元国税局職員さんきゅう倉田です。好きな借金は「国債」です。
芸人として社会の中で生きていると、社長を筆頭にお金持ちに出会うことが多いのですが、それ以上に、貧しい人に出会います。芸人、俳優、女優、フリーター、友達が減る商売の人、バンドマン、アイドルなどです。
芸人さんが貧しいのは、事務所からの給料が少ないために時給1000円でアルバイトをしていて、かつ、「飲む打つ買う」の人が多いからです。とくに、パチンコをやっている芸人さんはたくさんいて、売れてない人ほどその割合が大きいようです。暇だし、時間を有効に使う方法も知らないし、仕事の中にあるコストとリスクと危機感を感じて真の達成感や充実感を味わうこともないので、失望も歓喜も興奮もなく、射幸心を簡単に煽られてしまうのでしょう。
そんな中で、酒も飲まず、博打も打たず、女性と遊ばず、さらに、タバコも吸わず、実家に住んでいて生活費を入れていないのに、借金を250万円作ってしまった芸人がいます。
彼は名前を「西日本」と言います。
どうやって借金を作ったか
西日本は、高校を卒業して、すぐによしもとさんの養成所NSCに入りました。それから5年くらい経ってから、某百貨店のクレジットカードを作ります。彼は、その時初めて、自分の預金額以上の買い物ができることを知りました。このとき、いまお金がなくとも、「月末に給料が入れば払える」という考えが彼の中に芽生えました。
それを数ヶ月続けていたある日、今度は「キャッシング」の機能に気づきます。ATMにカードを入れるとお金が出てくる仕組みに、彼は「これは“希望”だ」と言ったそうです。これにより、彼は、その百貨店だけでなく、ありとあらゆる場所で、買い物ができるようになりました。
なぜ借金が増えたのか
西日本はいつも「来月の給料で払えばいい」と考えていました。「いくら買い物をしたかはわからないけれど、引き落としの後に、預金があるからまだ大丈夫」と思っていました。
しかし、偶然、友人が彼のクレジットカードの支払履歴を見せてもらったことで、事態は悪い方向に傾きます。彼は、「リボ払い」を設定していたのです。リボ払いは、毎月決めた金額だけを返済する仕組みです。20万円使っても、リボ払いが5万円なら、15万円は借金として残ってしまいます。彼の借金は、80万円を超えていました。
西日本のスケジュール
それから、4年が経ち、再度、彼の借金を友人が見たところ(気づいた方もいるかもしれませんが、友人とはぼくのこと)、250万円に増えていました。彼は、百貨店だけではなく、銀行のキャッシングサービスも利用して、生活費にしたり、洋服を買ったりしていたのです。
借金するのは彼の自由なので、責めることはありません。寧ろ、彼を反面教師にして得られることはたくさんあります。その中で、おそらく不規則な生活をしているであろう、彼の一日のスケジュールを紹介したいと思います。
この画像は、「一日のスケジュールを円グラフにして送ってね」とぼくが依頼して、彼に書いてもらったものです。9月12日のスケジュールですが、恐ろしく汚く、大雑把です。
~8時 睡眠
~9時15分 食事
~16時 再び睡眠
~24時 バイト
分かっているだけでも14時間寝ています。借金が250万円あるのに、一般の人の倍くらい寝ています。別の日のスケジュールも見てみましょう。
9月14日です。まず、円の中心がずれています。そして、消しゴムで消したのか、書き損じなのか、汚れなのか、他人の認識を遅らせる魔術がかかっているようです。たくさんの円グラフを並べて「借金が250万円ある人の作ったスケジュールはどれか」と質問されたら、ほとんどの方がこれを選ぶのではないでしょうか。
仕事のできるビジネスマンや生まれながらのお金持ちは、このスケジュールを作成し、他人に見せることはしないでしょう。
~4時 バイト
~11時 帰宅、ご飯、風呂、プライベートタイム
~21時 睡眠
~24時 いどう、バイト
この日は、7時間弱バイトをして、10時間眠り、7時間食事やプライベートタイムに費やしました。「プライベートタイム」とはなんなのでしょうか。本人に、聞き取りを行ったところ、「よくわかんない」と言っていました。本人も認識できないような、ぼんやりとした過ごし方をしているのです。このあたりに、「借金が250万円ある人」になれる秘訣がありそうです。
借金が減らせない人には、少なからず共通点があって、それを治していくことで、借金を減らすことができます。単純に「浪費を減らす」のではなく、生活習慣や考え方から改善するようにしましょう。「借金が250万円ある人」の行動ついては、また改めて紹介致します。
※参考 村上龍『無趣味のすすめ』(幻冬舎)

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