猫好きを公言していたら、やっと報われた。なんと、猫が登場するドラマのレビューを、とにかく猫好き目線で書いていいという。こんな夢のような仕事をいただいたからには、存分に猫の魅力を伝えなければという使命感にかられている。

まずは、今回紹介するドラマW『山のトムさん』のあらすじを。本作は児童文学作家 石井桃子氏の実体験を元にした話を原作としたもの。舞台はとある田舎。東京で働いていたハナ(小林聡美)と、友人のトキ(市川実日子)・トシ(佐々木春樺)親子、そしてハナの甥アキラ(伊東清矢)が、畑仕事をしながらの暮らしを始める。近所に住むゲン(光石研)・シオリ(高橋ひとみ)夫妻に助けられながら、ハナたちは田舎での生活になじんでいく。しかし、家にネズミが出ることに悩まされ、ネズミ退治のために猫を飼うことを決意。そこにやってきたのが、子猫の「トム」だった。

全編を通し、多くを語りすぎない素朴さとゆっくりとした時の流れを感じさせ、猫のいる風景を自然に描いている本作。このレビューでは、押し付けがましくなく、随所に散りばめられた“猫萌え”ポイントをピックアップしていきたい。

猫を抱っこしちゃダメ!? そんなツライ試練、絶対乗り越えられない

もしも人が猫を飼うことになったら、どんなことをするか? きっと、多少迷惑な顔をされたって思う存分モフって、抱っこして……。それはそれは甘いひとときを過ごすことだろう(私は実際にそうしている)。しかし、この作品の場合、トムが飼われることになった目的はあくまでもネズミ退治。甘やかしてしまうとネズミを退治しなくなるという理由で、トキによってトムを抱っこすることが禁じられてしまうのだ。

ミーミーと、か細い声で鳴く愛くるしい子猫を前に、そんな禁欲ツラすぎる……!

だが、案の定(? )耐えられなかったハナは、トキが出かけたタイミングを見計らって、念願の抱っこを実行! ふわふわで小さいトムを肩に乗せ、ほほをすり寄せて満足そうに微笑む。そして、堰を切ったようにトシ、アキラも立て続けにこっそりトムを抱っこするシーンが続く。しかも、猫がちょっとニガテだといい、抱っこ禁止のクギを刺したトキですら、ほかの人の目を盗んで思わず抱っこしてしまうのだ。

猫のリアルに忠実なところが好印象!

本作では、全体を通して、猫の自由気ままさと特長をよく捉えられているところにも注目したい。猫はトイレを覚えるのが得意なことをさり気なくアピールしていたり、「そこに紙袋があるから」と言わんばかりに紙袋に頭をつっこんだりと、"猫の行動あるある"がてんこ盛り。猫好きをうならせるシーンばかりなのだ。

そして、東京に出ていたハナがみんなにおみやげを買ってくるシーンでは、トムにもおもちゃのおみやげが。しかし、当のトムはまったく反応なし。……これ、猫を飼っている人は少なからず経験があるのではないだろうか。せっかくお金を出して買ってきたものより、家にあるビニール袋や紙くずなどに食いつき、エキサイティングに遊ぶ。こんなことは日常茶飯事だ。ハナは「(トムがおもちゃを)気に入ったみたい」などと言うが、実際は全然遊んでいないという(笑)。しかし、そのニクさも猫の魅力の1つだ。

まだある。例えば、書き物をしているハナのデスクに上がってわざわざ書類の上に乗ってくる……。これは王道。なんなら猫たちは、作業中の手の上に乗ってきたりもするものだ(なぜなのか……でもちょっとうれしい)。また、編集者のイノグチ(木南晴夏)が遊びにきたシーンでは、トムを発見したイノグチが「あっ、猫ちゃんだ~」と言ってかまおうとするが、もちろんトムは寄ってこない。そしてイノグチは「来ませんね……」とポツリ。これもかなりリアルだ。

お気に入りの猫シーンを見つけて楽しんで

私が個人的に一番気に入っているシーンは、落ち込んでいるアキラを2度見するトム。一度立ち止まって数秒間目が合うものの一旦通り過ぎ、もう一度またしばらく目を合わせるのだ。このときの"間"がたまらなくいい! わかってくれる人、きっといるはず!!

あまりネタバレするのもよくないので、あとは実際に見て楽しんでほしい。猫のドキュメンタリーのように、ローアングルから猫目線で撮影しているシーンも見どころの1つ。多くの人が一度は憧れるのんびりとした田舎暮らしと猫はマッチしすぎ! 猫好きの人は見逃さないで。

ドラマW『山のトムさん』は12月26日(土)21:00から、WOWOWプライムで放送。

(マイナビニュース広告企画:提供 WOWOW)