前回でご紹介したように、鉄道路線のロングレール化が進行中だ。ロングレールは25mの定尺レールを溶接して作る。現地で溶接する方法もあるけれど、終列車から始発までの限られた時間では施工できる距離に限界がある。そこで最近は、あらかじめ200m以上の長尺レールを作って現場に搬入するという。しかし、200mの長いレールはどうやって運ぶのだろうか。

在来線の電車の長さは最大で約20mだ。そう思えば25mのレールは鉄道貨車でも運べそうだ。在来線企画の鉄道線路はたいていどこかで他社とも繋がっているから、レールの搬入は専用の保線車両を使う場合が多い。道路で運ぶ場合はトレーラーを使うことになる。ただし、一般道路において12m以上のトレーラー輸送は、関係各所へ申請手続きが必要となる。新幹線など鉄道車両を道路で運ぶ様子は、皆さんも時々テレビなどのニュースで見たことがあるだろう。ということで、25mのレールも道路を利用しての輸送が可能といえる。

しかし、200mは長い。20mの通勤電車10両編成とほぼ同じ長さになる。縦にすると40階~50階建てのビルに相当する。そんなに長いレールをどうやって運ぶのだろう。貨物列車で運べるのだろうか。道路での輸送は曲がることができないので完全にNGだろう。それなら空はどうか。ヘリコプターで運ぶ方法もありそうだ。しかし、「落下したら……」と思うと怖い。

レールは曲がっても問題なし! 専用貨物列車で運ぶ

正解は「貨物列車で運ぶ」だ。もちろん鉄道線路は真っ直ぐな区間だけではなく、曲線区間もある。200mの長いレールを、どのようにして曲線区間を通過させるかというと、もちろん曲げて運ぶ。ロングレールを運ぶ専用の貨車があるのだ。それが、チキ5500形である。

チキ5500を連結したロングレール運搬列車(写真は同系列のチキ5700形)

カーブに合わせてレールも曲がる

チキ5500形は、コンテナ搭載用の貨車を改造した車両だ。同車両にはレールを固定するための黄色い装置が組み込まれており、これをレールの長さに合わせて連結して使う。ロングレールを運ぶ場合は複数の貨車にまたがって搭載することになり、それぞれの貨車で固定していく。このとき、端はしっかり固定するけれど、途中の貨車では多少の余裕を作っておき、レールが左右に動くようになっている。

貨物列車がカーブにさしかかれば、貨車の動きに合わせてレールも曲がる。カーブが終われば、レール自体の反力で元に戻る。レールは鋼鉄だから曲がらない、という先入観があるけれど、実際はよく曲がるものらしい。もっとも、曲がらなければカーブ区間にレールは敷けないから、既存の線路にあるカーブ程度は曲がらなければ困る。長さ200mに対して、レールの幅は14cm程度だから、イメージ的には"大きな針金"といったところだろうか。そんな風に曲がりやすいレールは、枕木や路盤のおかげでしっかり固定されており、私たちが毎日安心して電車に乗ることができるのだ。