3月29日のイギリス議会下院で3度目となるEU離脱案の採決が、反対多数で否決された結果、もしも議会が改めて離脱案を承認しなければ4月12日(今週の金曜)にも、合意なき離脱になる可能性が高まっています。

EUのトゥスク大統領は、同日、急遽4月10日にイギリスの離脱問題を協議する臨時EU首脳会議を開くことを表明しました。

さらに、4月5日、トゥスク大統領は12カ月の離脱延期を提案した一方、メイ英首相は6月30日までの延期をEUに要請しましたが、未だ流動的です。

つまり、かなり緊迫した状況になっているということです。

リスク回避の円買いが、マーケットで定着していますので、合意なき離脱のような、未曾有のリスクが発生すると、強烈な円買いになる可能性は極めて高いと思います。

しかも、イギリスの合意なき離脱によって、ドミノ倒し的に、ドイツ銀行のCDS問題(※)や、イタリアの財政問題や、ギリシャなど、他の問題へも波及する可能性があり、2008年9月のリーマンショックあるいはそれ以上の大惨事になる可能性があります。

(※)ドイツ銀行のCDS問題

リーマンショックの時に、円で何が起きたか、意外と具体的には知られていませんが、大変なことが起きました。 つまり、ドル/円は22円、ユーロ/円は46円、ポンド/円は80円、豪ドル/円は38円、NZD/円は34円の円高に2~5カ月ぐらいでなりました。

それぐらいのスケールあるいはそれ以上で、かつより短期間に強烈な円高に、この金曜以降見舞われるかもしれないということです。

ですので、ここからは、最高レベルの警戒体制で臨まなければなりません。

リーマンショック時のドル/円、クロス円の超円高は、実際のチャートでご覧になったほうが実感が湧くと思いますので、以下ご覧ください。

  • ドル/円 月足(22円円高)

  • ユーロ/円 月足(46円円高)

  • ポンド/円 月足(80円円高)

  • 豪ドル/円 月足(38円円高)

  • NZD/円 月足(34円円高)

しかも、リスク回避は、ドル高円高ですから、ドル/円は下がるわ、ユーロ/ドルは下がるわ、ポンド/ドルは下がるわ、クロス円は下がるわという、いわばナイアガラ(全部落ちる)のような状況になると思います。

どんな少額のポジションでも、いずれかの通貨ペアでロングにしていたら、多大な損失を被る怖れがあります。

私は、決して、マーケットを煽るつもりはありません。

それぐらいの警戒をしておいて、なにもなければ、それは良かったということで済みますが、もしも油断していて実際に大惨事に見舞われたら、とんでもないことになりますので、その点は、十分ご理解いただきたいと思います。

なぜなら、最終的に、自分の身を守れるのは、自分しかいないからです。

有事では初動(最初に起こす行動や動作)が大事だと思います。

つまり、まだマーケット参加者の多くが気づいていないか、あるいは気づいていても大事(おおごと)にはならないだろうと油断している時に、一番素直に相場は動きやすいと言えます。

逆に申し上げれば、この動き出したばかりの相場に乗ることが、大きな利益につながるとも言えます。

この初動は、もちろんリスクは高いですが、マーケットの大勢がついてきていない分、チャンスも大きいと言えます。

有事の相場は、ロスカットが集中することで、急騰・急落をします。

実は、このロスカットに順張りで乗ることが大切で、これが短時間に利益を出すチャンスです。

しかし、たとえば、いったん下げてしまうと、マーケットは遅まきながら、この下げに乗り遅れまいとして、なにをするかと言えば、戻り売りです。

この戻り売りは、初期の段階ではうまくいくこともあります。

ただし、時間の経過とともに、戻り売りをするマーケット参加者は増え、相場は下がりにくくなり、むしろ、戻り売りで積み上がったショートポジションのために相場が反発して、儲かるどころか損失を出しやすくなります。

したがい、有事の初期段階で方向はこっちだと思ったら、まずは順張りで動いてみることが大切だと思います。

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら