海外で働きながら休暇を過ごす「ワーキングホリデー(通称・ワーホリ)」という制度について、皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
学生だけでなく、社会人が一旦仕事を辞めて、自分を見つめ直すためにワーキングホリデーに行くケースも多く、様々な経験を積める場として人気を集めています。
一方で、ワーキングホリデーに興味はあるものの、「帰国後の就職は大変なのでは?」「ワーホリの経験は就活に活かせるのか」といったキャリア形成への不安から、なかなかワーホリへの一歩を踏み出せない人も少なくないでしょう。
そこで今回は、皆さんが気になるワーキングホリデーについて、18歳から29歳の働くマイナビニュース会員にアンケートを実施。ワーホリ経験者と未経験者それぞれの本音を調査しました。
ワーキングホリデーに対する社会人の本音を調査!
あらためて説明すると、ワーキングホリデーとは18歳から30歳の方を対象にした、海外に滞在して働きながら休暇を過ごせる制度です。留学とワーキングホリデーは混同しがちですが、ワーキングホリデーはあくまでも生活費を稼ぎながら海外で過ごす「ホリデー」であり、勉強のための留学とは本来異なる制度となっています。
日本でワーキングホリデー制度が始まったのは1980年で、現在はオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、韓国、フランス、ドイツなど世界26カ国の協定国があります。
ワーキングホリデーという制度の知名度は高く、アンケートでは「すでにワーキングホリデーの経験がある」と回答した人が23.7%、経験がない中でも「興味がある」と回答した人は45%にのぼりました。全体で見ると、約6割がワーキングホリデーにポジティブな思いを持っていることがわかります。
では、「ワーキングホリデーに行ったことがある」と回答した人は、具体的にどの国を選んだのでしょうか。
その結果、圧倒的に多かったのはオーストラリアで、ワーキングホリデー経験者の約半数を占めていました。次いで韓国、ニュージーランド、カナダ、台湾が人気となっています。
ワーキングホリデー対象国は多数あるにも関わらず、なぜこれらの国々が人気なのでしょうか。
アンケートの結果、「ビザの取得のしやすさ」や「滞在できる期間の長さ」といった制度上の事情をあげる人が多い一方で、「治安の良さ」や「日本との時差のなさ」といった環境面、さらに「初期費用の安さ」などの事情や、「興味のある言語を勉強できる」などの意見も多く見られました。
また、こうしたワーキングホリデーについては、多くの人が「行ってよかった」という感想を抱いているようです。
その理由としては、「貴重な体験ができた」「海外で働くことによって考えが広がり文化の違いを勉強できた」「いろんな苦労や経験を通して人間的に成長できた」などの声があがっており、日本では得られない経験により人間として成長できる点がワーキングホリデーの魅力であることが伝わってきます。
一方で、ワーキングホリデー未経験者は、なぜワーキングホリデーに踏み出せないのでしょうか。アンケートをとったところ、次のような回答が寄せられました。
- ワーキングホリデーが就職にどれだけ強みになるかわからないから
- 学んだことを帰国してから活かせるのか、関連した職業に就けるのか不安
- 国際情勢の変化やコロナ禍のため
- 帰国後に再就職できる自信がないから
時節柄、コロナ禍への不安の声もありましたが、圧倒的多数を占めていたのは「帰国後のキャリア形成への不安」でした。ワーキングホリデーは多くが1年、最長で3年は滞在が可能なので、社会人の場合は一旦現在の仕事を辞めてから行くことになります。そのため、帰国後に次の仕事を探す必要があり、果たして仕事が見つかるのか、ワーキングホリデーの経験は就職活動に活かせるのかといった点を不安に感じている人が多いことがわかりました。
ワーキングホリデー経験は、その後のキャリア形成にどんな影響を与えるのでしょうか。今回、オーストラリアで政府から人材紹介派遣ライセンス(EA2462)を取得し、キャリアコンサルタントとして活躍する岡 乙飛子さんにお話を伺うことができました。
岡 乙飛子(おか・おとひこ)さん
日本で国立大学を卒業後、当時世界トップ10の製薬会社に入社するも自律神経失調症と診断され1年で退職。半年のニート生活後、ワーキングホリデービザにて渡豪。そのまま留学、海外就職を経て自力でオーストラリア永住権取得。”自分が留学する時にこんなエージェントが欲しかった”をコンセプトに、オーストラリア・キャリアセンター(ACC)を設立。キャリアサポート歴15年目を迎え、現在は忖度なしにキャリア、現地のリアルを届けるYouTube「ACCチャンネル」、インスタグラム(@acc_perth)などでワーホリ、留学情報、なりたい自分になるマインドを発信中。
肩書きや経歴が一切リセットされて「自分とフラットに向き合える」機会に
――岡さんは現在、オーストラリアにお住まいなのですね。
はい。西オーストラリア州のパースという街で、オーストラリアキャリアセンター(ACC)という会社を経営しています。当社は日系では唯一、パースに特化した留学・就職エージェントであり、スタッフは全員がオーストラリアで専門学校以上の長期留学経験者です。私自身もコンサルタントとして、ワーキングホリデーや留学でいらっしゃる方のサポートをしています。
――なぜオーストラリアで起業されたのでしょうか。
私は大学卒業後、外資系大手製薬会社に入社しました。ところが、激務がたたって身体を壊し、1年で退職することになったのです。その後は半年間ニートをしていたのですが、やりたいことも見つからず、年功序列が苦手な私は日本の会社でやっていく自信もなくなる一方でした。
付き合っていた彼女にもフラれて途方に暮れていたときに、母から「海外に行ってみては?」と提案されて。久しぶりにワクワクする気持ちが戻ってきました。貯金もあまりなく、留学するほどの元気もなかったので、ゆっくりできるワーキングホリデーでオーストラリアに行きました。この出来事が人生の転機になりました。その後、留学や海外就職を経てオーストラリア永住権を取得し、自分と同じように日本での生き方に悩む方の力になりたいという想いから、パースで留学・就職エージェント会社を立ち上げたのです。
――岡さんご自身が、ワーキングホリデーで人生を変えたご経験をお持ちだったのですね。
そうですね。私の人生のターニングポイントはワーキングホリデーだったと断言できます。
――ちなみにワーキングホリデー先にオーストラリアを選んだ理由は何だったのでしょうか。
最初はアメリカに行きたかったのですが、アメリカと日本の間にはワーキングホリデー制度がないんです。そこで、別の国を検討しました。いろいろな選択肢がある中、オーストラリアにした決め手の1つは「気候」でした。
――気候ですか!
気候は本当に大事なんですよ。日本でも、気圧の変化や季節の変わり目で体調を崩す方がたくさんいますよね。私もその一人でしたが、温暖で安定した気候のオーストラリアを選んだ結果、こういった不調に悩まされずに充実した時間を過ごせるようになりました。
――たしかに、旅行と違って1年以上滞在するとなると、気候は体調等にも影響しそうですね。
これからワーキングホリデー先を選ぼうと思っている方には、気候も含めて好きな場所かどうか、行ってみたいと思えるかどうかを考えてみてほしいですね。
――ワーキングホリデー中、「自分の人生を変えた」と思う出来事はありますか。
「自分は自分でいいんだ」と気づけたことです。日本にいた頃の自分は、仕事を辞めるまで、それなりに世間から評価される人生を送っていたと思います。第一志望だった医学部は全滅だったものの、それなりの国立大学には入学し、大手製薬会社にも入社できた。ただ、一方で常に「肩書き」が自分の価値を決めているような感覚に違和感を持っていたんです。ワーキングホリデーに来て、そうした肩書きや経歴の一切がリセットされ、「岡 乙飛子」という一人の人間として評価されるようになりました。
特に、オーストラリアという国は肩書きでは人を判断しない文化があるんです。それよりも、自分の“軸”をしっかり持っているかどうかが評価されます。そういった文化が私にはとても合っていたし、ワーキングホリデーで生き方や未来の考え方を変えるきっかけになりました。
――岡さんがご経験された“気づき”は、まさにワーキングホリデーの魅力ですよね。
そうですね。一言でいうと「自分とフラットに向き合える」ことがワーキングホリデーに行くメリットだと思います。
私自身もそうでしたが、多くの人は何となく“世間的に良い”とされる生き方のレールに乗り、いわゆる“普通”の人生を歩んでいきます。それ自体は悪いことではありません。しかし、どこかで敷かれたレールの上にいることに疑問を持ったり、レールの先に不安を感じたりする人もいます。
そんなときこそ、肩書きやレールが関係ない「本来の自分」と向き合うことで、自分の心の声に耳を傾け、自分の本当に好きなこと、やりたいことに向き合う時間がとても大切です。日本では学校卒業後、すぐに就職して一生働き続けるスタイルが主流ですが、世界的にみると、キャリアブレイクを作らずに仕事し続ける生き方のほうが珍しいんですよ。
知らない街、知らない人だらけの環境に身を置き、人生の休暇であるワーキングホリデーを過ごすことは、そうした「自分を見つける」作業に最適な時間なのです。
ワーキングホリデーとキャリア形成について
――ワーキングホリデー中の仕事はどのように探したらいいのでしょうか。
仕事については、ワーキングホリデーに来る前にやっていたことにこだわる必要はないと思います。むしろ、それまでの経歴を活かそうとすると失敗することも多いです。たとえば事務職なんかは、オーストラリアではワーキングホリデービザで滞在している人にはまず席はありません。ワーキングホリデービザは6カ月間以上1つの仕事に就けないので、雇用しにくいという事情もあります。
(※2022年12月末までの暫定措置として、一事業者での就労期間の上限が撤廃されました)
そういった点を踏まえて、一般的に多いのはやはり接客系でしょうか。飲食店やクリーニング業、マッサージ店、配送系、最近だとUber Eatsをやっている方が多いですね。私もワーキングホリデーでは接客の仕事をしており、その後シェフとしても働いていました。オーストラリア各都市には日本語の情報サイトもあるので、そこで求人を探してみるといいでしょう。
――マイナビニュースの調査によると、「ワーキングホリデーに興味はあるけれどなかなか踏み出せない」という人も少なくありません。その理由として、「再就職できるかわからない」「せっかくの経験を活かせるか不安」など帰国後のキャリア形成に不安を抱えている意見が多く寄せられました。
まずいえるのは、「ワーキングホリデーで何をしたのか」ということを、帰国後の再就職に役立てようと意識しすぎないことです。ワーキングホリデーで身につく可能性のあるスキルといえば語学力ですが、これも人によってレベルが違いますし、留学と違いずっと学校に通うわけではないワーキングホリデーの1年程度では、ビジネスレベルの語学力は習得できる人のほうが圧倒的に少ないです。ある程度の語学力と、多国籍な人たちとのコミュニケーション力を活かすのであれば、ホテルなどのホスピタリティ職に就かれる方は一部いますね。
ただ、先ほども申し上げたように、ワーキングホリデーの最大のメリットは「自分と向き合える」ことです。ワーキングホリデーそのものがキャリアになるというよりも、帰国後のキャリアを作っていくための人間的土台を作れるのがワーキングホリデーなのです。
ですから、自分がやりたいことや向いていると感じられることを見つけて、その後資格を取得するなど、ワーキングホリデー中の経験にこだわらない仕事の探し方をおすすめします。あるいは、ゼロからリスタートを切れるわけですから、独立や起業も1つの選択肢でしょう。就職しようと考えると、自分の良さが企業の判断次第で決まってしまいますし、求められるハードルが高くなってしまうのも事実です。
その点、独立や起業は資格が要らない場合がほとんどなので、誰でも可能性を広げられます。多くの人は失敗を避けがちですが、「失敗は学ぶことしかない」と気づけるのもワーキングホリデーの特徴です。多くの人が軌道に乗って、それまでよりもはるかにやり甲斐や収入が多い生き方になっていますよ。
――実は、ワーキングホリデー経験者へのアンケートで「その後のキャリア」について聞いたところ、「日本の企業に就職」が6割弱ともっとも多いのですが、3割弱は「独立・企業」されたそうです。あくまで印象ですが、仕事を辞めてワーキングホリデーを経験せず次のキャリアを考える場合と比べると、独立・企業の割合が非常に高く感じます。
また、「ワーキングホリデーの経験が帰国後のキャリア形成に役立ったと思いますか?」という質問には、91%の方が「そう思う」と回答されています。その理由としては、「英語力を活かして就職につなげた」という意見もありますが、「困難に立ち向かえるようになったこと」や「いい意味で度胸がついたこと」、「考えが多面的になったこと」、「自分で何かを成し遂げる力がついた」などの意見が多く集まりました。
まさに、それこそがワーキングホリデーの意義です。「スキルアップ」や「経歴」にこだわらず、もっと根本の人間力を高められるという点において、ワーキングホリデーは帰国後のキャリア形成に寄与してくれるのです。
――ありがとうございました。
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ワーキングホリデーというと、つい語学力などの目に見えるスキルばかりを期待してしまいますが、貴重な「自分を見つめられる時間」を得て、次のステップに進むための人間的な土台を作ること。それこそがワーキングホリデーならではの魅力であり、キャリア形成に役立つポイントなのです。
コロナ禍でワーキングホリデーに行きづらいと感じている方もいるかもしれませんが、オーストラリアはすでにワクチン接種を完了していれば、入国時の隔離なしで渡航が可能になっています。
▼オーストラリアでのワーキングホリデーの魅力
- ワーキングホリデービザの発給数に上限がなく、申請がおりやすい
- 最長3年までビザの延長が可能に
- 最低賃金が日本とワーキングホリデー提携国の中でトップ
- 多民族国家のため、フレンドリーな国民性
- 英語を第2外国語とする人が多く、日本人でも英語がしゃべりやすい環境
- 日本との時差は1~2時間程度とほとんどなく、家族や友人ともコミュニケーションをとりやすい
過ごしやすい気候で、治安も良く、時差もほとんど気にならないオーストラリアは、ワーキングホリデーで一番人気なのもうなずける国。ワーキングホリデーに興味のある方は、ぜひオーストラリアを検討されてみてはいかがでしょうか。
▼オーストラリアでワーキングホリデー!| なぜあなたはワーホリへ?編
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【ワーキングホリデーについてのアンケート】
調査時期:2022年2月21日~2月28日
調査対象:18歳から29歳の社会人
調査数:524人
調査方法:インターネットログイン式アンケート
[PR]提供:オーストラリア政府観光局