JR大阪環状線弁天町駅に隣接する「交通科学博物館」が、2014年4月6日の営業を最後に閉館する。1962(昭和37)年に開館し、かつて東京・神田にあった「交通博物館」、現在の埼玉県さいたま市にある「鉄道博物館」と並び、日本を代表する鉄道展示施設だった。

2014年4月6日に閉館する「交通科学博物館」

ところで、国内には他にも鉄道に関する博物館が存在する。群馬県の「碓氷峠鉄道文化むら」は、広大な敷地に30以上の実物展示車両を並べている。京都府の梅小路蒸気機関車館はSLに特化した展示施設で、今後は交通科学博物館の展示物もこちらに移し、「京都鉄道博物館」としてリニューアルされる予定だ。最近では名古屋市に開館した「リニア・鉄道館」も人気が高い。

こうした大規模な施設以外にも、私鉄が自社で活躍した車両を展示するなど、鉄道に関する博物館や展示施設はいくつかある。その中でもとくに珍しい施設は、日本で唯一の貨物列車専門博物館だ。その名も「貨物鉄道博物館」。所在地は三重県いなべ市。三岐鉄道三岐線丹生川駅のすぐそばにある。

貨物鉄道博物館

「貨物鉄道博物館」は日本の鉄道貨物輸送130周年を記念して、2003年9月に開館した。NPO法人「特定非営利活動法人 貨物鉄道博物館」が運営している。要するにボランティアによる運営で、活動資金は寄付金でまかなわれている。事務局は三岐鉄道の本社内にあり、博物館の建物は丹生川駅の旧貨物ホームだから、三岐鉄道の協力も大きい。三岐鉄道は現在も貨物列車によるセメント輸送を実施しているため、博物館から現役の貨物列車を見学できる。

貨物鉄道博物館は機関車2両、貨車14両を保有している。機関車のひとつは1898年製造のB4形蒸気機関車だ。日本鉄道がイギリスから輸入し、国鉄を経て東武鉄道で活躍。1966年に引退したという。もうひとつの機関車はDB101形ディーゼル機関車だ。静岡県の製紙工場で貨車の入替えに使われていたとのこと。

貨車は小さな黒い2軸タイプが多く、箱型の有蓋車「ワ11」、トラックの荷台のような無蓋車「ト200」、タンク車「タム500」などが並ぶ。現在の貨物列車はほとんどコンテナになってしまい画一化されているけれど、それ以前につくられた、用途別の懐かしい車両を見学できる。

B4形蒸気機関車

シキ160

中でも圧巻は、大物車の「シキ160」だ。大きな変圧器を搭載する専用貨車で、最大130トンの搭載力があるという。全長23.7m、車軸は12本もあり、荷物を支える梁も大きく、まるで動く鉄橋のようだ。この巨大な貨車を間近に見るだけでも、訪問する価値があるだろう。

同博物館の保有貨車のうち、2両は丹生川駅構内、1両は東藤原駅で展示されている。三岐鉄道は西藤原駅でも独自に保存車両を展示しているし、電車はかつて西武鉄道の主力として活躍した懐かしいタイプ。貨物鉄道博物館を中心に、三岐線自体が博物館になっているかのようである。

貨物鉄道博物館はボランティアによる運営のため、開館日は限られている。基本的には毎月第1日曜日の10:00~16:00となっている。当日は資料館がオープンし、貨物列車に関する資料を見学できる。入場無料。屋外展示車両は開館日以外でも眺められるようだ。寄付金で運営しているとのことなので、なるべく開館日に訪れ、鉄道ファンが支える鉄道遺産として応援しよう。