アメリカン・エキスプレスのカードに寄せられる高い顧客満足には、「カスタマー・エキスペリエンス」というコンセプトが息づいている。「顧客第一主義」というのは、企業理念としてよく聞かれる言葉ではあるが、アメリカン・エキスプレスが提供する「カスタマー・エキスペリエンス」は、単なる言葉だけではない。顧客のことをひたむきに考えた結果が行動となって現れる、企業としての真摯さだ。

年会費の安さ、ポイントやマイルが貯まることがカードを選ぶ上で重要なポイントだと思っている人も少なくない中、アメリカン・エキスプレスは世界最大級の旅行代理店としてカード会員の旅行手配を行う専門部門をもち、他のカード会社と異なった「サービス」へのこだわりを持っている。今回は、メンバーシップ・トラベル・サービス クオリティー・トレーニング課 クオリティー・アナリストの安藤浩子氏と、メンバーシップ・トラベル・サービス トラベル・コンサルタントの大久保康隆氏にお話をうかがった。

今回お話をうかがったのは、メンバーシップ・トラベル・サービス クオリティー・トレーニング課 クオリティー・アナリストの安藤浩子氏と、メンバーシップ・トラベル・サービス トラベル・コンサルタントの大久保康隆氏(写真右から)

――アメリカン・エキスプレスのコールセンターでは、お客様を「心」で満足させることをひとつの目標にされているとうかがいました。

安藤 : 私どもといたしましては、アメリカン・エキスプレスのサービスに触れるいかなるシーンにおいても、お客様に喜んでいただき、ご満足いただくことを目指しています。お客様の立場に立ってお客様からのご依頼の一歩先を行く提案をさせていただけるよう、日々研鑽を積んでおります。

最近では、2月に南米チリで大地震が発生しましたが、当時チリに旅行に出かけられていたお客様の安否を確認し、ご家族にお客様のご無事をお伝えしました。また、現地の情報をご提供し、その後の旅行スケジュールの変更のご相談などにも対応させていただきました。「震災が起きた現地では、なかなか最新の情報を得られずにお困りになられているのでは」、「ご家族に自分の安否を知らせたいと思われているのでは」と、お客様の立場に立って考えることで、お客様が望まれるサービスを私どもの方から提案するよう心がけています。

――こうしたサービスは、日々の研修・コーチングなど御社の人材育成の賜物だと思いますが、具体的にはどのようなことをなされているのでしょうか

安藤 : 入社後の研修で業務全般、お客様のニーズについて、アメリカン・エキスプレスが目指すサービスについて学び、その後、OJT(on-the-job training、職場での実務を通じて行う従業員の教育訓練)を通じて経験を積んでいきます。コールセンターでの応対は、クオリティー・アナリストがお客様の真のニーズを理解し解決策を提示したか、説明の分かりやすさや話し方はどうか、トークスピードや滑舌についてはどうかなどウィークポイントをチェックし、改善すべき部分を月1回以上はフィードバックをしていきます。どのコンサルタントが対応しても、お客様にご満足いただき、喜んでいただけるサービスを等しく提供できるようにするためには、とても重要なことです。

大久保 : 私は入社当時、早口になってしまう癖がありましたが、クオリティー・アナリストの指摘を受けることで克服することができました。お客様とのコミュニケーションを、会話の組み立て方、お客様への説明の順番まで第三者にチェックしてもらうことで、我流になりがちな話し方を改善することができました。

安藤 : これ以外にも、ユニークな表彰制度や、ワールドワイドでトップコンサルタントを集めた研修旅行など、モチベーションを高める様々なイベントを用意しています。こうした制度により、コンサルタントのやる気を促すとともに、業務知識を深め、その結果、お客様により喜んでいただけるサービスを提供できればと思っています。

大久保 : 研修制度以外にも、グループを募って勉強会が開催され、私も複数参加しております。お客様にご満足いただくためには、より専門的な情報を身に付ける必要があります。プライベートの合間にホテルのアポイントをとって、見学させてもらうという社員もいます。

――お客様のニーズの一歩先の提案とは、たとえばどのようなものでしょうか

安藤 : たとえば、旅行に出かけようとされているお客様が「ハワイに行きたい」とおっしゃられていても、旅行の詳細をお打ち合わせしていく中で、本当の目的が「ハワイ」ではなく「ご家族の喜ぶ顔が見たい」と思っていらっしゃることに気づくことがあります。そのような場合、お客様に喜んでいただけるもっと良い提案が出来ないかと考える訳です。お客様の気持ちを踏まえ、たとえばお子様が動物好きだったら、動物と触れ合える場所をご紹介するなど、「ご相談いただいたお話の先にあるニーズ」を汲み取って、よりご満足いただけるようなプランの提案や手配をさせていただいています。 電話越しにお客様の表情をうかがうことはできません。ですから、お客様の声のトーンや間ですとか、会話の中に見え隠れするキーワードを汲み取ること、そして、お客様の置かれている状況を自分の事と感じたり、お客様が自分の親族や親しい友人であるかのごとく考え、行動に移すことが重要であることをコーチング時に伝えています。

安藤 : もちろん、お客様によって提供するサービスは十人十色です。忙しいビジネスマンにゆっくりとお話をしたら、かえってご迷惑になってしまうかもしれません。お客様が現在どういう状況で、どういったサービスを必要、または、不要とされているかを見極めていくことも重要です。

大久保 : お客様から以前いただいたお電話の内容なども参考にしながら、応対させていただいております。たとえば、今年からお子様が小学校に通われているという情報を基に「今年から長い夏休みがとれますね」などとお話させていただくことや、成長されたお子様に合わせて、宿泊先でのお子様用のエキストラベッド追加のご提案をしたことがありました。このように、お客様と長いお付き合いをさせていただき、今までの情報も参考にしながらお客様一人ひとりに合わせたお話をさせていただくことが、"アメリカン・エキスプレス"をより身近に感じていただき、結果的に良好な関係を築いているのではないかと思います。

――クレームなどにはどのように対応されているのでしょうか

お客様からのクレームには、まずはお客様のお話をよく聞き、意思疎通で問題がなかったかを確認し、改める点を真摯に受け止め、社内できちんとフィードバックをしております。また、お客様からのご意見は、カスタマーボイスとして役員に伝える制度があります。お客様の貴重なご意見をうやむやにしない、会社として一本筋の通った仕組みがあるため、私どもも会社の代表としてしっかりと受け止めることができるのです。

――こうした日々の積み重ねが功を奏し、お客様からお礼のお手紙がコンサルタント宛に届くと聞きますが。

安藤 : お客様からお礼状をいただき、お客様に喜んでいただけたことが判り、本当に私たちの励みになっています。家族のように旅行先からお手紙が届くと、お客様の笑顔が見えてくるようです。「よかったよ」、「楽しかったよ」とお客様からお声をいただくことで、コンサルタントの励みにつながり、よりご満足いただけるサービスの提案が生まれていくと思います。

アメリカン・エキスプレスに寄せられた多くのお礼状

大久保 : 以前、ハネムーンの手配を担当させていただいたことがありました。飛行機やホテルの手配だけでなく、現地送迎やオプショナルツアーの手配、朝早く出発の便でしたら成田での前泊をご提案するなどをさせていただきました。また、アメリカン・エキスプレスならではの特典として、空港から無料で荷物を自宅まで配送するサービスや、利用可能地域は限られますが、格安の定額料金で空港とご指定の場所を送迎するサービスをご案内しました。その時お客様に「アメックスってそんなこともできるんですね」と感心されたことを覚えております。お客様のご旅行中の動きを考えながら、各種のお手配を提案することにより、きめの細やかなサービスの提供を目指しています。

――電話越しに"心"でつながる、アメリカン・エキスプレスならではの"おもてなしの心"を感じることができました。ありがとうございました。