミズノと言えば総合スポーツ品メーカーの印象が強いと思いますが、実は2019年より、働く人を対象にしたワークビジネス事業を立ち上げています。建設業、物流業などの業界に対して、ミズノが培ってきたノウハウを活かした商品を展開しています。厚生労働省の資料によれば、第3次産業においては転倒事故が多いことが分かります。そこでこの業界で働く従業員の方の足元をチェックしてみると、多くの人がスニーカーやランニングシューズといった、作業用ではないシューズで仕事をしていることが分かりました。私たちはここに着目し、かねてから労災防止活動に積極的であるサミット様と共同でシューズの開発に乗り出しました」。
「取組の内容はシンプルです。現場に立つ皆さんにヒアリングし、プロトタイプを作り、モニターテストして、またヒアリングをし、この工程を3年間ほどかけて、ワーク用のスニーカーを形づくりました。バレーボール、バスケットボール、インドアスポーツ用のシューズ開発で培ってきた滑りに対する知見、またウォーキングシューズの開発で得たつまずき防止の知見、これらの技術を活かして、2024年7月に新商品をローンチすることができました。耐滑性が非常に高く、つまずきにも配慮しており、かつ作業中にも破れたりしないよう靴全体として耐久性が高いのが特徴です。サミット様では2024年6月から200名規模で導入いただき、これまで転倒労災はゼロ件という実績を得ています。今後も第3次産業における転倒事故を減少させ、従業員の皆様が安全に働ける環境づくりに貢献していきたいと思います」。
シルバー賞は、ANAホールディングス株式会社×有限会社マスターピースコンソートの「働く社会人のための姿勢改善プログラム足圧測定会の実施」、ブロンズ賞は、東芝インフラシステムズ株式会社 社会システム事業部×大塚製薬株式会社の「熱中症対策出前講座の開催」でした。
このあとのトークセッションでは、山本さん、関さんが受賞事例について「安心して働ける環境が大事」「素晴らしいアイデアが多かった」「ほかの企業も参考にできますね」とコメントしていました。
最後には参加者も交えながら労災対策の「腰痛予防体操」を試す場面も。増え続けている労働災害から従業員を守るため、安全アクションを推進する活動体として立ち上げられた「SAFE」。公式サイトでは今回受賞した数々のアイデアが公開されています。ぜひ一度見てみては?
[PR]提供:厚生労働省