監視カメラや防犯グッズも身近になった現代ですが、物騒な事件が後を絶ちません。一人ひとりが防犯知識を身に付け、いざという時に役立てられるようにしなければ。

ボディガードと探偵会社の無料紹介所「ボデタンナビ」代表の加藤一統(たかのり)さんに、最新防犯事情を聞きました。

  • 自撮りの危険性 ※画像はイメージ

個人情報を公開しないことは基本中の基本

今回は、個人情報の守り方やデジタルストーカーの恐怖がテーマです。コロナ禍による在宅勤務やテレワークの普及で、家庭用のシュレッダーがよく売れているそうです。郵便物や書類など、紙ごみを捨てる時は個人情報を読めなくすることは、防犯の基本として良く知られています。

――個人情報保護には、どんな問題意識を持つべきでしょう。また、最近増えている相談内容は何でしょう?

加藤氏: 個人情報は、自分だけ守っても、取引先や交友関係の人がないがしろにしていては意味がありません。とはいえ、できることはなんでもやり、身体に染み付くぐらいの習慣にしておくことが必要ですね。

「ごみは『誰が見てもごみ』にして捨てる」「女性の一人暮らしを感じさせない柄のカーテンにする」などは基本中の基本です。車にエアバッグを装備したから事故をしても安全というわけでない、とはいえエアバッグはあった方がいいというような考えです。

普段から警戒している人、警戒している雰囲気を出している人は、狙われにくいという事実はあると思います。極論のようなことを言うと、注意散漫な人は危機感を持った方がいいです。歩きスマホなどは隙だらけですし、会話の内容から個人情報がダダ漏れで、もっての外です。

SNS時代はデジタルストーカーに注意

最近は、一般の人が顔写真や本名を出して情報を発信することが多くなりました。情報の信頼性を上げられる反面、投稿写真から住所などの個人情報が特定される恐れもあります。顔写真の瞳に映った景色から自宅を特定されたアイドルが、強制わいせつ致傷被害にあったという事件もありました。

女性はもちろん、男性もデジタルストーカーには十分注意したいところです。InstagramなどのSNSやYouTubeなどの動画サイトが発展した現代ならではの注意点について聞きました。

――ご自身も、ブログやYouTubeで情報発信をされています。加藤さんは屈強なボディガードで、自分が標的にされることはあまりなさそうですが、気を付けていることはありますか?

加藤氏: 私は本来、「ネット上に顔をさらすなんてもっての外」という考えです。ところが、最近は、各コミュニティーで発信力を持つ個人、つまりインフルエンサーという存在が影響力を高めています。彼ら、彼女らは顔や個人情報を出すことがビジネスになるため、一般の方もそうしたことに抵抗感がなくなったという傾向はありそうです。

Twitterで悪意のあるコメントを時々受け取ることはありますよ。いわゆるクソリプですね。そういう時は、「ごめんなさい、勉強不足で」「なるほど、そうなんですね。今後とも見守ってください」など、無難な言葉でやり過ごすようにしています。50歳を過ぎて、ネットで叩かれると落ち込むことはありますが、命を絶つほどではありません。ただ、若い方にはつらいと思います。

ストーカー被害は遠い話ではない

警察官や自衛官出身の人が多いという、ボディガードや探偵の世界。加藤さんは一般企業勤務時代、たまたま友人と雑談したことがきっかけでセキュリティー会社に就職したのがきっかけで、この世界の人になって25年。

今も昔も、多いのは人間関係のトラブル。特に、いわゆる愛情問題のようです。

――やはり、別れた相手とのトラブルが多いのでしょうか?

加藤氏: そうですね。別れたら、会って話す理由も義理も基本的にはありません。それでも、どうしても会わなければならない約束がある時などに、依頼を受けてボディガードとして気配を消してそばに待機することがあります。

それから、「あいつは俺に気がある」といった、根拠のない思い込みによるストーカー被害もあります。例えば、「何度電話しても出ないのは、何か理由があるだけなんだ(本当は出たいはず)」という見当違いの考えから、執拗に電話をし続けるようなことがあるようです。

ストーカーなどの事件は、遠い世界の話ではありません。このような事件に巻き込まれないよう、普段から防犯を意識し、実際の被害を受けたら「証拠になるもの」を残し、事態が深刻になる前に警察に相談しましょう。

取材協力:加藤一統(かとう・たかのり)

暴犯被害相談センター理事
1995年より民間警備会社で身辺警備(ボディガード)に従事し業界歴25年。およそ900件の警護依頼を請け負う。