資生堂は、視覚障がい者が自身で簡単に実践できる化粧法を実習で学ぶ「ガイドメイク体験会」を9月18日に埼玉県立特別支援学校 塙保己一学園で開催した。約90分間にわたって実施された本体験会には、同高校普通科の3年生10名(男性3名 女性7名)が参加。スキンケア、ベースメイク、ポイントメイクの方法や上達のコツが伝授された。

「ガイドメイク体験会」とは

「ガイドメイク」は、視覚に障がいのある方が自身の手指を顔に当てて「ガイドライン」にし、それに沿ってスキンケアからポイントメイクアップまでを行う化粧法。視覚障がい者団体の協力のもと、資生堂が当事者の意見を取り入れながら独自に開発したもので、2017年から試験展開を始め、2019年から全国で本格展開を開始した。

「ガイドメイク」のネーミングには視覚機能に応じたメイク法をガイド(案内)し、メイクによって人や社会とのつながりへとガイドする、といった意味合いが込められているという。

  • 9月18日に埼玉県立特別支援学校 塙保己一学園で開催された「ガイドメイク体験会」

    9月18日に埼玉県立特別支援学校 塙保己一学園で開催された「ガイドメイク体験会」

これまで視覚障がい者団体や医療機関等と連携し、依頼に応じてセミナーを全国で開催してきた同社。全国の盲学校との連携を深め、今年8月7日には大阪府立大阪南視覚支援学校で「ガイドメイク体験会」を先行開催した。

性別を問わず学生を対象にした美容セミナーとして、ガイドメイクを体験できる機会提供を全国で取り組み、このほど埼玉県立特別支援学校で初めて実施される運びとなったという。

  • 資生堂スタッフが一つひとつの化粧品の特徴や使い方、使う部位や付け方・伸ばし方などをレクチャーし、生徒も実践する

    資生堂スタッフが一つひとつの化粧品の特徴や使い方、使う部位や付け方・伸ばし方などをレクチャーし、生徒も実践する

自身で簡単に実践できる化粧法のコツを掴んでもらうため、本体験会では一つひとつの化粧品の特徴や使い方を説明し、化粧品を使う部位や付け方・伸ばし方などを練習して、実習を行うという流れ。

資生堂のソーシャルエリアパートナーが講師として全体の進行を行うほか、各生徒・テーブルを担当するサポーターとして、資生堂スタッフが各生徒に具体的なアドバイスを行っていく。

また、今回の講座は男女別々の教室で行われるかたちだったが、スキンケアなど一部の内容は男女共通している。

「マキアージュ」などの代表ブランドを使用

「ガイドメイク」ではスケールなどを触って化粧品ごとの使用量を逐一確認しながら、眉や唇のかたちに自身の手指を沿わせて「ガイドライン」にし、化粧がはみださないようにしてメイクアップを行っていく。

視力や視野など実際の見え方は生徒一人ひとり異なるが、基本的には自分の手指を動かしてその感覚を頼りとする。そのため、実習前の練習の際は各テーブルの担当者が時に手を添え、手や指の位置・角度などを丁寧に確認しつつ進められた。

  • 女子生徒の様子

    女子生徒の様子

そうしたならではの特徴がある一方、基本的なスキンケアやメイクアップの内容は、一般的なメイクアップセミナーや身だしなみ講座で実施されるものと大きな違いはないようだ。

使用する化粧品や化粧用具は国内で一般販売している商品が選定されており、本講座では「dプログラム」「マキアージュ」「インテグレート」など資生堂の代表的なブランド製品を扱った。

  • 女子生徒の講座で使用された化粧品

    女子生徒の講座で使用された化粧品

参加者の生徒たちは、最初にアイシャドウをつける部位となる「アイホール」や「フェイスライン」、「小鼻」や「口角」など顔の各部位を自身の手で触って確認。「dプログラム」のクレンジングローションと化粧水、乳液の3品を使ったスキンケアを行った。

女子生徒のメイクアップの講座は、化粧下地とパウダリーファンデーションを使うベースメイクと、アイブロウ、アイシャドウ、チーク、口紅を使うポイントメイクという構成。ベースメイクでは「マキアージュ」の化粧下地とパウダリーファンデーションを用意し、ポイントメイクには「インテグレート」のアイシャドウやチークなどを使用した。

  • ポイントメイクを実践

    ポイントメイクを実践

顔の印象を左右する大切なパーツで「顔の額縁」ともいわれる眉を描く際は、「眉頭」「眉山」「眉尻」の位置を確認。利き手と反対の手の人差し指でガイドしながら、ペンシルで眉を描くようにすると、簡単にかつ自然でキレイな仕上がりになるという。

  • アイブロウメイクを実践している様子

    アイブロウメイクを実践している様子

また、口紅をつけるときも同様に、利き手と反対の人差し指を唇に沿わせて、その輪郭を確認しながらガイドにしていく。女子の講座では担当者と相談しながら、それぞれの肌の色や好みに応じて、チークや口紅などのカラーを選ぶシーンなども見受けられた。

  • カラーも自分でチョイス

    カラーも自分でチョイス

メイクアップがより身近に

一方の男子生徒も、スキンケア後のベースメイクとして「SHISEIDO MEN」ブランドのBBクリームの使い方など、メイクアップの方法を学んだ。

  • 男子生徒の様子

    男子生徒の様子

ポイントメイクでは女子生徒と同じように指でガイドしながらインテグレートのアイブロウを使って眉周りを整え、「SHISEIDO MEN」シリーズのリップクリームを使用。「アネッサ」による紫外線ケアなども実践していた。

  • 男子生徒もメイクアップ方法を実践

    男子生徒もメイクアップ方法を実践

メイクアップ後は医薬部外品である「アデノゲン」ブランドの「薬用スカルプトニック」を使い、頭皮ケアを行ったのも男子生徒独自の内容だ。

  • 男子生徒は頭皮ケアも学んだ

    男子生徒は頭皮ケアも学んだ

先端のノズルを頭皮に近づけて8~10カ所、1秒ずつスプレーするようにして地肌に塗布。手のひらで押さえることでパチパチと泡が弾けて頭皮の血行が良くなるというもので、自分でできる効果的なヘッドマッサージ方法なども伝授され、最後はワックスでヘアセットも行った。

  • 男子生徒の講座で使用された化粧品

    男子生徒の講座で使用された化粧品

最初はやや緊張気味の面持ちだった生徒も、メイクが進むにつれて表情も柔らかくなり、男女ともに最後は自信に溢れる笑顔を浮かべていた。

参加した女子生徒は「今までメイクをしてもらうことはありましたが、自分でメイクするのは初めてでした」と語り、次のように感想を述べた。

「ガイドメイクと聞いて、もっと特殊なメイク道具とかを使うのかなと思っていたんですが、近くのドラッグストアで普通に手に入るものだったので、ガイドメイクがより身近になりました」

  • メイクが進むにつれて和やかな雰囲気に

    メイクが進むにつれて和やかな雰囲気に

化粧法のコツをつかみ、日々の生活に取り入れて化粧に慣れることがメイクの上達につながるとのことで、資生堂の担当者は「メイクはやっぱり簡単ではありませんが、それはみんな一緒です。メイクは練習ともいわれておりますので、今後の生活で少しでも参考にしていただけたらなと思います」と、メッセージを送っていた。

スキンケアやメイクアップ、紫外線ケアやヘアケアといった身だしなみと、商品の使い方のコツが一つひとつ丁寧に伝えられた資生堂「ガイドメイク」体験会。首都圏では10月10日に横浜訓盲学院理療科での開催を予定している。