「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。

お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。

前々回(第161回)および前回(第162)では、自治体が実施する「お試し移住」の制度をご紹介しました。今回は、自治体が用意している住宅に滞在するのではなく、民間の宿泊施設等を利用した場合に利用できる制度(補助金の支給等)をご紹介します。自治体が用意してくれた住宅が広すぎて利用しきれない、または、ビジネスホテル等、利用することに慣れたところを拠点として移住について情報収集したいと思っている方には、適した制度だと思います。

■千葉県富津市「ステイふっつ移住促進事業補助金」

<対象者>
下記の【1】~【5】すべてに該当する人

【1】市外に住所がある45歳以下の人
【2】富津市への移住を目的とする活動のために、市内宿泊施設に宿泊する人
【3】富津市が実施する市内案内に参加する人
【4】滞在期間中に担当課の職員と移住相談を行い、アンケート等に協力できる人
【5】富津市暴力団排除条例に規定する暴力団員等または暴力団と密接な関係ではない人

<補助対象活動>
下記の【1】~【3】のいずれかに該当する活動

【1】市内で住居を探す活動 【2】市内で仕事を探す活動 【3】移住活動の1つとして富津市の文化、歴史、風土、気候、生活環境等を知るための活動

<補助金額>

【1】実際に支払った宿泊費の2分の1以内で、1泊につき1人5,000が上限
【2】1世帯につき4人分が上限(5,000円×4人=2万円まで)
【3】同一年度内に2泊分が上限(4人分の場合:2万円×2泊=4万円まで)

<申請の流れ>

●移住活動の前日までのスケジュール
移住コンシェルジュへの移住相談→見学ルート、宿泊先の決定→宿泊施設の予約→補助金交付申請書の提出→補助金交付決定通知書

●移住活動当日のスケジュール
移住コンシェルジュによる市内案内→案内後の感想聞き取り→宿泊・移住活動

●移住活動後のスケジュール(活動から30日以内) 実績報告書の提出(アンケート、領収書添付)→補助金交付額確定通知書→補助金交付請求書の提出→補助金入金

注意点として、申請する前に、移住コンシェルジュによる移住相談が必要となる。

参考:千葉県富津市のホームページ

■群馬県渋川市「渋川市移住希望者お試し滞在費支援補助金」

<対象者>
下記の【1】~【7】すべてに該当する人

【1】渋川市への移住(転勤または結婚による転入を除く)を検討中であり、移住にむけた準備として宿泊する人
【2】市内の宿泊施設に2連泊以上する人
【3】住所登録地が群馬県外にあり、過去においても群馬県内に住所登録をしていない人
【4】過去に当該補助金の交付を受けたことがない人
【5】当該申請に係る滞在期間中に、担当課の職員と面談を行える人
【6】渋川市のアンケート等調査に応じることができる人
【7】暴力団員による不当な行為防止等に関する法律に規定する暴力団員ではない人

<補助対象となる経費> 補助対象となる経費は、渋川市を滞在した期間に要した宿泊費。ただし、国や県等の補助金と併用する場合は、同補助金を差し引いた額を補助対象とする。

<補助金額>
・大人(中学生以上) 5,000円
・こども(小学生)  2,500円(未就学児は、補助の対象外とする)
ただし、補助対象の経費が、補助金額より少ない場合は、かかった経費の金額を上限とし、補助金額の合計は、2万円を上限とする。

<補助金申請の流れ> ●申請:補助金の交付を受けようと希望する人は、滞在期間初日7日前までに所定の書類を提出する。
●面談:渋川市内でのお試し滞在活動期間中に担当課の職員と面談を行う。
●報告:滞在の最終日から30日以内、もしくは申請年度末日のいずれか早い日までに、所定の書類を提出する。
●請求:所定の書類を提出することにより、利用者が指定した口座に補助金が振り込まれる。

参考:群馬県渋川市のホームページ

■終わりに

2つの自治体の「宿泊施設の滞在費に対する補助金」に関する制度をお伝えしましたが、どちらにも言えることは、観光目的での利用は禁止ということです。あくまでも、移住を真剣に希望している方が対象となります。したがって、滞在期間中に自治体の担当職員と移住相談や面談を行ったり、住居や仕事を探すことをしたり、移住に向けて具体的に動くことが前提です。また、「民泊」と言われる宿泊施設は、補助の対象外となる場合もあるため、「民泊」に滞在を希望している場合は、事前に自治体に確認するとよいでしょう。