独身女性に対し、みなさんはどんなイメージを持っていますか? 独身の中でも、「結婚したいけれど、結婚できない女」となると、そのイメージはどう変わるでしょうか。

「結婚したいけど、できていない」。そういう女性、つまり私自身のことを考えると、「世間のみなさんからは"かわいそう"と思われているんだろうな~」「いや、35も過ぎて結婚したいのにできないとか、笑われてるかもしれない」と思います。

「結婚したいのにできない」という悩みは、特に女性の場合、「女としての魅力がない」と悩んでいるのに近いことだと思われがちです。ですから、その女性が十人並み以上の容姿で、年齢もそこそこ若ければ、「女としての魅力がないわけじゃないんだから、結婚したい意志が本当にあるならできるはずだ!」「できてないのは覚悟や思いきりが足りない」「高望みしすぎなんじゃないか」などの言葉を浴びせられることになります。

本当につらいのはそんなことじゃない

でも、実際に自分が「独身でつらい」と感じるのは、同情されることや嘲笑されること、「自分には女として魅力がないんじゃないか」「結婚したい相手と思われるような魅力がないんじゃないか」と思うことではありません。もちろん、それもつらくはあるのですが、本当に結婚したい女がつらいのは、もっと大きなことなのです。

それは、「こんな人生でいいのだろうか」と自分に問い直すことです。

人は誰も、子供の頃から自分の「この先の人生」に漠然としたイメージを抱いています。夢はなかなか叶わないし、昔漠然となりたいと思っていた職業に必ず就けるとも限らない。そんな、諦めの連続の人生の中で、「結婚し、ささやかな家庭を築く」ことが、最後に残った実現可能な夢だという人もいるでしょう。

人生は一度きり。後悔しない人生を送るはずが、ふと日曜の夜に、団らんも何もない一人暮らしの部屋でボーッとしていて、「40歳までに子供2人産んでる予定だったのに、結婚もしないで子供も産まないままここまで来てしまった」「私の人生、こんなんで本当にいいんだろうか」「独身時代はモラトリアムのつもりで、『結婚したらちゃんとしよう』なんて思って、ちゃんと生活しないでいったい何年経ったんだろう……」などと考えてしまうと、「自分の人生は思いっきり間違った方向に来ているのではないか?」という、激しい後悔に襲われそうな問題と、『笑点』のテーマをバックにご対面してしまうはめになるのです。考えるな、考えたら死ぬぞ……!

「結婚していない」という状態の女性の中には、「こんなに長く、結婚していない状態の人生を続ける気はなかった」とか、「結婚していない人生が、どうしても充実していて幸せなものだと思えない」という、大きな人生の悩みを抱えている人もいるのです。中には、100社受けても内定が出ない就職活動中の学生のような気持ちになっている人もいます。

私は、自分自身はわりと楽しく充実した独身生活を送っていると思っていますし、自分の人生は、今のところなかなか上出来なんじゃないか、という気持ちでいます。けれど、やはり時々思うんですよね。結婚や、新しい家族といった、濃密なコミュニケーションの輪を築いていない自分の人生って、もしかしてすごく大事な部分が抜け落ちているのでは? と。

そういう時に感じる、「人としてどうなの?」という気持ちは、「女としてどうなの?」という気持ちより、ずっと重く、こたえるものがあるような気がします。

<著者プロフィール>
雨宮まみ
ライター。いわゆる男性向けエロ本の編集を経て、フリーのライターに。その「ちょっと普通じゃない曲がりくねった女道」を書いた自伝エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を昨年上梓。恋愛や女であることと素直に向き合えない「女子の自意識」をテーマに『音楽と人』『POPEYE』などで連載中。

イラスト: 野出木彩