この連載も遂に第10回となる今回で最後よ。ということで、ラブ編で締めくくるわ。
ある日、いつもご利用いただく某商社にお勤めの顔なじみのお客さまがご搭乗され「今日会社の後輩も一緒なんだよー、よろしくねー」と、会社の後輩の方を紹介してくれたの。紹介されたそのお方、イケメンでとても爽やか系、誠実そうな印象! 胸が高鳴るのだけれど、その日私はビジネスクラスの担当。そのお客さまはファーストクラスだったので、残念ながらご挨拶だけでおわってしまったのよね。到着して、はい、さようなら。……ま、ここまではフツーにある話。
フライトが終わって一段落、後輩たちと食事に行く約束をして、某ホテルのロビーでの待ち合わせをしてしてた時よ。「あれ? どこかで見覚えがあるお顔! 」。そう、お昼に機内で紹介されたあのイケメンお客さまだったのよ! 声をかけてもいいものかどうしたものか……と悩んでいるうちに、こちらに気付いて話しかけてくれたじゃないの! 「偶然ですね、待ち合わせですか。僕らも今から食事に行くんで、もしお邪魔じゃなければご一緒しませんか」。
たまたま彼がチェックインしているそのホテルで後輩と待ち合わせをし、出会ってしまったわ・た・し! 数あるホテルの中、この瞬間、この場所で巡り会うなんて……。こんな偶然があるかしら。偶然? いいえ違うわ、神さまの思し召し、出会うべくして出会った運命の人。そうこれは運命の神さまのお導きよ!
総勢10名弱で中華レストランへ。すかさず私は彼の隣りの席へ。ビールや紹興酒をたしなみながら会話も弾んでとてもいい雰囲気。そう、彼こそが運命の人と信じて疑わなかったわ、この時点までは。
会話も盛り上がり、連絡先の交換……と思いきや、指になんか光るものが。その瞬間、彼の同僚が「そーいえば子供は元気か? 」と聞いてくるじゃない。は? はぁ~!?!? 子供の話が急に出て、彼も途端によそよそしくなってしまい……。なんなのよ、運命の人なんて、超勘違い。一瞬でシラフに戻った私でした。
イラスト: 伊東ぢゅん子
著者プロフィール
pこ
今から、ん年前、外資系某エアラインに客室乗務員として入社し、5年間国際線勤務。月のうち2/3はフライトのために海外へ。ロングステイのフライトでは、観光やグルメ、ショッピングにいそしむ日々。
ファーストフライトとラストフライトで、コックピットのジャンプシート(補助席)からみた着陸の光景は忘れられませぬ。