「信頼関係を作るのが難しいです」
「ジェネレーションギャップを感じます」

若手育成術をテーマとした研修の場でそんな声をよく聞きます。某企業の管理職Aさんもこうした悩みを持っていました。

  • 部下と信頼関係を築けていますか?

ダメな上司は否定とマウンティング

ところが、Aさんの部下から話を聞くと、「否定とマウンティングばかりで建設的なコミュニケーションを取れない」という声が沢山上がってきたのです。

例えば、

・企画案を見せると、まずは「非現実的だ」という一言から始まり、ただ一方的に否定される
・「あまりに忙しいから業務の振り分けを見直してほしい」と相談すると、「自分の方が忙しい」「若い時から自分は長時間労働してきた」という話を延々とされて終わる

というような状況。

もしかするとAさんの悩みは、ジェネレーションギャップが要因ではなく、「フラジャイル・ナルシシズム」かもしれない……。これが私の率直な感想でした。

上司と部下の関係を破綻させない指標

フラジャイル・ナルシシズムとは、自分に自信がないが故に、自分を肯定しようと無意識に「相手を否定する」「マウンティングを取る」といった、「自分の方が優れている」というメッセージを一方的に発してしまうメンタル状態のことです。

人間関係の法則であるゴッドマン率によると、上司と部下の関係は、「ポジティブな言葉:ネガティブな言葉=4:1」の割合が崩れると、破綻するそうです。では、どうすれば信頼関係を作れば良いのでしょうか。

コミュニケーションを変える

自分の内面を変えることがベストですが、すぐには難しいもの。それよりも、意識してコミュニケーションを変えるのが効率的です。なお、うまくいくと、結果として内面も変わってきます。

まず前提となるのは「気付く」ということ。

俯瞰して自分のコミュニケーションスタイルを見て、「相手を否定することから入る傾向がある」「マウンティングをしてしまうクセがある」と気付けば、変えることができますね。

その前提に立った上で、大切なのは「気を付ける」といった精神論ではなく、「ルール」で取るべき行動を定めてしまうことです。

「自分を受け入れる人」を人間は信頼する

3つ例をあげましょう。

頭を冷静な状況に保つ時間を確保する

即座に否定してしまう「クセ」を持っている場合は、何も考えずに否定から入ってしまうことが多々あります。そこで、何かフィードバックする際には、例えばトイレに立つなど、一度席を外し、頭を冷静に保つ時間を確保するルールにすると効果的です。

フレームを活用するルールにする

「良いところを指摘する」→「具体的に〇〇という部分に課題がある」→「具体的に〇〇というアドバイスをする(もしくは「問い」をうまく使いながら、改善に導く)」といった話の流れのフレームを初めに決め、そのフレーム通りに話をもっていくのも手です。

具体的に「ココ」と指示し、ポジティブな言葉に置き換える

企画案のフィードバックをする場合、「この企画は全然ダメだ」といったように「どこが悪いのか伝えず、ただ否定する」のではなく、「この●●という部分を改善すると良くなるから、こういう方向にブラッシュアップしたらどうだろう?」と、具体的に改善ポイントを指示し、ポジティブな言葉(例であれば「ブラッシュアップ」)に置き換えて、フィードバックすると効果的です。

慈愛願望欲求と言いますが、人間は、「すごい人」や「厳しく接してくる人」ではなく「自分の存在を受け入れてくれる人」に対して信頼を置く動物です。

もし、うまく部下・後輩と信頼関係が作れていないな、と感じる時は、自身が相手に向けて発する言葉の「ポジティブな割合」を客観的に調べることから始めると良いかもしれません。