東日本大震災の影響で、3月は数多くの公演が中止になりました。が、4月に入り、劇場も通常の賑わいを取り戻しつつあります。ブロードウェイでも、2001年の同時多発テロの後、劇場の灯を絶やさないようシアター関係者は公演を続行しました。こんな時に? という声もあるかもしれませんが、こんな時だからこそ、劇場で「非日常」を体験するのもおすすめです。劇場をあとにするときには思わぬ力を得られているかも!?

『港町純情オセロ』 - 劇団☆新感線がシェイクスピア四大悲劇『オセロー』を翻案

撮影:岡田貴之

歌舞伎にミュージカル、シリアス、お笑いまで、あらゆるジャンルで斬新な挑戦を続ける劇団☆新感線がシェイクスピア四大悲劇『オセロー』を脚色。妻の浮気を疑い、嫉妬に駆られた人間が悲劇的な末路に向かっていく様を描いた同作を、舞台を戦前の日本、関西のとある港町に置き換えるなど大胆にアレンジ。同劇団がシェイクスピアの翻案に挑むのは、2006年に『マクベス』を宮藤官九郎の脚色で上演した『メタルマクベス』『リチャード3世』に続き、3度目。シェイクスピアに苦手意識のあった私も、わかりやすい脚本や新感線らしいビビットな演出で存分に楽しめ、原作に再挑戦してみようというきっかけとなった。本作の脚色は、青木豪。世界で上演され続けられる名作を、人間悲喜劇として、どう料理していくのか実に興味深い。キャストには、新感線の看板俳優・橋本じゅんをはじめ、ゲストには、石原さとみ、大東俊介、田中哲司といった豪華な顔ぶれがそろった。

シェイクスピアの傑作が関西を舞台にしたギャング活劇に!

劇団☆新感線プロデュース「港町純情オセロ」
日程 2011年4月30日(土)~5月15日(日)
会場 赤坂ACTシアター(東京・赤坂)
※2011年4月15日(金)~4月22日(金) まで、大阪公演(イオン化粧品 シアターBRAVA!)あり
原作 ウイリアム・シェイクスピア(松岡和子翻訳版「オセロー」ちくま文庫より)
脚色 青木 豪
演出 いのうえひでのり
キャスト 橋本じゅん、石原さとみ、大東俊介、粟根まこと、松本まりか、伊礼彼方、田中哲司ほか
料金 S席10,500円/A席8,500円

『その族の名は「家族」』 - 現代の日本社会の家族の在り方を問う

ユースケ・サンタマリア

気鋭の脚本家や演出家に注目してきた、こどもの城 青山円形劇場とネルケプランニングの共同プロデュース公演シリーズ「青山円劇カウンシル」の第4弾公演は、ハイバイの岩井秀人の作品を、ユースケ・サンタマリア、荒川良々といった個性派キャストにて上演。本作は岩井自身の実際の体験をもとに、2008年に初演された『て』を改題したもの。認知症を発症した祖母のもとに、ばらばらだった家族が集まるのだが──。現代の日本社会が抱える家族の問題に、引きこもりの経験をもつ岩井が踏み込んだ佳作。祖母役を研ナオコが務めるというのも楽しみ。

360°の円形ステージで個性派キャストの芝居を堪能

『その族の名は「家族」』~『て』改題~
日程 2011年4月13日(水)~28日(木)
会場 こどもの城 青山円形劇場(東京・青山)
作・演出 岩井秀人
キャスト ユースケ・サンタマリア、荒川良々、滝藤賢一、内田 慈、ノゾエ征爾、古澤裕介、浅野千鶴、小河原康二、田村健太郎、師岡広明、大鷹明良、研ナオコ
料金 全席指定5,800円

『散歩する侵略者』 - ラブストーリーにSF、サスペンス。一粒で何度もおいしい人気作

前川知大が作・演出を行う人気劇団イキウメの作品のなかでも、ファンの支持が厚く、代表作のひとつともいえる『散歩する侵略者』が再上演される。舞台は、日本海に面した小さな港町。同盟国の大規模な基地があるその町に、「概念を奪う宇宙人」が登場するというSF的要素をふんだんに持ちながら、サスペンスやラブストーリー、また現代社会への問題定義などさまざまな要素が散りばめられている。宇宙人が、地球人の会話のなかから「概念」を盗んで行くという設定もシュール! 日本の小さな町に住む一組の夫婦、という最小単位のコミュニティから、全世界に広がるスケール感を味わいたい。

イキウメの舞台表現の特徴が如実に現れた代表作

『その族の名は「家族」』~『て』改題~
日程 5月13日(金)~5月29日(日)
会場 シアタートラム(東京・三軒茶屋)
※4月23日(土)、24日(日) 、横浜プレビュー公演(KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ)、6月4日(土)、5日(日) 大阪公演(ABC ホール)、6月12日(日) 、北九州公演(北九州芸術劇場中劇場)
作・演出 前川知大
キャスト 岩本幸子、浜田信也、盛隆二、國重直也、宇井タカシ、安井順平、瀧川英次、内田慈、日下部そう、町田晶子
料金 全席指定5,800円
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、演劇専門誌や女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している

イラスト:gnk