恋愛エッセイを書くことになった。

最近の僕はエッセイストとしての仕事が多いのだが、それにしても恋愛となると少し緊張する。男の恋愛エッセイといえば秋元康大先生のようなインテリジェンスとウィットに溢れたビリー・ワイルダーみたいな文芸作品をイメージしてしまうのだ。

だから普段はおバカなエッセイばかり書いている僕も今回は大真面目に筆を振るわねばならない。付き合って3年になる僕の最愛の彼女との甘い甘~い日常を赤裸々に、それでいて淡々と綴っていくつもりである。

しかし、僕の彼女はその名を聞けば誰もが驚くような人気女優だ。当然、ブルジョワジーでラグジュアリーな二人だけの至福の日々の中には書いちゃいけないことのほうが圧倒的に多い。写真週刊誌にスッパ抜かれるのも怖いし、それより何より僕らの蜜月関係は所属事務所さえも知りえない二人だけの秘密なのだ。

っていうのは嘘です。まったくの妄想です。ってか、昨日実際に見た夢です。

本当の僕は32歳にもなって独身で彼女もいなくて、いつも家で独り酒を飲みながら、さだまさしを聴いている万年下痢症の中途半端な文芸人なの。おまけに最近お腹も出てきたし抜け毛も増えてきたし、なぜか視力がますます落ちてきた。あと、AKB48がみんな同じ顔に見えてきた。うう、切ない。

正直、軽くヤバイと思う。一刻も早く素敵な彼女を作らないことには僕はこのまま恋愛欲求を放棄した妖精オジサンになってしまう。一週間7日のうち8回も酔っぱらっている場合じゃない。いまだにピンポンダッシュしている場合じゃないのだ。

しかし、二十代の頃に比べ恋愛に関してやたらと慎重になっているのも確かだ。

昔は「かわいいな」って思ったら後先考えずにアタック(表現が微妙に古い)できたものだが、今は女性の色んなことが気になってしまい、二の足を踏んでしまう。

例えば職業。冷静に考えれば大きな愛の前では彼女の職業がなんであろうが関係ないとわかっているのだが、どうしても僕のような謎の自由業者は一般のOLさんと出会うと腰が引けてしまう。毎朝パリッとしたスーツを着て出社し、禁煙が徹底されたオフィスで清潔な空気を吸いながら難しい横文字を口走っているイメージがOLにはある。簡単に言えば、大人じゃーんって感じなのだ。

一方の僕は毎朝9時頃に泥酔したまま眠りに落ちて午後も随分過ぎた頃にモソモソっと起きたかと思うと、二日酔いに苦しみつつも何とか自宅の机に向かい、タバコを吸いながら人にフンと笑われるような駄文を書き綴る仕事である。

おまけに気分が乗らないという子供みたいな理由でまったく筆を取らない日もある。何にも思い浮かばない時なんか独り言は多いわHなサイトに熱中するわ、傍目にはとっても薄気味悪い生き物に見えるわけだ。

そんなのOLにしてみたら意味不明な哺乳類じゃないか。生活サイクルは間違いなく合わないし価値観も絶対に違うはず。だから僕は素敵なOLと出会っても、無意識のうちに「僕なんかダメだろうな」って弱気になってしまうのだ。

さらに僕はなぜか女性の血液型に妙なこだわりがある。簡単に言うとA型女子が怖い。日本人に最も多いと言われるA型の姫君を前にすると途端に気後れするのだ。

えっ、モテないくせに贅沢だって?

どうも失礼しました。

お前みたいな男は一生独身で妖精になっちまえだって?

……何もそこまで言わなくてもいいじゃないかっ!

お察しの通り、僕は嫌われ者のB型男子である。自己中でマイペース、自由気ままで天邪鬼、そのくせ寂しがり屋で一人好きというまったくもって意味不明な自己矛盾上等のヒト科のオス。A型女子の天敵と一般的には認識されているのだ。

そう言えばインドの国民には極端にB型が多いと聞く。つまり、無人島にB型の男女を100人ずつ連れて行き、500年後に様子を見に行ったらインドが成立しているということか。何かわかる気がする。B型なら箸がなければ平気で手でメシを食うだろうし、川で体を洗うだろう。あ、国際問題にしないでね、あくまで冗談だから。

とにかくB型の僕は必要以上にA型女子に恐怖を感じてしまう。簡単に言うと、A型女子と付き合うと僕は毎日毎日こっぴどく怒られる気がするのだ。

具体的には部屋が汚い、洗濯をしない、食器を洗わない、騒音の中でも平気で熟睡する、賞味期限を気にしない、時間にルーズ、記念日を覚えない、水溜りに積極的に入っていく、木の枝をすぐ拾う、小銭をパクるといった僕の日常的習性の数々が、A型女子の理路整然とした細やかな性格の逆鱗に触れるに違いない。

もちろん世の中にはB型男子とA型女子のカップルなんて腐るほどいるわけで、そんな血液型の縁など根拠に乏しいという理屈はわかっている。

けど、これはトラウマみたいなもんなのだ。頭で考える前に勝手に気持ちが臆病になってしまう。今まで人並みに様々な恋愛を経てきて、32歳になった僕はいつのまにか恋愛に関して慎重という名の超ネガティブ野郎になってしまっているのだ。

これはそんな三十代独身B型男子が日夜純愛を求めて、時に挫折し葛藤し、恋愛の闇を彷徨い続ける赤裸々且つ喜劇的なコイバナ雑記である。興味ある人もそうでない人も暇潰しがてらにお付き合い下さい。絶対損はさせません。得もしないけど。