アメリカン・エキスプレス営業部門の副社長・山中秀樹氏は以前のインタビューの中で、同社の顧客満足度の高い評価の源になっているカスタマー・エクスペリエンスについて、「お客さまの立場に立って考えることの徹底」と話している。

成田国際空港担当の山田香織さん、高宮志穂さん、榎本真美子さん(写真左から)

その結果として、電話、手紙やメールなどで「この営業担当から買ってよかった」というお礼の連絡が届くことがあるそうだが、これを同社では「グッドボイス」と呼んでおり、お客さまのサイドに立ったサービスを徹底する際の一つの結果として重視している。通常、営業という現場でのサービスに対して、このようにお客さまからお礼の電話や手紙をもらうということはなかなか想像しにくいのではないだろうか。そうした中、グッドボイスをもらい続けるアメリカン・エキスプレスの営業スタイルについてレポートしてみよう。

今回は、実際、アメリカン・エキスプレスのセールススタッフの中でグッドボイスを最も多く獲得している成田国際空港担当の山田香織さん、高宮志穂さん、榎本真美子さん、上司の遠藤しのぶ部長に日ごろの活動についてうかがった。

――日ごろ成田空港ではどういった形で新規営業活動をなさっているのですか

山田「たとえば、昨年秋に発売を開始して以来、マイレージカードとして高い評価をいただいているANAアメリカン・エキスプレス・カードの場合ですと、ANAが出発する海外出発便フロアから旅行に出かける方々に、"尾翼"と呼ばれるカード紹介レターを一人一人渡していきます。お客さまにとって、例えばマイルを効率的に貯めることができるなど、ANAアメリカン・エキスプレス・カードのメリットを分かりやすく説明するように心がけています。その結果、興味を持ってカウンターまで詳しいお話を聞きに来て下さる方がいらっしゃいます」

"尾翼"と呼ばれるカード紹介レター

――そんな活動のなかで、どんなときにグッドボイスをお客さまからいただくのですか

山田「私は娘さんが海外にいて、見送りをしたばかりのお母さまに加入していただいたことがあります。その方は、申し込みが終わっても、30分くらい娘さんのことを話してらしたのですが、いろいろお話を聞いてさしあげました。そうしたら、ご自分のブログを通じて、今日、会ったアメックスの営業の方は気持ちのいい方だった。自分も寂しい気持ちが晴れた、といった内容のお礼の言葉を下さいました。そう言っていただけてうれしかったですね」

高宮「私は、契約していただいたお客さまには、必ず、直筆でお礼のお手紙を出しています。ご旅行から帰国されると、カードを契約していただいた方のもとに私からのお礼の手紙が届いており、カードを利用する際、よく間違えること、わかりにくいことなども、もう1度、確認していただけるように配慮しています」

榎本「私は、最初、とにかく契約をしてほしい、多くの人に加入してほしいと自分本位になりすぎて、せっかく興味を持って下さったお客さまにも、自分本位にお話をする場面が多くて、その結果としてお客さまからのクレームが多かった時期がありました」

――それが今では、グッドボイス獲得数1位になっているとか

榎本「そうなんです。これではいけない。もっとお客さまの立場に立って、弊社の商品をご案内をしなければと、発想を転換しました。まずは声のトーンを抑えて、早口にならないように。そしてお客さまの話をよく聞いて、お客さまの目線でお話をしようと心掛けました。また、カウンターを去っていくお客さまには、お客さまの姿が見えなくなるまでお辞儀し続けるようにしました。もしかして途中でお客さまが振り返った時に、こちら側が次の作業をしていたら、満足感が半減してしまうだろうな、っと思ったからです。契約をして下さった方にも、そうでなかった方にも、同じように感謝の気持ちを持ちたいと思ったからです。そうしたら、自然と申込数も伸び、しかも、グッドボイスもいただけるようになったんです。営業場面でも、お客さまにありがとう、と言われ感動してしまう場面も多くなりました」

遠藤しのぶ部長

遠藤「お客さまと気持ちが通じ合うようになるには、やはりお客さまの立場に立ったサービスが基本なんです。お話を聞いてさしあげる、困っていること、疑問に思っていることにお答えすること。ここにいるメンバーはそれを自然とやっていますが、それは、いわばコンサルティングセールスをしているということなんです。そうやってアメリカン・エキスプレスのカードのよさを十分理解していただい上で加入していただくことが、新規営業としての醍醐味ではないでしょうか」

――お客さまに満足してもらう営業体制を作っていくのは大変だと思うのですが、統括してらっしゃる遠藤さんは、日ごろ、メンバーの方にお話ししていることがあるのですか

遠藤「お客さまに、気分よく契約をしていただくことが大切ですから、あえて、グッドボイスをもらおうという考えではなく、お互いが気持ちよく終われるように接客することを指導しています。それが最終ゴールでもあるお客さまの満足につながり、会社の収益に貢献することでもあると話します。そのうえで最終的にグッドボイスをいただいたものに関しては、すべて壁に貼りだし、全員で喜びを共有するように努めています また、営業成績は個人差がありますが、グッドボイスに関しては、お客さまにただしく接していれば誰でもいただける可能性があります」

壁に貼りだされたたくさんのグッドボイス

――グッドボイスを掲示することでどんな効果がありますか

遠藤「他のメンバーがもらったグッドボイスを読むことで学ぶものもありますし、自分もがんばろうというモチベーションにもなります。グッドボイスを共有することによって、各メンバーがまわりのメンバーのよい部分を真似して、それぞれの課題を解決していく上で役立っていると思います。もちろん、その過程では、まわりのメンバーのアドバイスなどもあったと思います。チーム全員がお客さまにどのように満足していただけるかを一緒になって考える雰囲気、そしてそれを実行していく行動力、それが顧客満足度につながっていけばと思っています」

――皆さんのお話しを聞いていると、いかにお客さまのサイドに立ったサービスを心がけ、少しでも満足していただけるかを常に考えているのだとわかります。今日はありがとうございました。