吸いたいものも吸えないこんな世の中、ぶっちゃけポイズンである。

いきなりおどけてしまったが、真面目な話、喫煙者にとってはなかなか世知辛い時代だ。タバコを吸う場所がとにかくない。むしろ、そんな状況だからこそ貴重な一服タイムにはこれまで以上にこだわりたいところである。たとえば、美味しい葉巻なんかを吸ってみたり……。

ということで、連載「Barで”最高の一服”を」の第三回目の舞台は、西麻布にあるシガーバー「COHIBA ATMOSPHERE TOKYO」。名物のモヒートと一緒に楽しむシガーは格別だった!

■ニカラグアの葉巻と本場のモヒートでペアリング

COHIBA ATMOSPHERE TOKYOはキューバの葉巻専売公社「HABANOS」がオフィシャルで手掛けるフランチャイズショップ。当然、扱う葉巻はすべて正規品ばかりである。店舗は世界中で展開されているが、記念すべき一号店がCOHIBA ATMOSPHERE TOKYOで、そんな経緯から一部の葉巻好きの間では“葉巻のメッカ”としても知られているという。

この日は葉巻の嗜み方やCOHIBA ATMOSPHERE TOKYOの楽しみ方について、ショップマネージャーの長森雄哉さんに話をうかがった。

長森さんに相談して選んだ葉巻は「ドン・ドゥアルテ」のショート(1,200円)。ニカラグアから直接仕入れている葉巻で、味の良さはもちろん、その優れたコストパフォーマンスもあってデイリーに楽しむ人も少なくないのだとか。

さっそくカッターで吸口を作ってもらい……

火を点けてもらったのだが、この日はライターではなく……

なんと、“シダーの木”で着火してもらえることに。

「基本的に、葉巻の着火はガスライターなら何でもOKです。逆に、オイルライターやロウソクの火だと味が移ってしまうのでおすすめはできません。ツウの人だと、このシダーの木で火を点ける人もいますね。このシダーの木は、もともと25本入りの葉巻が入っているシガーボックスの中敷きだったものです。シダーの木にも葉巻の香りが乗り移っているので、これを使って火を点けると風味を損なうことなく葉巻が楽しめるんです」

なるほど。しっかり理に適っている。それにこういう知識を知っておくと、より葉巻を楽しめる気がする。

ニカラグアの「ドン・ドゥアルテ」の味はというと、芳ばしさと苦味、ピリッとしたスパイシーさのバランスがとても美味しく感じる。

「ニカラグアの葉巻が好きな人は、この独特の苦味が好きという方が多いですね。ビギナーの方だと、もしかしたら最初は『苦いな』って思うかも知れません。でも、3分の1くらい吸うと慣れてきますし、その苦味がやっぱり美味しく感じるようになるんですよね」

そう、この苦味が癖になるのだ。「ドン・ドゥアルテ」を吸った後に、苦味控えめの葉巻を吸ったら、ちょっと物足りなく感じるような気もする。ハマる人にはとことんハマるのではないだろうか。

「この葉巻はキューバ産の葉巻と比べて、巻の圧がちょっと緩めなので吸いやすいんですよね。その分、燃焼温度も上がって苦味が出るんです。なるべく灰を落とさず、灰をラジエーター代わりに空気の入り口を狭めながら吸うと、より美味しく煙を味わえますよ」

ある程度、灰がついていたほうが美味しく味わえるとは……う〜ん、奥が深い。

ここで、お店の名物である「モヒート」を注文。実際に出てきたのがコチラだ。

「モヒートはうちの人気商品です。モヒートで有名なキューバのバー『ラ・ボデギータ・デル・メディオ』と同じ製法で作っていて、どうしても素材は日本で手に入るものにはなってしまうのですが、キューバで飲むモヒートの荒々しさのようなものは意識しています」

実際に飲んでみると、これがとにかく美味い。そして確かにミントの野性味のようなものも感じられる。ミントは沖縄の契約農家から直接仕入れているようなので、その新鮮さがダイレクトにカクテルに反映されているのだろう。葉巻ともよく合う。

「うちのモヒートは少し甘めに作っています。葉巻の苦味が強いので、それがカクテルの甘みとマッチするんです。ミントの爽快感もあってサッパリ飲めるので、ベテランにもビギナーにも大人気のカクテルですね」

続いて、スコッチウイスキーの「ラガヴーリン」のストレートとのペアリングにもトライ。16年ものである。映画やドラマを観ている限り、やはり葉巻にはこんな強めのお酒が合うイメージがあるが、こちらも実際に試してみると……美味い!

「ラガヴーリンはどのバーにもほぼ確実に置いてあるウイスキーで、スモーキーだけどマイルドな甘みもあるのが特徴です。単品で飲んでいるとピートを強く感じますが、葉巻と合わせることでウイスキーのマイルドさが際立ち、口の中でうまくマリアージュします」

モヒートとはまったく違ったアプローチである。むしろ、「葉巻の銘柄が変わったのか」と勘違いするくらい、葉巻の味わいも変わったように思える。葉巻とウイスキー、お互いに強烈な個性を持つもの同士が上手くマッチングすると、驚くほどバランスがよくなるようだ。これは美味い……!

■「COHIBA ATMOSPHERE TOKYO」はカフェ感覚でも利用できる

シガーバーというと、どこか格式も敷居も高いイメージがある。しかし、長森さんによると、COHIBA ATMOSPHERE TOKYOは「カフェ感覚で利用するお客さまも多い」という。

この日は夜に訪問したので店内もムーディーで薄暗いが、土日は午後3時から営業しており、カフェのように利用する人も少なくないのだという。

「シガーバーというと、閉塞的な空間をイメージする人も多いかもしれませんが、ここは雰囲気もラテンチックですし、店内も広くて開放感があるので、そういう意味ではカジュアルに楽しんでいただけると思います。コーヒー一杯のご利用でも全然構いませんし、キューバや中南米では葉巻もとても多くの人に親しまれています。ぜひお気軽にお越しください」

伝統のあるシガーバーでありながら、まったくハードルの高さを感じさせないCOHIBA ATMOSPHERE TOKYO。もし葉巻に興味があるなら、ぜひ本場のモヒートとのペアリングを一度味わってみてほしい。