働くママやパパにとっては欠かせない存在、学童保育。自治体が設立する公設に加え、特に首都圏で近年増加している民間企業などが運営する民間学童がある。ここでは、特徴的な学童保育を紹介。進化している学童保育の"今"をお届けする。

東京・東雲にある「キッズベースキャンプ豊洲・東雲」

東京都江東区にある民間学童保育「キッズベースキャンプ豊洲・東雲」は、子育て世代の流入が著しいと言われているエリアに立地する。「キッズベースキャンプ」は東急グループの企業が運営しており、東急線沿線をメインに東京都内と神奈川県内で24施設を展開している。

「キッズベースキャンプ豊洲・東雲」の入る「東雲キャナルコート」は人気のUR。近隣に大型スーパー、医療機関、音楽教室や知育教室もあり子育てタウンとして充実している。写真右は、クライミングコースのある保育室。部屋はここのみで、宿題もおやつも遊びもすべてこの大空間の中で行われている

「キッズベースキャンプ豊洲・東雲」のドアを開けると、まず目に入るのが4mはあろうかという高い天井と1年生から6年生まで30名ほどの子どもたち。そしてひときわ異彩を放つのが、壁面に広がるクライミングコースだ。小学1年生の女の子も垂直な壁をスルスルと登っていく姿に驚く。

こんなハードなクライミングコースも子どもたちは全身と頭をフル稼働させて登っていく。クライミングの検定を設け、どの学年の子でも楽しめるようにした。上級になると使えるホールド(石)の色が限定され攻略が難しくなる

同施設では一般の学童同様、宿題をしたりおもちゃ遊びをしたりも可能だが、その脇でクライミングにチャレンジできるのが面白い。クライミング中は万一落ちても危なくないよう周囲を仕切り、床には厚手のマットを用意。「キッズコーチ」と呼ばれるスタッフ(学童支援員)が必ず補助に付き、安全には気を配られていた。

それにしても、なぜ学童にクライミング施設なのか。「この施設のオープン時(2007年)は、ちょうど文部科学省の調査で子どもの運動能力の低下が指摘されていた頃でした」と話すのは広報担当の三沢敦子さん。

「学童で何か対策をとれないかと考え、昔は木登りなど、よく"よじ登る"遊びをしていたなというところから、クライミングに着目しました。クライミングは運動能力だけでなく、登るルートを判断することで思考力を育むこともできます。また個人に合わせてレベルを選べるため、異学年が集う学童保育に適していると思いました」とのこと。もともと、店舗用の物件で天井が高かったという好条件も重なり、採用に踏み切ったという。

壁を登る子どもたちの様子を見ていると、想像以上に集中している。両手でホールド(石)をつかみ片足ずつ足をかけ、自分の身体を引き上げる。そして次にどこに手を伸ばすか考える。確かに全身を使って遊んでいるうちに体力と知力、両面での発達が期待できそうだ。

近年、共働き夫婦の増加に比例して、民間学童がスタンダードになりつつある。一昔前まで学童保育といえば公設のものがほとんどで、預かる学年も低学年までというのが多かった。一人で留守番ができるようになる年齢までの"一時しのぎ"という意味合いが強かった。しかし今では、「年間1600時間にも及ぶ放課後や長期休みの時間を有意義に過ごしてほしい」「ただの留守番はさせたくない」と、あえて民間学童を選ぶ家庭も増えているという。

習い事への中抜けOK、1日単位のスポット利用も

昔ながらのボードゲームやトランプ、将棋でも遊べる。コーチも子どもたちと一緒に遊ぶ

「おかえりなさーい! 」。背中のリュックからテニスラケットをのぞかせた男の子が帰ってくると子どもたち全員が声をかけた。キッズベースキャンプでは預かり時間中に習い事への"中抜け"が可能だ。「キッズコーチ」(学童支援員)が、誰が何曜日に何の習い事かを把握していて、行きそびれのないよう声をかけてくれる。希望すれば送迎までお願いできる。

子ども達の学校は近隣6つの公立校、私立や国立小などバラバラだが、みんな仲良く活発に遊んでいる。時にはコーチも輪に入り遊びを盛り上げる。こんな和気あいあいとした雰囲気なのだから、常に固定メンバーなのだろうと思ったのだが、毎日通う子ばかりではないという。週2~3日、中にはその日だけのスポット利用の子もいるらしい。入所条件に親が就労中か否かは設けていないので、専業主婦でも子どもを預けることができる。十人十色の利用方法があるようだ。

昔は親の就労形態によって、学童へ行ける子と行けない子の間に明確な線引きがあった。だが今では親が共働きの子も、そうでない子も同じ習い事へ行き、同じ学童で遊ぶことができる。仕事をしていても子どもの習い事をあきらめなくていい。仕事以外の用事のある時も気軽に子どもを預けられる。学童は「常に大人の目が届く」「放課後の安全な居場所」になりつつある。

後編となる次回は、安全に対する配慮や保護者の生の声などをお届けする。