これまでにも消費税は税率が3%から5%へ、5%から8%へと引き上げられてきました。そして、2019年10月には8%から10%への引き上げが予定されています。このときの引き上げは、●年▲月1日からというように「いつから」という適用開始日が法律で決まっています。
そうはいっても、昨日まで8%だったものが今日から10%になるということは、事業者にとっても消費者にとっても混乱を招くケースが想定されます。そのような事態を未然に防ぐため、一部の商品・サービスの取り引きには税率改正をスムーズに行うための「経過措置」が設けられています。今回は、消費税の経過措置について説明します。
そもそも消費税は、日本国内で事業者が事業として対価を得て行うモノやサービスなどの取り引きにかかるものです。とはいえ、一部のモノやサービスに関しては、現物やサービスを受ける時期とお金を払う時期にズレがあることがあります。このズレは、消費税率が変わったときの税処理上の不都合を招く恐れがあります。それをスムーズに処理するための法的措置が「経過措置」なのです。
仮に2019年10月1日に8%から10%に変わるとして考えてみましょう。
例えば、スーパーで食品を買い物するケースでは、9月30日に購入すれば消費税率は8%、10月1日に買い物をすれば10%となります。通常、スーパーで食品を買い物する際には、商品とお金(対価+消費税)をその場で引き換えますから特に不都合はありません。
ところが、映画の前売り券などで、買ったのは9月30日以前でありながら、実際に映画を観たのは10月1日というような場合では、買ったときに適用されている税率は8%で、その観賞券を使用したときの税率は10%というような事態が起こりえます。
このとき、お金を払ったときの税率か、実際にサービスを受けたときの税率かで差が生じますね。この2%の違いによって、お金を払う消費者にとってはもちろん、役務を提供する側の事業者にとっても不都合が出てきます。そこで、一定の取り引きにおいては税法上の経過措置が設けられているということなのです。
経過措置が適用される取り引き
では、モノ・サービスの提供と対価の支払いがズレれば何でも経過措置が適用されるのかといえば、そうではありません。国税庁は2019年10月1日から適用される税率引き上げに伴い、経過措置が適用される取り引きを次の10種類として掲げています。
1.旅客運賃、映画・演劇・競馬場・競輪場・美術館・遊園地等への入場料金等
2.電気・ガス・水道・電話・灯油に係る料金等
3.工事や製造、ソフトウェア等の請負契約
4.資産の貸付け
5.冠婚葬祭のための施設やサービスの提供
6.予約販売に係る書籍等
7.特定の新聞購読
8.通信販売による取引
9.有料老人ホームに関する介護サービスの提供
10.家電リサイクルの再商品化に関する取引
それぞれ、契約した時期や提供を受ける時期に関する規定はありますが、該当するものについては10%への税率引き上げ後においても改正前の8%が適用されることになっています。