踏切愛その1 - 厩道踏切、青山街道踏切

踏切が好きって変ですか?

またまた突然だが、私は踏切に強く惹かれている。写真も好きなので、飲み屋で渡す角丸ピンクの名刺には、「踏切写真愛好家」と書いてある。これで15分は話がもつ。

さて、どうして踏切に惹かれるのかというと、一線を越えたいのに、越えられないということだろう。人生には、よくあるよね。「あそこに行けば幸せになる」というのがはっきりわかっているのに、遮断機が下りていて、渡れないこと。

そう。あの「カンカンカン」という警報機の鳴き声と、無情にも遮断機が下りてくるさまに惹かれるのだ。特に、晴れた夜は警報機の赤い色が目立ってなおよい。また、電車の最後の車両から「逆かぶりつき」で見ていると、列車が通ったあと、遮断機が無機質に上がっていく光景も素敵である。東京近郊では踏切が少なくなったとはいえ、まだまだ個性的なものがある。そこで、今回は趣向を変えて、私の心の友、踏切の名所を紹介しよう。

代々木駅近辺にある山手貨物線2つの踏切

単純な踏切よりも、複数の路線が交差している場所にある踏切の方が絵としてはよい。東京で身近なのが、代々木駅近辺にある山手貨物線2つの踏切。まず、ここから紹介しよう。時間がある人は、エンパイヤーステートビルを彷彿とさせる「ドコモタワー(NTTドコモ代々木ビル)」を新宿方面から目指して歩いていくとよい。明治通りの千駄ヶ谷五丁目の交差点を右に曲がり、小道をドコモタワーを右手に歩いていくと、JR代々木駅の東口に至る。そのまままっすぐいくと、山手貨物線(埼京線)の1つ目の踏切「厩道踏切」に着く。

踏切の手前は佐世保バーガー店なので、ここでハンバーガーを食べるのも一興だ。山手貨物線といいながら、貨物線よりも、埼京線や湘南新宿ラインの電車が通ることが多い。踏切を渡って、いったん代々木駅方面に行き、左手の方向に山手線のガードをくぐっていくと、もう1つの山手貨物線の踏切にたどり着く。これが「青山街道踏切」だ。向かって左手に目をやると、中央線のガードが曲線を描きながらすぐそばを通っている。二つのガードと貨物線の踏切。踏切を通るのは貨物列車から電車へとかわったが、「昭和」の匂いがぷんぷんして心が救われる。

忘れられたかのように存在する、目黒・長者丸踏切

山手線貨物線の踏切は、目黒、恵比寿間にも存在する。ちょうど山手線と山手貨物線とは交差する場所にあって、両方を横切る小道が、山手線はガード下、山手貨物線では、踏切になっている。この踏切が「長者丸踏切」である。

目黒駅東口ターミナルから、目黒通りを白金方面に少し行った小道を線路沿いに歩いていく。しばらく行くと、「白金桟道橋」というアーチが美しい跨線橋を左手に見る。よく見ると、アーチになっている部分は山手貨物線をまたぐエリアのみである。橋を渡らずに、そのまま歩いて降りていくと、左手に山手線をくぐる小道があり、ガードの先には、小さい踏切が鎮座している。ここはちょうど谷間のようで、この踏切の恵比寿側で、山手線は山手貨物線をまたいでいく。踏切を渡り、山手貨物線を走る湘南新宿ライナーや成田エクスプレスを見ながら、交差する山手線の電車をボーっと見る。こういうのんびりした光景が幸せなのかもしれない。

JRをまたぐ京浜急行と道路を横切る踏切

東京で印象的な踏切をもう1つ挙げておこう。JRの踏切ではなく、京浜急行線の踏切である。品川方面行きの京浜急行の電車は、北品川駅を過ぎると第一京浜を横切る「京急品川第一踏切」を通過し、八ツ山橋の脇の鉄橋でJR線を越える。この踏切と跨線橋との組み合わせが最高にいい。快速特急でも普通列車でも、この場所を電車が通るときは、徐行。横浜から品川に行くときは、この踏切を渡り、夕闇に浮かび上がる鉄橋を見ながら、品川駅に着くのがとっても楽しみだった。そして、京浜急行線のガード下にあるラーメン街に立ち寄るのが生きがいだった。

このほかにも、紹介したい踏切はたくさんある。読者のみなさんの近くにも踏切はたくさんあるだろう。ぜひ、読者ご推薦の踏切を紹介していただきたい。いつかきっと、そこを放浪して写真を撮っている上杉さくらがいることだろう。