缶詰博士の黒川氏によると、缶詰に使われる魚の種類が少しずつ増えているそうです。地方の缶詰メーカーでは、とくにその傾向が強いとか。
「缶詰では定番のサバやサンマ、サケが不漁続きなので、今まであまり利用されなかった魚も積極的に使うようになったんです。調理法もアップデートされて、洋風の味付けが増えてますぞ!」
昭和から令和へ
ニシンは昭和のイメージが強い。それもサラリーマンが居酒屋でひとり、塩焼きをつついているイメージが強い。
「あっ、白子が入ってた。ラッキー」などと呟き、ラッキーというわりには肩を丸め、ぼそぼそと箸を運ぶ。そんな陰気さ&レトロ感をまとっているのがニシンである(筆者の個人的感想です)。
それが令和6年になって、華麗に変身した。ガーリックの風味も豊かなアヒージョ缶になったのだ。手掛けたのは岩手県陸前高田市のタイム缶詰であります。
独特の香ばしさ
フタの下には大振りの切り身が整然、かつギュウギュウに詰まっていた。そのサイズが思ったより大きくて嬉しい。
立ち昇る匂いは、ガーリックとオリーブオイル、それとニシン特有の匂いだ。サバやイワシなどと違って青臭くなく、サケのような妖艶さもない。シシャモに近いような、でももっと脂っこいような独特の匂いである。
白く透き通った身
ニシンの身はとても柔らかく、骨にそってフォークを入れるだけで半分に分かれた。持ち上げると腹身のほうが垂れ下がり、自身の重みだけで千切れそうである。
その断面は白く透き通り、まことに美しい。
ミルキーな脂がにじみ出る
かくのごとし。耐熱皿に油ごと移し、芽キャベツとプチトマトを加えて加熱した。お供はライ麦パンであります。
熱々のニシンをほおばると、身がふわっとしていて弾力がある。逆に、冷たい状態で食べると身は引き締まっている。でも肉質が繊細なのはどっちも一緒で、かんでいるとニシン特有のミルキーな脂がにじみ出る。ウマいです。
唐辛子の辛みは穏やか……、と思いきや、食べているうちに顔が熱くなる。一方、ガーリックはわりと控えめ。塩味はちょうどいい。
これまでニシンの缶詰は種類が少なく、味付けは蒲焼きなどの純和風がほとんどだった。それに対してこの新たなニシン缶は、アヒージョの他にトマト煮もある。定番の煮付け(砂糖しょう油味)も、水煮もある。選択肢が多いのはいいことであります。
缶詰情報
タイム缶詰/北海道産にしんアヒージョ缶 180g 399円
同社の直販サイトなどで入手可