11月上旬に暗号資産取引で世界第2位の企業が破綻したニュースは、世界中を驚かせました。テレビや新聞等でも大きく取り上げられましたので、普段暗号資産のニュースに触れない人でも耳にしたのではないでしょうか。

このニュースで日本の暗号資産市場にも動揺が広がり、国内取引業者への安全性について関心が高まっています。こういった状況をふまえ、今回は国内取引業者がどのような法規制や自主規制、監視体制のもとにあるのかを解説します。

暗号資産取引をめぐる法律

日本では暗号資産取引は「資金決済法」と「金融商品取引法」の2つの法律で規制されています。日本での法規制は2017年から始まりました。当時資金決済法では、暗号資産を決算手段のひとつとして定義しました。まずは資金決済法が改正され、暗号資産の交換業者に登録性が導入されました。その後、顧客財産や利用者保護の強化や、暗号資産デリバティブ取引など金融商品としての側面を規制するため、2020年に改正金融商品取引法と、同時に改正資金決済法も施行され、いまに至ります。

現在、国内で暗号資産と法定通貨との交換サービスを行うには、金融庁に暗号資産交換業として登録することが必要です。さらに差金決済取引(レバレッジ取引やCFD取引とも呼ばれます。詳しくは第7回で解説します)を扱うには第一種金融商品取引業の登録も必要です。いずれの登録をするにも、システムセキュリティや顧客資産管理対応など厳しい審査項目と継続的な監督が行われています。

また暗号資産交換業者は暗号資産銘柄を何でも自由に取扱いができるわけではなく、自主規制団体により安全性などを考慮し、審査を通過した銘柄だけを取り扱うことができます。

顧客資産はどのように保全されるか

大手暗号資産交換業者の破綻にともなって、もっとも注目されたのが顧客資産の保全状況です。金融商品取引法では、取引業者は顧客資産を安全に管理すること、顧客資産と自己資産は明確に分離する分別管理の状態にしておくことが義務付けられています。

具体的には日本円は信託会社で預けることが基本になっています。これにより例えば取引所が破綻しても取引所の役職員が顧客の日本円を勝手に処分させる、というようなことを防ぎます。暗号資産はハッキングなどを防ぐためインターネットにつながらないコールドウォレットに保管され、さらに秘密鍵を厳重に管理されています。

分別管理の実施状況は年に1度監査法人が監査を行い、その結果は自主規制団体に報告されています。もちろん監査において重要な指摘事項があれば、早急に是正することが求められます。

さらに破綻した場合でも顧客資産を保障できる潤沢な資本を持っているかどうかの指標として、金融商品取引法では「自己資本規制比率」が定められています。暗号資産交換業者はこれを毎日計算し、120%以上の維持義務が規定されており、月次で自主規制団体に報告し、四半期ごとに公表もしています。120%を下回る場合は、当局により業務停止処分を受けることもあります。また、資金決済法では「財務健全性指数」として同様の対応を求められています。

このように国内においては、万が一取引業者が破綻状態に陥っても、顧客資産が守られるための体制が整っており、顧客資産保護について日本は世界的にも整備が進んでいることが今回再評価されています。