言わないようにしようと決めていても、「暑いっ!」という言葉が口から出てくるような猛暑が嘘のように一気に秋に突入。突然の気候の変化にカラダがついていかない~なんて声も聞こえてきますが、演劇界はすでに本格的に秋模様。人肌恋しくなる(?)秋にピッタリのラブストーリーや、知的好奇心を刺激する演目が並びます。あなたの秋を彩るのはどの作品でしょう?

『カエサル』 - 塩野七生のベストセラーが、松本幸四郎主演で初の舞台化

この秋、屈指のスケールの大きな舞台といえばコレ! 累計920万部を超える塩野七生のベストセラー長編小説が初めて舞台化されます。原作となる『ローマの物語』は、ローマ建国から滅亡までを描いた超大作。今回舞台化されるのは、15年にわたって刊行された同作のなかでももっともスペクタクルと評される、英雄ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)の生涯に焦点を当てた場面。この古代ローマの英雄、カエサルを松本幸四郎が演じるというのですから期待もさらに高まります! 

松本はこの夏、ローマに出向き、カエサルゆかりの地を巡ってきたとのことで意気込み充分。頼れるリーダー不在の現在の日本において、揺るぎないビジョンを持ち、民衆から絶大なる指示を受けたカエサルの生きざまには感じ入るものがありそう。ドラマチックなカエサルの人生は、歴史にくわしい人でなくても楽しめるはず。「賽は投げられた」「ブルータス、お前もか」といった名台詞が生で聞けるかも!? そして、クレオパトラとの恋は!?

あの名台詞が生で聞けるかも!?

『カエサル-「ローマ人の物語」より-』
日程 2010年10月3日(日)~10月27日(水)
会場 日生劇場(東京・日比谷)
原作 塩野七生『ローマ人の物語』(新潮社刊)
脚本 齋藤雅文
演出 栗山民也
キャスト 松本幸四郎、小澤征悦、小島聖、小西遼生、瑳川哲朗、勝部演之、水野美紀、渡辺いっけい、高橋惠子ほか
料金 S席11,000円、A席7,000円、B席3,000円

『RENT』 - 社会現象を巻き起こした伝説のミュージカルの日本版が、2年ぶりに登場

1996年の初演以来、ブロードウェイで12年4か月のロングランを記録。世界15カ国で上演され、2005年には、クリス・コロンバス監督(映画『ハリー・ポッターと賢者の石』)の手で映画化もされた、伝説のロック・ミュージカルの日本版が再々演されます。『RENT』はプッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』をベースに、設定を20世紀末のニューヨークに置き換え、毎月の家賃も払えない貧困やHIV、薬物依存、同性愛者への差別などに苦しみながら、愛や友情、夢を懸命に模索する若きアーティストたちの焦燥と葛藤を綴った作品。

photo by Leslie Kee

「家賃(RENT)なんて払えないぜ!」と高らかに歌うシーンには、おいおい愛だ、自由だと主張する前にまずは義務を果たそうよ…と一言物申したくもなりますが、魅力的な楽曲と若者たちの生のエネルギーがビシバシと伝わってくるような演出に心揺さぶられ、気付けば中毒症状に陥っている人が全世界に多々。私もご多分にもれずブロードウェイ、来日公演、日本版と、いったい何回、この演目をみたことか。ありきたりすぎて恥ずかしいのですが「エネルギッシュ」という言葉がぴったりで、ロックをはじめ、タンゴ、R&B、ゴスペルなど多彩なジャンルの楽曲に音楽のもつ絶大な力を再認識させられます。日本版の公演は実に2年ぶり。世界中で愛され続けるミュージカルのパワー、感じまくってください。

世界中で愛されるエネルギッシュなミュージカルナンバーは必聴!

『RENT』
日程 2010年10月7日(木)~11月23日(火)
会場 シアタークリエ(東京・日比谷) ※地方公演あり
脚本・音楽・作詞 ジョナサン・ラーソン
演出 エリカ・シュミット
訳詞 吉元由美
キャスト 出演:福士誠治、Anis、Ryohei、米倉利紀、Jennifer、ソニン、中島卓偉、田中ロウマ、Shiho、キタキマユ、Miz、白川裕二郎ほか
料金 S席11,000円、A席8,500円、エンジェルシート5,000円

『図書館的人生Vol.3 食べもの連鎖』 - "現在"を切り取る劇作家、前川の独特の世界観がさく裂

イキウメの作品は、日常の世界に、SF的要素やホラーなど非日常を同居させた作風が特徴。読売演劇大賞優秀作品賞、演出家賞、紀伊國屋演劇賞個人賞など日本演劇界の錚々たる賞を受賞し、注目を集める若手劇作家・演出家の前川知大がこの秋に放つのは"食"をめぐる短編集。人間が生きていくうえで欠かせない"食"を題材に、命のつながりにまつわるエピソードを綴っていくそう。

ちなみに"図書館的"という言葉は、「図書館で人生の一瞬を垣間見よう」「無限に広がる図書館から作品をチョイスする」というイメージから来ていているとのこと。これまで「死と記憶」、「武器」についてのエピソードが上演されています。演劇って興味あるけれど、長いのがねぇ、なんて人は、こういったオムニバス形式の舞台から入ってみるのがおすすめ。演劇を見慣れている人にも、イキウメの世界観が凝縮された同作はきっと新鮮なはず。

劇団の特徴が凝縮されたオムニバスを堪能せよ

『図書館的人生Vol.3 食べもの連鎖~"食"についての短篇集~』
日程 10月29日(金)~11月7日(日)
会場 シアタートラム(東京・三軒茶屋) ※地方公演あり
作・演出 前川知大
キャスト 浜田信也、盛隆二、岩本幸子、伊勢佳世、森下創、窪田道聡、緒方健児、大窪人衛、加茂杏子/ 安井順平、板垣雄亮
料金 前売4,000円、当日4,200円
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、演劇専門誌や女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している

イラスト:gnk